©Tom Oxley

リアム・ギャラガーとジョン・スクワイア――二人の名前が並んだだけで胸が高まる人は、間違いなく生粋のUKロック好きだろう。とにかく、ロック史に名を残すモンスターバンドを経た両者が、ついに連名での作品を完成させたのだ。

2023年12月、リアムとジョンはコラボアルバムが完成したことを発表すると同時に、同作からのファーストシングルとして新曲“Just Another Rainbow”のリリースもアナウンスした。そして2024年1月5日、満を持してドロップされた“Just Another Rainbow”は一体どんな楽曲なのか、ライター/編集者の荒野政寿に二人の関係性とともに早速レビューしてもらった。 *Mikiki編集部


 

リアムとジョンの相思相愛な関係

リアム・ギャラガーは自身の人生を一変させたライブ体験として、まだ15歳だった88年5月30日、マンチェスターのインターナショナルIIで観たストーン・ローゼズの衝撃を常々語っている。これがきっかけで音楽に深入りし始めたリアムは、91年にギグジーとボーンヘッドが先に組んでいたバンド、ザ・レインにボーカルとして加入。バンド名をオアシスに改め、ノエル・ギャラガーがバンドに加わってからの快進撃については、今さらここで説明するまでもないだろう。

ストーン・ローゼズのギタリスト、ジョン・スクワイアは96年4月にバンドから脱退。その年の8月、ジョンはオアシスがネブワースで行なった歴史的な公演にゲスト出演し、“Champagne Supernova”とビートルズのカバー“I Am The Walrus”にフィーチャーされた。彼の新バンド、シーホーセズが翌97年5月にリリースした唯一のアルバム『Do It Yourself』(全英2位)には、リアムとの共作曲“Love Me And Leave Me”を収録。同作からのシングル第3弾に選ばれたこの曲は全英シングルチャートで16位まで上昇するスマッシュヒットとなった。リアムが単独で書いたオリジナル曲がオアシスのアルバムに初めて収録されたのは『Standing On The Shoulder Of Giants』(2000年)の“Little James”が最初。つまりソングライター=リアムの可能性を初めて世に知らしめた記念すべき曲が、ジョンと書いた“Love Me And Leave Me”だったわけだ。

その後、ストーン・ローゼズは2011年に再結成を宣言。翌2012年6月にマンチェスターのヒートン・パークで3夜連続公演を行なった際、当時リアムが在籍していたビーディ・アイが2日目にサポートアクトとして出演。同年7月のFUJI ROCK FESTIVALでも初日グリーンステージのトリを飾ったストーン・ローゼズの1つ前に、ビーディ・アイが演奏したことを記憶している人は少なくないだろう。

タイミングさえ合えば再び何か一緒にやりそうだったリアムとジョンが、久々に急接近した契機として、2021年に公開されたドキュメンタリー映画「オアシス:ネブワース1996」は無視できない。映画でも見せ場のひとつになっていたオアシス+ジョン・スクワイアの“Champagne Supernova”が再び話題に上ったことで、リアムはジョンとの再ジョイントを模索し始めたのではないだろうか。そして2022年6月3日と4日、リアムがネブワースで敢行したソロ公演にジョンが登場。その模様は、ライブアルバム『Knebworth 22』として昨年8月にリリースされた。

その後、ジョンは秘密裏に新曲のデモをリアムに送付。二人はジョンのマックルズフィールドのスタジオで8曲を揉み、その後さらに2曲をジョンが追加した。Apple Musicで公開されたゼイン・ロウによるインタビューで、リアムはレコーディングセッションをロサンゼルスで行なったこと、10曲入りのアルバムにはタイトルがないことも明かしている