俺は偽善者なのか、嘘臭いのか……熱すぎるパンク・ヒーローが実は抱えていた悩み。葛藤の先で生まれた『永久に』に刻まれる、決して消えることのない本当の想いとは?

 福岡県久留米発、いまも同地在住を貫きながら、全国で熱いパンク・ロックを鳴らしている〈エバヤン〉ことTHE FOREVER YOUNG。“一生青春突撃宣言”“泣けよ男だろ”など、タイトルだけで中身が想像できる楽曲をぶちまけ、その歌に触れたファンは感極まり号泣、ステージに上がってきたダイバーは当然のようにがっちり抱き締められる。そんな光景がコロナ前は通常だった。フロントに立つクニタケヒロキ(ヴォーカル/ベース)は誰よりも泥臭く優しいローカル・ヒーローに見えていたはずである。

 「ホントの気持ちで歌う俺の姿を見て涙を流してくれる奴――あんたのためなら何でもする……って思うんですよ。でもそれは一瞬なんです。昔は、その優しさを永遠に持ち続けたいっていう幻想のなかで生きていたと思う。でも以前、友達から〈クニちゃん、そんなに人を救いたいとか言うんやったら、バンド辞めてユニセフかNGOにでも就職すれば?〉って言われたことがあって。それに何も言えないのがほんと悔しかった。どっかで俺は嘘臭いんやろうなとも思ったし、ずっとその言葉と闘ってましたね」(クニタケ:以下同)。

 知られざる葛藤に風穴を開けたのは近年のコロナ禍だ。スケジュールが飛ぶなか、実家にある古い音楽雑誌やVHSを漁り、大好きだったバンドの発言やファッションに惚れ直す日々。誰かを救うための言葉はもちろん嘘ではないが、最初に〈俺もこうなりたい!〉と思わせたものは、他人の目線などまったく気にしないシンプルな叫びだったと気付いたのだ。

 「いい人ぶるのをやめる。まんまの俺、まんまのTHE FOREVER YOUNGでいいなと思いましたね。結局俺は俺にしかなれんけん、俺に興味がある人にちゃんと愛される俺でいたい。だったら本当の自分じゃないと。ムカつくことはムカつくし、全部曝け出していきたいと思うようになったんです」。

THE FOREVER YOUNG 『永久に』 STEP UP(2023)

 大きな変化のなかで生まれたのが新作『永久に(とこしえに)』だ。1曲目の“ONE SHOT ONE KILL”から怒りのハードコアが炸裂する。自主規制をすっ飛ばした歌詞にはダーティー・ワードも多い。ただし、コロナ禍で我慢を強いられてきた日々を思えば、この先制パンチは吉と出るだろう。現在のライブハウスには〈多くは語らずともわかるよな〉といった表情で笑い合うファンとバンドがいるのだ。

 もちろん、新作で重要なのは怒りだけではない。タイトルとバンド名に刻まれているように、〈永久〉に対するクニタケの強い想いがある。あの場所であなたと逢えたこと。気持ちを分かち合い、互いの存在を認め合えたこと。アルバムの終盤を飾る名曲“STAND BY ME FOREVER”や“手紙”に顕著だが、パンク・バンドのヴォーカルとしては驚くほど丁寧な歌唱には、ひとつひとつ誓いを立てていくような誠実さがある。

 「周りにはバンドを辞めていく友達もいるし、コロナになってから来なくなったお客さんもいるんです。もう逢えなくても、そいつの気持ちが醒めたとしても、僕がその思い出をずっと持っていれば、誰かに話すことで永遠になる。ただ儚さを嘆くんじゃなくて、そこを飲み込めたのは大きいです」。

 あんたのためならなんでもするって思う。でもそれは一瞬――最初にそう話したクニタケの真意が掴めてきた。万人を救いたいとか、いついかなるときも善人であろうとは思わない。ただ、一瞬だけ確かな想いを交わした人のために、ためらうことなく永遠を誓うバンドでありたいのだ。

 「自分が好きなことをやって、それを本気で愛してくれる奴がいるなら、もう俺が絶対幸せにしてやる。やっぱりユニセフに行きたいわけじゃない。俺らはこれがやりたいんだって、いまは言い切れますね」。

 そういえば、新作に出てくる二人称は〈お前〉〈アナタ〉〈君〉〈キミ〉と、それぞれの曲で表記も違っている。ぼんやりした〈みんな〉は不在。特定の人物像がはっきり見えているからこの書き方なのだろう。その迷いのなさと具体性の強さをもって、エバヤンは聴き手の耳と心を打ち抜いてくれる。

 

THE FOREVER YOUNGの近作。
左から、2021年のミニ・アルバム『証』、2019年作『ビューティフルユース』(共にバップ)、2018年のミニ・アルバム『聖者の行進』(STEP UP)

THE FOREVER YOUNGが参加した2019年のコンピ『...OUT OF THIS WORLD 6』(STEP UP)

 


LIVE INFORMATION
FOREVER YOUTH TOUR 2023 ~とこしえに~

2023年8月13日(日)長崎・長崎 Studio Do! 共演:BAN’S ENCOUNTER
2023年8月17日(木)京都・京都 MUSE 共演:ハルカミライ
2023年8月20日(日)静岡・静岡 UMBER 共演:Atomic Skipper/さよならポエジー
2023年8月22日(火)群馬・高崎 the Groove TAKASAKI 共演:HERO COMPLEX
2023年8月23日(水)栃木・宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-2 共演:HERO COMPLEX/INKYMAP
2023年8月25日(金)青森・八戸 FOR ME 共演:GOOD4NOTHING
2023年8月28日(月)岩手・盛岡 the five Morioka 共演:SABOTEN/FUNNY THINK
2023年8月30日(水)神奈川・横浜 BuzzFront 共演:SEVENTEEN AGAiN/kobore
2023年9月01日(金)香川・高松 DIME 共演:ゲスト有
2023年9月03日(日)愛媛・松山 Wstudio RED 共演:ゲスト有
2023年9月06日(水)大分・大分c lubSPOT 共演:ジ・エンプティ/ircle
2023年9月07日(木)宮崎・宮崎 LAZARUS 共演:ジ・エンプティ/ircle
2023年9月09日(土)鹿児島・鹿児島 SR HALL 共演:人性補欠/CHUCKKii/KEEPER’S OVERLAP
2023年9月10日(日)熊本・熊本 SOUND SPACE FACTOR 共演:NORVER
2023年9月19日(火)大阪・梅田 CLUB QUATTRO 共演:Age Factory/KOTORI
2023年9月21日(木)東京・新宿 ACBHALL ※ワンマンライヴ
2023年9月22日(金)東京・新宿 ACBHALL 共演:ゲスト有
2023年9月24日(日)茨城・いわき SONIC 共演:ジュウ, プッシュブルポット/突然少年
2023年9月25日(月)宮城・仙台 SENDAI BIRDLAND 共演:ゲスト有
2023年9月27日(水)新潟・新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE 共演:ケミカル⇄リアクション
2023年9月28日(木)長野・長野 LIVE HOUSE J 共演:TENDOUJI/INKYMAP
2023年9月30日(土)山梨・甲府 KAZOO HALL 共演:bacho/ATATA/THE NO EAR
2023年10月1日(日)愛知・名古屋 HUCK FINN 共演:bacho
2023年10月8日(日)福岡・久留米 石橋文化ホール 共演:bacho/SUPER BEAVER ※ツアーファイナル