初の完全なセルフ・プロデュースに挑んだ意欲的な新作は、自身の生まれ年を冠したもの。憧れを掘り下げて過去に向き合った『1978』はより自由な彼らしさに溢れている!

1978年のムード

 ジャズ、ソウル、ヒップホップなどを軽やかに跨ぎ、結果としてネオ・ソウル的な表現にも行き着くホセ・ジェイムズ。彼を構成する音楽は、過去に出したビリー・ホリデイ、ビル・ウィザーズ、エリカ・バドゥのトリビュート・アルバムを聴いてもわかるが、そのうちのソウルの成分に改めて向き合ったのが、自身の誕生年を冠した新作『1978』である。ビル・ウィザーズ・トリビュート『Lean On Me』(2018年)を作っている時に「(ビルのように)人々に喜びを与えるような曲を書きたい」と思い立ち、4年前のオリジナル・アルバム『No Beginning No End 2』のツアーなどで関係を深めたバンド・メンバーを束ねつつ、初めて完全にひとりでプロデュースしたという意欲作だ。

JOSÉ JAMES 『1978』 Rainbow Blonde/ユニバーサル(2024)

 リリースは今回もレインボー・ブロンドから。妻のターリことタリア・ビリグと立ち上げた同レーベルは、生前のプリンスがワーナーから独立してNPGを設立したことに倣ったとされるが、そのプリンスがメジャー・デビューした78年にミネアポリスで産声を上げたのがホセだった。78年といえば、ソウルが成熟し、ディスコ・ブームが絶頂を迎え、ヒップホップの本格開幕を控えた年。そんな時代のムードを、マッドリブやJ・ディラの音楽を血肉とする自身のヒップホップ感覚を交えつつ、「全員がファンクとソウルのボキャブラリーを持っている」というバンド・メンバーとの対面録音で再現したのが『1978』となる。そのメンバーは、マーカス・マチャド(ギター)、チャド・セルフ(キーボード)、デヴィッド・ギンヤード(ベース)、そしてレインボー・ブロンドからの初アルバムも控えるジャリス・ヨークリー(ドラムス)らの名手たち。弦アレンジをベン・ウィリアムスとターリが手掛け、ターリはコーラスなどでもサポートをしている。