いよいよ今週末、2024年3月16日(土)と17日(日)の2日間にわたり〈PUNKSPRING 2024〉が開催される。開催決定のアナウンスから大きな注目が集まった同フェスだが、そのラインナップに目を向けると家系ラーメンの如く濃厚なメンツが顔を揃えている。きっと足を運ぶ一人一人にお目当てのアーティストがいると思うが、いま一度、個性溢れる出演者を総ざらいするのはどうだろうか?


 

3月16日(土)ラインナップ

サム41(Sum 41)

今年の〈PUNKSPRING〉を象徴するバンドの1組であり、その勇姿を直接拝めるのは今回の来日が最後となる。2023年5月に突如バンドの解散を発表したサム41だが、彼らがフェス初日のヘッドライナーを務めることに文句を言う人はいないだろう。

96年の結成からおよそ27年、当初はポップパンクやエモの枠に入れられたバンドは、アルバム毎に作風の変化させながらメタルやミクスチャーなども自分達の武器としてきた。ソングライティングも受け持つデリック・ウィブリー(ボーカル/ギター)は良くも悪くも気分屋な人物だが(筆者は過去来日時に対面取材の場に同席したことがある)、音楽に対するスタンスは明確で、いかに自らが〈熱狂〉できるかを重要視するストイックな一面も持っている。

いつ何時もシンガロングが巻き起こる“Fat Lip”や“Still Waiting”といった初期の名曲をはじめ、2000年代を折り返したバンドの新章を告げたロックチューン“Underclass Hero”、そして3月29日(金)にリリースされる2枚組のラストアルバム『Heaven :x: Hell』(〈Heaven〉サイドはポップパンク、〈Hell〉ではメタルな楽曲をフィーチャー)に収録される“Waiting On A Twist Of Fate”“Rise Up”などを耳にすれば、彼らがその都度どんなサウンドを求めていたか、手に取るようにわかる。

単独でのジャパンツアーもフェスを挟んでおこなわれるため、〈PUNKSPRING〉が最後の来日ステージとなるわけではないが、日本で万単位のオーディエンスを前に演奏するのは間違いなくこれがラストになる。

発売前のラストアルバムからのナンバーや前述のヒット曲の披露にも期待したいが、彼らのライブではレジェンド達に捧げた名曲のポップパンクカバーも聴きどころだ。直近のライブではピンク・フロイド“Another Brick In The Wall”がリストインしているが、クイーン“We Will Rock You”も長年ライブの定番となっている。そうした予習不要な誰もが歌って騒げるアンセムが聴けるのも今回が最後。悔いのないよう、その目に焼き付けよう。

 

ゼブラヘッド(Zebrahead)

Photo by Tobias Sutter

サム41と並走してきたバンドでもあるが、彼らもまた独自の進化を辿ってきた。ディセンデンツらカリフォルニアパンクの伝統的なサウンドを踏襲しながら、高速フロウを取り込んだラップロック/ラップメタルを極めていくスタイルは、懐かしくもあり新鮮味も感じる〈おいしいとこ取り〉な存在だ。

だが、彼らは西海岸の陽気なノリを強め、徐々にパーティーバンド的な一面も形成し独自の路線を確立する。その変貌はメジャーデビュー作『Waste Of Mind』(98年)と次作『Playmate Of The Year』(2000年)を聴けば、一目瞭然ならぬ一聴瞭然。近年の『Walk The Plank』(2015年)や『Brain Invaders』(2019年)ではベテランならではのしなやかな物腰が王道のポップパンクサウンドと掛けあわさり、広くロックリスナーの耳に馴染む楽曲を量産している。

そんなゼブラヘッドの〈PUNKSPRING〉出演にそこまで驚かなかった人がいたら、それは彼らの動向をしっかり追っている証拠でもある。2020年に予定されていた日本ツアーは新型コロナウイルスの影響により延期。その後、規模を縮小しながらも2022年に〈Ichi-go Ichi-e Tour〉と題したツアーを敢行した。この間にエイドリアン・エストレラが新ボーカルとして加入するなど、バンドは大きなターニングポイントを迎えていたのだ。

大きな荒波を乗り越えたバンドだけに、充実のステージでこちらを満足させてくれるはず。とりあえず“Rescue Me”“Hello Tomorrow”“Falling Apart”など収録された名盤『MFZB』(2003年)はマストチェックしつつ、最新の来日記念ベスト『Ichi-go Ichi-e』(2023年)も押さえておくべきだろう。