Spiral Lifeは、石田小吉(現:石田ショーキチ)と車谷浩司(現:Laika Came Back)によって93年に結成され、L⇔Rや嶺川貴子が所属していたポリスターのWITSレーベルよりデビューしたバンド。その音楽的特徴は、例えばビートルズやローリング・ストーンズ、ザ・フー、モンキーズなどの過去の洋楽を積極的にリスペクトしながら、90年代のグランジ、シューゲイザーなどの同時代の音楽まで、幅広く取り入れて独自に昇華した唯一無二のサウンドにある。当時横浜アリーナで即完ライブを行ったほどの人気ぶりで、30年経った今でも根強いファンがたくさんいる。

そんな彼らのデビュー30周年記念作品として、オリジナルアルバム3タイトルに加えて未発表のデモやライブ音源も多数収録された5枚組のBOXセット『A Generation of 1993-1996 ~ふたたび新しい旅に出る~』が年明け1月24日(水)にタワーレコード オンライン限定でリリースされることになった。ファンはもちろん当時の彼らの活動を知る上で大変貴重な資料になりそうな本作は、当時のレコーディングエンジニアであった寺田康彦が今作のサウンドを全面監修している。

今回はそのサウンド面を監修された寺田氏と、studio Chatriのマスタリングエンジニアで、最近では矢船テツローNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年)のサウンドトラックのマスタリングも手がけられている風間萌氏に、本作のこだわりのポイントについて、マスタリング作業が行われたスタジオで話を聞いた。

Spiral Life 『A Generation of 1993-1996 ~ふたたび新しい旅に出る~』 ポリスター(2024)

 

寺田康彦

当時はああいう声質でロックを歌うバンドが少なかった

――寺田さんはエンジニアとして細野晴臣さんや大貫妙子さんの作品を手がけられたことがあるほか、ご自身もプレーヤーとして活動されてきました。エンジニアとしてはどのようなことを大切にしてこられたのでしょうか?

寺田康彦「歌ものであれば、歌をよく聴かせたいというのが大きいですね」

――ご自身の仕事に大きな影響を与えられたアーティストはいらっしゃいますか?

寺田「まずは細野晴臣さんですね。またアーティストではないけど、アルファレコードのプロデューサーで、有賀恒夫さんというユーミン(荒井由実)を担当していた方の影響も大きいです。細野さんからは特にリズムやグルーヴ感について習ったんですよ。キックを根本にしたグルーヴの考え方とかね」

――今回ご自身がエンジニアとして手がけられた作品に改めて向き合うことになりましたが、どのような思いで取り組まれましたか?

寺田「自分がミックスした音で気になっていた部分があったんです。1stアルバム(93年作『Further Along』)は結構納得できる作品だったと思うんだけど、それ以降の作品ではギターやコーラス、歌がたくさん入っているから、音のせめぎ合いがどんどん激化していって。後日改めて聴いたときにハイ上がりな(高音が強調された)サウンドになっているな、と。メンバーみんなが〈自分の音を、自分の音を〉と言うものだから(笑)、音がプラスされる方向になりがちだったんですよね。

だからもし作り直すのであれば、そのポイントを重視して低域感を出すのと、上の帯域で気になるところをなるべく無くしたようなサウンドで、何年先も聴いていけるようなものを記録に残しておきたいなと考えていたんですよ。だから今回のお話はありがたかったですね」

――当時Spiral Lifeを手がけることになったきっかけは何だったのですか?

寺田「そのころ僕は三軒茶屋にあるアルファレコードにいたんだけど、アナログのレコーダーを置いて好きな音が出せる遊び場を別に持っていたんですよ。そこでポリスターから持ち込まれた彼らの音楽を聴いたときに、当時はああいう声質でロックを歌っているバンドが少なかったこともあって興味を持ったんです。〈これはやりたいな〉と」