伊藤志宏の新作が実に創造的なのです。自身のピアノを中心に据え、その周囲に3台のチェロを配列した特殊編成での本作。接近しては離れていく音と音、その刹那に優しく紡ぎだされていく牧歌的な風景。根底に流れる「和」の存在が、所謂ECM的な静謐や幽玄と本作を大きく隔離させています。張りぼての叙情やロマンを騙る音楽が氾濫している今こそ、本当の物語を持つ音楽が必要です。敢えて言うならば風景を彩るというよりも、風景そのものに「なっていく」音楽がここに広がっています。…そうそう、あくまで個人的な追記ですが、緒川たまきが朗読で参加しているのですよ。本当にたまらないですね。