©Tom Oldham

DEFINITELY MAYBE...
リアム・ギャラガーとジョン・スクワイア、伝説の二人がまさかのタッグを組んでアルバムを完成! キャリアに裏付けられた作風と軽やかなコンビネーションは互いのサイド・プロジェクトなのか、あるいは今後の何かに繋がる前触れなのか……

LIAM GALLAGHER, JOHN SQUIRE 『Liam Gallagher & John Squire』 Warner UK/ワーナー(2024)

気負いなく好きな音楽を歌うリアム・ギャラガー

 ソロ最新作『C’mon You Know』(2022年)でもアートワークにあしらわれた2021年のレディングでのヘッドライナー以降、リアム・ギャラガーは快進撃を続けている。2022年の6月には26年ぶりにネブワースでのライヴを開催。その後も世界各地をツアーしつつ、昨年8月には〈サマーソニック〉で来日。絶好調っぷりがなかなか伝わっていなかった日本のリスナーにも完全復活を印象付けていた。さらに今年の6月に『Definitely Maybe』の30周年ツアーを行うことを発表。これには〈それはもう再結成してくれ〉と思ってしまったが、いずれにせよフルスロットルな状態にあることは間違いない。

 そんななか、これもやりまっせとばかりに届けられたのが、同郷の先輩にあたる元ストーン・ローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイアとのコラボ盤だ。作曲はすべてジョンが担当。ローゼズの初作に近い、甘美でメロウなサイケ・ポップが基調になっている。グレッグ・カースティンをベース、ジョーイ・ワロンカーをドラムスに迎えた演奏も60年代ブリティッシュ・ビートやモッズ・マナーがゴキゲンだ。“Paperback Writer”を思わせる“I’m So Board”、その名もズバリな“Mars To Liverpool”などは殊更にビートリッシュで、気負わず、考えすぎず、ただ好きな音楽を歌っているといったリアムの佇まいが、本作にあっけらかんとしたチャームをもたらしている。冠こそ大きいが、趣味性の高さゆえに小品っぽさを湛えており、なんとも愛おしくなる一枚だ。 *田中亮太

 


楽曲と演奏で寡黙に魅力を放つジョン・スクワイア

 2017年にストーン・ローゼズを再解散した後、ふたたび表舞台から退いていたジョン・スクワイアが帰ってきた。ローゼズ~シーホーセズ~ソロと作品を重ねてきた彼にとっては、ソロ2作目『Marshall’s House』(2004年)から20年ぶりとなるアルバム作品。曲単位で考えても再結成ローゼズで残した“All For One”“Beautiful Thing”以来の新曲たちだ。現役バリバリなリアム・ギャラガーとのコンビは96年/2022年の〈ネブワース〉にて“Champagne Supernova”でギター客演した縁の延長だが、その間にはシーホーセズ“Love Me And Leave Me”を共作していたこともあり、事前の驚きはあったものの、実際に聴いてみた感じではまるで違和感のないコンビネーションだ。

 今回はプロデュースも務めるグレッグ・カースティン(ベース)、ジョーイ・ワロンカー(ドラムス)がアルバム全編を固定で演奏し、まるで円熟した4人組バンドの何気ない作品のようにシンプルに録音された点が功を奏している。みずから歌うソロ作の出来映えが酷評されたことを思えば、中心に立つことなく楽曲と演奏でのみ寡黙な存在感を発するポジションがジョンには似合っているのかもしれないし、裏を返せば最強のフロントマンをセンターに迎えた際の彼の圧倒的な魅力は言うまでもなく、大袈裟なお祭り感が作中に希薄なぶんだけ長く聴けるだろう。そうでなくても、互いの〈二番目にベストな相棒〉とのタッグ作品という意味では、まさにベストな好盤である。 *出嶌孝次