3人の音楽仲間が息の合ったアンサンブルを披露

YUJA WANG, ANDREAS OTTENSAMER, GAUTIER CAPUÇON 『ラフマニノフ&ブラームス:作品集』 Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2022)

 長年に渡って共演を重ね、友情を育み、切磋琢磨してきた音楽仲間のアンサンブルは、室内楽を聴く醍醐味を味わわせてくれる。

 ユジャ・ワンとゴーティエ・カプソンは2013年のヴェルビエ音楽祭で初共演して意気投合し、以来10年近くに渡ってコンビを組んできた。今回の録音は、以前からふたりの友人として親しく交流してきたアンドレアス・オッテンザマーが加わり、実力派3人の真摯で集中力に富んだ演奏が、聴き手の心を作品のすばらしさへと近づける。

 ユジャ・ワンは前進あるのみという姿勢を崩さず、演奏は瞬時に聴き手を引き付ける強烈な吸引力を放っているが、共演者との呼吸を大切にする思いが印象的。ゴーティエ・カプソンは1701年製のマッテオ・ゴフリラー“L’Ambassadeur”のチェロを使用。情熱的に朗々と響く低音は、彼の〈心の声〉のようだ。

 ラフマニノフのチェロ・ソナタでは哀愁と情感に富む曲想をふたりが絶妙の掛け合いで奏でていく。最終楽章の両楽器がはげしいコーダに向かって進んでいくところは、心が高揚するようなはげしさがもち味。一方、ブラームスのチェロ・ソナタはピアノ・パートが重要な役割を担っているが、チェロの低弦の美しさが際立つようにあらゆる面において創意工夫がなされていることも特徴。ふたりの音の対話がブラームスの寂寥感を紡ぎ出す。

 ベルリン・フィルの首席奏者アンドレアス・オッテンザマーの音も肉厚で豊かにうたい、情感豊か。ブラームスのほの暗く晩秋を思わせる音色を響かせる。使用しているウィーン製のクラリネットはドイツ式にくらべボア(円筒の部分)が広く、暗くのびやかで温かな音色が特質である。ブラームスがクラリネットの名手リヒャルト・ミュールフェルトの演奏に触発され、晩年に書き上げたこの作品は、熟達した手法で3つの楽器を調和させ、美しいアンサンブルを紡ぎ出している。クラリネットとチェロとの音の融合が聴きどころだ。

 


INFORMATION
【収録曲】
ラフマニノフ: チェロ・ソナタ ト短調 作品19
ブラームス:チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38
ブラームス:クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114