Photo Credit:Danny Clinch

 

 松谷冬太は1967年生まれ、88年にニューヨークに渡り、現地のR&Bで活動したキャリアを持つシンガーだ。このアルバムは松谷がニューヨークで、腕利きのベテランたちと共演した作品。リチャード・ティー亡き後、スタッフのキーボードを担当したジミー・スミスダニー・ハサウェイロバータ・フラックのベースを弾いていたティンカー・バーフィールド、スミスの妻でR&Bシンガーのビバリー・ハンショウなどと共に、マーヴィン・ゲイレイ・チャールズスティーヴィーオーティス・レディングなどの名曲をリラックスして歌っている。

松谷冬太 Yellow Black Music Retrofuturhythm(2015)

 いかにも「黒人風」にフレーズをこねくり回すことはなく、いっけん非常に素直に、ストレートに声を出しているのだが、なぜかしみじみとソウルフルな味わいがとてもいい感じだ。ハンショウとのデュオでは、さすがの貫禄を漂わせる彼女の横で、たとえて言えば仲の良い弟みたいにリスペクトを込めて寄り添っていて、そのあたりの風情も実にキュートです。個人的に特に好きなトラックは、アコギの乾いた音色が効果的な《ヘヴン・ヘルプ・アス・オール》、スミスのエレピとオルガンに包まれてじっくりと歌うバラード《ドロウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ》、そしてハンショウと息のあったデュエットを披露する《エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ》と《ユーヴ・ガット・ア・フレンド》かな。

 実にシンプルでけれんのない演奏も、ブラック・ミュージックのキモを的確に捉えたブルージーでグルーヴ感にあふれたもの。スミスのエレピやオルガンのちょっとしたフレーズの端々ににじみ出るゴスペルの香り、バーフィールドの太くてぶりぶりと動き回るベース・ラインのかっこよさには惚れ惚れしてしまった。なお、このアルバムの音楽的プロデューサーでもあったスミスが今年3月22日に72歳で死去し、アルバムはスミスに捧げられている。

 

LIVE INFORMATION

○6/26(金) 高田馬場ゲートワン
○6/27(土) 渋谷Wasted Time
○7/10(金) 下北沢カフェ・フィールド
○7/12(日) 長野宮田村オヒサマの森チェレステ
○7/17(金) 品川トライベッカ
○7/19(日) 渋谷Wasted Time
○7/24(金) 下北沢Bookends Coffee Service
○7/31(金) 長野県中川村 ほか
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