日本のパンクシーンを語る上で避けて通れないバンド、アナーキー/亜無亜危異。彼らの初期の名盤『’80維新』『READY STEADY GO』『ANARCHY LIVE』『ANARCHISM』が、紙ジャケット仕様のSHM-CDとしてタワーレコードで再び手に入れられるようになった。今回は、その4作の魅力を音楽評論家の小野島大に解説してもらった。 *Mikiki編集部


 

日本を代表するパンクバンドの〈活動禁止〉

日本を代表するパンクバンド、アナーキー(現・亜無亜危異)をモデルに、中年になったパンクロッカーのリアルを描いて大きな話題となった映画「GOLDFISH」の公開もあり、ここ最近アナーキーの活動はいっそう活発化しているように見えた。それだけに2024年3月24日、逝去したメンバーの逸見泰成(マリ)の誕生日のライブをもって無期限の〈活動禁止〉になるという報は残念と言うしかない。

そんなアナーキーの80年代のアルバムが紙ジャケット仕様SHM-CDとしてタワーレコード限定でリプレスされた。『’80維新』『READY STEADY GO』『ANARCHY LIVE』『ANARCHISM』の4枚で、長い間生産中止で入手困難となっていたものの待望の再発だ。

 

レゲエやスカからの影響、ロンドン録音での変化と成長

『’80維新』(80年)は、センセーショナルなデビューアルバム『アナーキー』(80年)からわずか8ヶ月後にリリースされたセカンドアルバム。

アナーキー 『’80維新』 Invitation(1980)

ストレートなエネルギーに変わりはないが、レゲエやスカの影響やアコースティックギターをフィーチュアしたバラードなど勢いに任せるだけでない緩急の変化が感じられるようになった。録音がファーストよりも良くなって迫力が増しているのもポイントだ。

『READY STEADY GO』(81年)は、ロンドン録音の3作目『亜無亜危異都市(アナーキーシティ)』(81年)に続く4作目だ。

アナーキー 『READY STEADY GO』 Invitation(1981)

アナーキーはデビューから3年連続で2枚のアルバムをリリース(つまり3年で6枚)するという今では考えられないハイペースな活動を続けていたが、クオリティを落とすわけでもなく、アルバムごとに着実に進化や成長のあとを見せているのが頼もしく、当時まだ20歳そこそこで伸び盛りのバンドだったことを思わせる。

本作はロンドンでスティーヴ・ナイやマイキー・ドレッドといった一流どころと仕事したことで意識が変わり、アレンジや演奏はもちろん楽器の選定や録音などにも気を遣うようになったというメンバーの変化と成長がよくあらわれている。ラテン的なリズムアレンジやレゲエやカントリー的な音楽性を導入するなど、直線的だったビートにグルーヴが感じられるようになって、演奏も楽曲もそれまで以上に充実している。

 

生粋のライブバンドのイキイキした演奏

『ANARCHY LIVE』(82年)は、タイトル通り82年1月東京と京都のライブを収めたもの。まだ家庭用ビデオが一般に普及する前、音だけとはいえ彼らの現場の熱気をパッケージした貴重なアルバムだ。

アナーキー 『ANARCHY LIVE』 Invitation(1982)

アナログ片面9曲ずつ計18曲が文字通り畳み込まれるように立て続けに演奏される勢いは痛快そのもの。曲間の客席のノイズは極力省かれ、臨場感よりもスピード感を重視した編集になっている。荒っぽいところもあるがどれもスタジオ録音よりはるかにイキイキした演奏で、やはり彼らは生粋のライブバンドなのだと思わされる。

スタジオアルバムには未収録の“LTD(リミテッド)”“Roll Over Stone”も演奏されている。MCでは〈新曲〉として紹介されている。また“ノット・サティスファイド”などはレコードと違う歌詞が歌われるのも興味深い。

そして『ANARCHY LIVE』に続くアルバムとして発表されたのが『ANARCHISM』である。勢いよりも余白、エネルギーよりもアンサンブルを重視した演奏は味わい深い。ブルースの“赤いガラクタ”が印象的だ。

アナーキー 『ANARCHISM』 Invitation(1982)

 


RELEASE INFORMATION

アナーキー 『’80維新』 Invitation(1980)

リリース日:2008年12月17日
品番:VICL-70002
価格:2,619円(税込)

TRACKLIST
1. 叫んでやるぜ
2. Suke in weekend
3. ヒーロー
4. 省エネSONG
5. ’80維新
6. 80年の町
7. カシム
8. おかわりブギ
9. “530”
10. 安全地帯

 

アナーキー 『READY STEADY GO』 Invitation(1981)

リリース日:2008年12月17日
品番:VICL-70004
​価格:2,619円(税込)

TRACKLIST
1. Ready Steady Go
2. 頭の中
3. ファッション
4. わからない地図
5. 英和の裏側
6. Rock’n Roll
7. Dancing Doll
8. High Way
9. 時の流れ
10. アナーキー・ミュージック
11. Hey ブービー・ジョー

 

アナーキー 『ANARCHY LIVE』 Invitation(1982)

リリース日:2008年12月17日
品番:VICL-70005
​価格:2,619円(税込)

TRACKLIST
1. Ready Steady Go
2. ファッション
3. ヒーロー
4. 3・3・3
5. 缶詰
6. 頭の中
7. Dancing Doll
8. High Way
9. アナーキー・ミュージック
10. 叫んでやるぜ
11. 都会(まち)
12. 平和の裏側
13. アナーキー・シティ
14. 心の銃
15. LTD(リミテッド)
16. Roll Over Stone
17. 団地のオバサン
18. ノット・サティスファイド

 

アナーキー 『ANARCHISM』 Invitation(1982)

リリース日:2008年12月17日
品番:VICL-70006
​価格:2,619円(税込)

TRACKLIST
1. Rock’n Roll Star
2. Come On Let’s Go
3. 地獄の天使
4. くそったれの街
5. やさしきRocker
6. Harder They Come
7. あらさがし
8. Hey!
9. 赤いガラクタ
10. 馬鹿者たち
11. 屋根の下の犬