来日を控えた絶好のタイミングで昨年のネブワース公演を収めた熱気溢れるライヴ盤が登場! オアシスの伝説の地で26年後に実現した過去最大規模のステージを改めて体験しよう!

 この8月に〈サマソニ〉のヘッドライナー出演と単独公演で来日するリアム・ギャラガー。そんなライヴへの期待を最高潮に高めるのが『Knebworth 22』だ。これは3作目『C’mon You Know』リリース直後の昨年6月3~4日に英ハートフォードシャー州のネブワース・パークで開催された過去最大規模のソロ・ライヴの模様を収めたもの。リアムにとってのネブワースといえば、もちろん彼がオアシス時代の96年8月10~11日に25万人を動員した伝説的な野外ライヴの地であり、その当時の模様が、2021年になってドキュメンタリー映画「オアシス:ネブワース1996」とライヴ盤『Knebworth 96』にて公開されたのも記憶に新しい。

 時を超えてそうした企画が成立するのはオアシスの威光がいまなお失われていないからだが(『Knebworth 96』は全英4位を記録)、逆に言うなら、それはリアム・ギャラガー(と兄ノエル)が現役のアイコンとして最前線に立ち続けているからでもある。ソロに転じてからはアルバムがすべて全英1位を獲得し、ネブワース公演においても17万枚のチケットが即完。長年のファンはもちろんティーンエイジャーまで幅広い世代の観客が押し寄せる格好となり、リアムへの世代を超えた支持が改めて証明されたのは言うまでもない。

LIAM GALLAGHER 『Knebworth 22』 Warner/ワーナー(2023)

 今回の『Knebworth 22』は、2019年8月に収録された『MTV Unplugged (Live At Hull City Hall)』、2020年5月の配信ライヴを収めた『Down By The River Thames』に続く、リアムにとって3枚目のライヴ盤。バックを固めるのはソロ転向時から不動のツアー・メンバーにして過去2作のライヴ盤でも演奏したマイク・ムーア(ギター)、ジェイ・メーラー(ギター)、ドリュー・マッコーネル(ベース)、ダン・マクドゥーガル(ドラムス)、クリスチャン・マッデン(キーボード)という顔ぶれ。唯一、元オアシスのボーンヘッドことポール・アーサーズ(ギター)だけは健康上の理由でバンドを離れていたため、バーリー・カドガン(リトル・バーリー)がサポートに加わっている。

 凄まじい歓声に包まれたパフォーマンスは、オアシスの“Hello”から“Rock ‘N’ Roll Star”を畳み掛けてスタート。全16曲(+日本盤にはボートラを2曲)のうち9曲(とボートラ1曲)はオアシス時代の定番レパートリーで、“Slide Away”や“Cigarettes & Alcohol”は『Knebworth 96』や『Down By The River Thames』の音源と聴き比べるのもおもしろい。また、注目は“Roll It Over”で、これはオアシスの4作目『Standing On The Shoulder Of Giants』(2000年)に収録されるも、当時はライヴで披露されなかった隠れ人気曲。ノエルらしい黄金のメロディーがリアムの情熱的な歌声と一体化した名演だ。

 一方のソロ楽曲では、デビュー・シングル“Wall Of Glass”(2017年)や圧倒的な“Shockwave”(2019年)などの代表曲は過去2枚のライヴ盤と重なるが、当時リリースされたばかりの『C’mon You Know』からもデイヴ・グロールとの共作で話題だった“Everything's Electric”など3曲が披露。なかでも“More Power”の女声コーラスをあしらった展開は本作でも神聖な印象を残す。

 そして終盤は“Some Might Say”から“Supersonic”へ至る怒涛のオアシス名曲ラッシュ。オーディエンスの大合唱が響く“Wonderwall”に続き、本編エンディングは“Champagne Supernova”。96年の時と同じく敬愛するジョン・スクワイア(元ストーン・ローゼズ)を客演に迎えたのも、過去と現在を繋ぐ心憎い演出だろう。今回の来日に立ち会える人もそうでない人も、新たな伝説を追体験したいなら必聴の一枚だ。

左から、リアム・ギャラガーの2022年作『C'Mon You Know』、2019年作『Why Me? Why Not.』、2017年作『As You Were』(すべてWarner)

リアム・ギャラガーのライヴ盤。
左から、2020年作『MTV Unplugged(Live At Hull City Hall』、2022年作『Down By The River Thames』(共にWarner)、オアシスのライヴ盤『Knebworth 1996』(Big Brother)