ジェイムス・ブレイクの6枚目のアルバムは、多くの評者が語っているように原点回帰の作品と言えるものだ。13年前にリリースしたセカンドEP『CMYK』期のエレクトロニック・サウンドが前面に出ている。ダンスフロアから距離を置いた近年の作品からブレイクの音楽に入った者からすると、驚きを隠せない音だろう。ヴォーカル・サンプルのリフレインやピッチシフトによって叙情性を生み出すお馴染みの手法を多用しつつ、インダストリアル・ヒップホップとも形容できる“He's Been Wonderful”など、実験を優先した音作りが際立つチャレンジングな姿勢に好感。