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【Lost Decade Education】Vol.3 サンフランシスコのGrimecraftが来日! TREKKIE TRAXのSeimeiも交えてUSの音楽事情を訊く

Maltine Records主宰・tomadが自身の日々の活動やネット音楽周りのアレコレを書いたり語ったりする連載!

 

連載化したMaltine主宰tomad氏の〈Lost Decade Education〉。第3回は、今年初めにMaltineより『Grimecraft EP』をリリースし、先日サンフランシスコよりイヴェント出演のために初来日したGrimecraft氏と、現在留学のため同じくサンフランシスコに拠点を置き、ちょうど一時帰国しているTREKKIE TRAX主宰のひとり、Seimei氏を迎えた3者鼎談をお届けします! USのゲーム・ミュージック・シーンを中心に注目を集めるGrimecraft氏はポケモンが大好きということで、来日早々に東京の〈ポケモンセンター〉で購入したという可愛いピカチュウのネックレスを付けて登場。そんな彼を通じてサンフランシスコでもDJ活動を行うようになったというSeimei氏のナイスな補足解説も功を奏したこの鼎談は、GrimecraftのキャリアやUSの音楽事情など、いろいろ興味深い内容になっていますよ!

 


 

 (左から)Seimei、Grimecraft、tomad

 

――tomadさんとSeimeiさんは結構前からのお知り合いなんですよね?

tomad「クラブで会ったり、TREKKIE TRAXのイヴェントに僕が遊びに行ったりするうちに仲良くなりました。Maltineのイヴェントにも遊びに来てくれたり……」

Seimei「僕の弟のCarpainterTaimei)と僕と何人かのメンバーとでTREKKIE TRAXを主宰しているんですけど、CarpainterがMaltineで1枚EP(2013年作『Double Rainbow』)をリリースしてもらっていて。だからCarpainterは半分Maltine(所属)みたいな」

【参考音源】Carpainterの2013年のEP『Double Rainbow』

 

tomad「一度、Seimei & Taimei名義のデモを送ってくれてたみたいなんですが、僕はあまり反応しなかったという過去もあったりして……ハハ」

Seimei「そうなんですよ(笑)」

――それはTREKKIE TRAXが出来る前?

Seimei「出来る前ですね。それでTREKKIE TRAXを始めてからSeimei & Taimeiの名義でリリースして、その後に弟がソロの活動もしたいと言いはじめたのでCarpainterとして1枚出したら、tomadさんがTwitterで推してくださって。これは改めてMaltineにデモを送ったほうがいいと弟に言って、Carpainterの2枚目のEPをMaltineからリリースした……という流れです」

【参考音源】Seimei & Taimeiの2014年の楽曲“All'ottava”

 

――ほうほう。で、Grimecraftさんとは……?

tomad「僕はデモを送ってきてくれた時に初めて知りました」

Seimei「僕は去年の1月にサンフランシスコに留学で移住したんですが、その頃に彼がTREKKIE TRAXのSoundCloudをフォローしてくれて。彼もサンフランシスコ在住ということだったんで、近くに住んでるのかなと思ってメッセージを送ったら、僕の家から15分くらいのところに住んでいたんです。で、その日のうちに一緒に呑みに行っていろいろ話してたら〈僕、Maltineからリリースするんだよ〉と言っていたたので、僕の弟もCarpainterっていう名前でMaltineから出してるよ、みたいな話をして。そこから一緒にクラブへ行ったり、DJするようになったんです。彼を通じてサンフランシスコのアーティストや友達と多く知り合ったし、サンフランシスコで活動できるようになったのは彼がきっかけなんです」

――Grimecraftさんはずっとサンフランシスコで活動しているんですか?

Grimecraft「1年半ほど前にサンフランシスコに移って、街のあちこちでDJ活動をしているんだけど、前は東海岸に拠点を置いてゲーム・ミュージックのシーンで活動していたんだ」

――なぜサンフランシスコに?

Grimecraft「もともとSQUARE ENIXでゲームの開発をしていて、大きなゲームの開発に携わっていたから、その仕事の都合でサンフランシスコに移ってきたんだ。でも会社の待遇もあまり良くなかったからすぐに会社を辞めて、音楽に専念することにしたんだよ」

――出身は東海岸なんですか?

Grimecraft「ヴァージニアで育って、フロリダ、ボストン、LAに住んでいたよ。サンフランシスコに来る前はボストンで暮らしていたんだ」

tomad「音楽はいつから作っているの?」

Grimecraft「本当に長い間作っているよ。いろんなバンドにも所属していたし。まず6歳の頃からドラムを叩いていて、ポップ・バンドからメタル・バンド、インディーのダンス・プロジェクトもやっていて、音楽にはずっと関わっているんだ。でもGrimecraftという名前で活動を始めたのは2012年から。学生時代も似たような音楽は作っていたけど、その名前ではなかった」

tomad「インストのメロディアスなビート・ミュージックを中心に作っているけど、ロックではなく、なぜその方向に行こうと思ったの? ゲーム・ミュージックの影響が大きいのかな」

Grimecraft「Rock is dead! ハハハ。大学生だった2008年頃にはロック/フォーク寄りのバンドをやってたんだけど、リスナーはどんどん減っていったんだ。そこにきてエレクトロニック・ミュージックが盛り上がってきて、2009年~2010年にダブステップが流行った。だから誰ももうバンドなんて観たがらなくて、DJのほうに注目が集まっていったんだ。みんながDJに興味を持ちはじめているのに、自分が楽器を弾いたりライヴのセッティングをしていることに意味を見い出せなくなったというか。お金にもならないし。何度もバンドでゲーム・ミュージックっぽいことをやろうとしたけど、あまり上手くいかなかったというのもある」

Seimei「唯一バンドとして上手くいっているのはアナマナグチだけじゃない?」

【参考動画】アナマナグチの2013年作『Endless Fantasy』収録曲“Meow”

 

Grimecraft「でもほとんどバンドとしては活動してなくない? 音も変わってきているし。とにかく、ビジネスとしてもバンドではあまり成り立たなくなってきていたよね。お金になったとしても大した額にもならないことを、わざわざ複数の人数でやるなんて道理にかなってないよ。自分がDJを始めた頃にいろいろと変わってきたし、自分もその時期には音楽を作るだけじゃなく、さまざまな音楽をまた聴くようになったけど、プロデュースを始める前からも自分がやっていたのはオリジナルのゲーム・ミュージックにビートをミックスしていくことで、DJカットマンに発見してもらえたんだ」

tomad「ではアメリカのベイエリア・シーンではバンドよりDJカルチャーのほうがメインストリームなってきてるの?」

Grimecraft「間違いなくそうなってきてるね。自分でもバンドの演奏を最後に観たのがいつだったか覚えてないくらいだし(笑)。クラブに行っても、いまやバンドのライヴのポスターを見ることなんてないから。唯一観に行くとしたら僕が好きなコヒード&カンブリアくらいだよ(笑)。バンドとDJとではスピード感が違うよね。プロデューサーがトラックを作る時間と、バンドがスタジオに入ってレコーディンする時間を比べたら全然違う」

――スピード感……まあ確かにそういうフットワークの軽さみたいなところは比べものにならないと思いますが……。それはともかく、GrimecraftさんはMaltineでリリースする前から作品は発表してきていたんですよね?

Grimecraft「これまでにいろんなレーベルでリリースしてきたよ。いちばん最初はゲームチョップスっていうDJカットマンがやっているレーベルから発表したんだ(2013年作『POKEP』)。ゲームチョップスはもともとゲーム・ミュージックのリミックスなどをリリースしているところで、そこは自分がいちばん興味のあるところだった。僕はゲーム・ミュージックからサンプリングするし、ゲームからインスピレーションを受けるし、とにかくゲームが好きなんだよね(笑)」

【参考音源】Grimecraftがゲームチョップスからリリースした2013年作『PokeP』

 

Grimecraft「Maltineから発表した『Grimecraft EP』もゲームがコンセプトになっていて、ゲームの世界で起きることをベースに作ったアルバムだったんだ。ゲームチョップスでは僕もレーベルの運営にも携わっていたり、DJカットマンとは懇意にしているからUS全土でコンヴェンションやイヴェントを開催したり、あと新しいアーティストの発掘なんかも手伝っているよ」

【参考音源】Grimecraftの2015年のEP『Grimecraft EP』

 

Seimei「ゲームチョップスは、アメリカのゲーム・ミュージック界隈ではいちばん有名なんです。DJカットマンはそのシーンで影響力のある人で、Grimecraftは彼を通じて数千人規模のゲーム系のフェスに出演したりしていて。だから彼はどちらかと言うとゲーム・ミュージック界隈で人気があるんですよね。クラブ・ミュージックのほうは最近のことで」

【参考音源】DJカットマンの近年の楽曲をリミックス&リマスタリングしてまとめた『Volume III』

 

Grimecraft「でも自分(のリリース)はゲームチョップスの専属になるつもりはなくて。いろんなシングルをほかのレーベルからも出したいとも思っているんだ。特にEPやアルバムについてはいろいろと手を伸ばしているよ。いまちょうど次のEPの準備を進めようとしている段階で、それをどこからリリースしようか考えている。日本のマーケットやネット・レーベルのシーンは(USとは)違うし、注目し続けていきたい。自分のファン・ベースがアメリカの次に大きいのは日本だからね」

――なるほど~。ではそんななかでご自身の作品をMaltineでリリースしたいと思ったのはなぜですか?

Grimecraft「最近ようやくアメリカで人気が出てきて、自分のファン・ベースが出来るに従ってクリエイティヴな決断はファンの声を参考にしてきたんだけど、自分が作ったものを取り扱ってくれるレーベルがなかったのでtomadさんに送ってみたら、気に入ってると言ってくれたんだ。そもそもシングルで発表しようと思っていたんだけど、その頃はインスピレーションがすごく湧いている時期で、1週間くらいでいくつか曲が出来たから、最終的には〈ファンタスティック〉がテーマの4曲入りのものになったんだ」

――Maltineからの作品は以前からチェックしていたんですか?

Grimecraft「Yes! Maltineの作品には好きなものが多いよ。Maltineは自分の友達やライアン・ヘムズワースのようなUSのテイストメイカーを通じて存在を知ったんだ。その頃は日本やオーストラリアのプロデューサーたちが当時流行っていたものとは違う音を作るという大きな波が来ていて、トラップやビート・ミュージックから派生したような感じだったけど、Maltineの作品でよりメロディアスなものを聴けることは新鮮だった。それを受けて、安心して自分のやりたい音楽、売れてる音楽ではなく自分が本当にやりたい音楽を自由にやれると思ったんだ。ミュージシャンとしていちばん気持ち良い形でやれるのがMaltineだと思っているよ」

――おぉ、そうなんですね! やはり作品を作る際のいちばん大きいインスピレーション源はゲームなんですか?

Grimecraft「次のアルバムについてはまだ作りはじめてないからわからないけど(笑)、アルバムを作る時には〈よしクラブ・ミュージック(やゲーム・ミュージック)にしよう〉みたいなことは考えていなくて、それよりも大きなことを考えている。僕はコンセプト・アルバムというのが結構好きで、プログレッシヴ・ロックのようにアルバムを通して大きなストーリーがあるようなものを作りたいんだ。時間はかかるけど満足度が高い。前回のアルバムだとひとつのゲームのなかで起こるロマンスなどをベースにして作っていたし、『ソード・アート・オンライン』もそんな感じになっていたよね」

 

USゲーム・ミュージック・シーンのいま

tomad「最近はゲーム・ミュージックとクラブ・ミュージックは近付いてきていると思いますか?」

Grimecraft「うん、間違いなくここ1~2年で距離は近付いてきてるね。クラブ・ミュージック・シーンの人の多くはゲーム・ミュージックをサンプリングしたりして採り入れているから。いまやナードであることはクールなことになってきていて、ナードでいることは自分のキャリアに有益に働いているところがある。ゲーム・ミュージックが広く浸透していることは自分には有利だけど、一方ではマーケットが飽和状態になってしまうとは感じているよ。フューチャー・ベースなんてゲーム・ミュージックのように聴こえると思うし。この間PCミュージックAG・クックと話した時にも、彼のインスピレーションの源になっているのはビデオゲームだと言っていたし、今後もどんどんそういうふうに近付いていくと思うよ。以前Qrionがアメリカに来た時、〈ゼルダの伝説〉の楽曲のリミックスをかけているのをVineで撮った人がアップしたら物凄く拡散したことでもわかるだろう。いまや世界中のナードたちはクラブ・ミュージックが好きだし、すべて収束しつつあるよ」

【参考動画】Qrionの噂のパフォーマンス映像

 

tomad「世代的には若い人が中心?」

Grimecraft「僕はいま25歳なんだけど、TwitterやFacebookがあって、オンラインでいろいろやることがあたりまえの環境で育っている僕らのようなインターネット世代が中心だね」

tomad「でもEDMとかメインストリームにある4つ打ちダンス・ミュージックは遠い存在なのかな?」

Grimecraft「近付いてきていると思うよ。例えば、メインストリームのポーター・ロビンソンはかつてエレクトロ・ハウスなどEDM寄りのサウンドだったのが、どんどん僕がやってる音楽やMaltine作品に近付いてきていたりするし、ラスコも完全にゲーム・ミュージックを意識した、ウェイヴ・レイサーっぽい楽曲を発表しているしね。いまは何も考えずひたすら盛り上がれる音楽よりも、よりクリエイティヴな方向に向かっていっていると感じているよ」

【参考動画】ポーター・ロビンソンの2014年作『Worlds』収録曲“Flicker”

 

tomad「そういったゲーム・ミュージックやフューチャー・ベース、インスト・ダンスのシーンが大きくなっている理由はなぜだと思う?」

Grimecraft「ウェイヴ・レイサーがゲーム・ミュージック的な音をビート・ミュージックに採り入れたことがきっかけだと思う。スクリレックスデッドマウスも自身の作品にゲームっぽい音を採り入れていたし、メジャーなナードたちがよくやっていたことをみんなが聴いて受け入れられるようになったんだろうね。ノスタルジックに浸ったんだと思う。ゲームも産業として大きくなっているし、80年代だったら本当にナードしかやらないゲームをいまは誰もがやるようになってるから、そういうことも大きいと思う」

【参考動画】ウェイヴ・レイサーの2013年のシングル“Stoopid”

 

tomad「ちなみに、いろいろなゲームをやってきたと思うけど、Grimecraftがいちばん心に残っているゲーム作品はなに?」

Grimecraft「『ファイナルファンタジーVII』や〈ゼルダの伝説〉かな。近藤浩治(〈ゼルダの伝説〉〈スーパーマリオ〉シリーズなど)や植松伸夫(〈ファイナルファンタジー〉シリーズなど)が手掛けた楽曲は自分の音楽にもよく使っているよ。シンセを使うよりもサウンドボンドを使って、自分の音楽のなかでそれらのゲーム音楽を再現しようとしているんだ」

tomad「クラブ・ミュージックならクラブでどう踊れるか、というのが重要だったりするけど、Grimecraftの音楽はベッドルームで音楽を聴いて想像を膨らませる、Maltineの音楽と近い感じがする」

Grimecraft「一方でクラブでの体験は、あるゲームの音楽をかけて、観衆が〈あ、知ってる!〉と表情が明るくなったりするのは、自分と同じようにそのゲームが楽しかったという気持ちをオーディエンスと共有できたっていうことだよね。そういった体験を通じてファンになってくれる人もいる。デスティニーズ・チャイルドがサンプリングされている曲で盛り上がった、みたいなこととはまた別で、みんなのゲーム体験をダンスフロアで共有できるというのもあるよ」

――ちょっと話が戻るんですが、アメリカではナードであることがクールという風潮があるとおっしゃってましたけど、Seimeiさんは実際に現地で暮らしていて、そういった状況をどう感じていますか?

Seimei「cicciくんというMaltine×TREKKIE TRAXのイヴェント・フライヤーのイラストを描いていたりする友達がいるんですが、彼はLAに住んでいるのでよくアメリカについて語ることがあるんです。その会話のなかで〈アメリカにおけるオタクは足していくものだよね〉と言っていたのが印象に残っていて。ファッションのひとつとしてオタクっぽいものを採り入れていくというか。でも日本の場合は、〈脱オタク〉みたいな言葉があるように、オタクっぽさを引いていくんですよね。僕の見解では、オタクというのは完全にアメリカにないもので、採り入れる新しい文化だからクールなんです。日本人におけるオタクのイメージって、内に籠る感じがあると思うんですけど、アメリカのオタクはそういう人いないんですよ。ゲームやアニメが好きな奴ほど……Grimecraftがまさにそうですがよく喋るし(笑)」

――日本でもいまでこそそんな感じじゃないかもしれませんが、何かのオタクであることを隠そうとする風潮がかつてはありましたけど、アメリカではそれが真逆なんですね(笑)。

Seimei「そうですね、隠さないですね。オタクと言われるものの対象はだいたい日本から来ているものですけど、こういうの好きなんだ、と言うのは全然恥ずかしいことじゃない」

――日本とアメリカとではナードのイメージが違うというか。

Seimei「違いますね。オタクがダサイというイメージはなくなりつつある気がします」

――なくなりつつあるということは、かつてはそういうイメージだったということですか?

Seimei「そうですね。僕がアメリカに行った頃は、みんながファッションに日本語を採り入れていましたし。H&Mが〈可愛い〉っていうロゴのTシャツを出してたりして、オタクっぽい要素を足してるんですよ(笑)。だから完全にブーム、トレンドなんです」

――ほ~。

Seimeiフレンチ・エレクトロのブームが数年前にあったじゃないですか。ホントそんな感じで、PCミュージックやライアン・ヘムズワースの盛り上がりはまさにそれを象徴していると思います。A・トラックのレーベル(フールズ・ゴールド)から出しているジラフェージっていうトラックメイカーなんかは一見普通にクラブ・ミュージックを作ってるんですけど、彼の話を聞いてると完全にナードですよ。アナマナグチは〈Ultra〉に出るし、もうその界隈はメジャーな存在ですよね」

【参考動画】ジラフェージの2015年のEP『No Reason』収録曲“Tell Me”

 

――そこに違和感はないですよね。

Seimei「あ、そういうゲーム・ミュージック的な要素を採り入れてるんだ、くらいで(笑)。だから僕は最高のタイミングでカリフォルニアに行ったと思います。カリフォルニアがいちばんそれを受け入れているし、受け入れて新しいものを作ろうとしている人が多いから」

――やっぱり東海岸と西海岸ではトレンドになっているものは違うんでしょうか?

Grimecraft「確実にそうだね。東海岸は遅れているよ。僕がボストンでDJやってた時は、ショウを取り付けるのも大変だったし、できたとしても反応が薄い。西海岸の人のほうがオープンだし、アナマナグチやマクソといった新しいウェイヴのトップ・アーティストのショウは西海岸のほうが全然盛り上がるんだ。まだ東部にいる友人のDJたちも、西海岸ほどヒットできていないよ」

――一方で東では何が盛り上がるんでしょうか?

Grimecraft「……EDMとかかな……ひたすら遅れてるんだよ(苦笑)。東ではいまだに〈EDMナイト〉みたいなお決まりのウィークリー・イヴェントなんかをやってる。自分の知り合いで東海岸で活動しているムーヴィング・キャッスルは、東側でライヴをするのに苦労していてネットで人気のパーティーは打ててないんだけど、一方でサンフランシスコではライヴが決定して、みんなが待っているような状況なんだ」

――へぇ~、全然違うんですね。西海岸からトレンドが生まれて、それが時間をかけて全米に広がっていくような感じなのでしょうか?

Grimecraft「間違いなくそう。アメリカには3か所、LAとサンフランシスコ、NYというここからムーヴメントは生まれるという土地がある。ここからイノヴェーションは始まるし、絶対に押さえておくべきポイント。ここから全米に広がっていくんだ。まあNYは音楽的にはちょっと遅れているかもしれないけど、海外アーティストは必ずその3か所でライヴをやるしね。というのもその土地にいる人は前向きで、新しいものを試していくし受け入れるし、新しく作っている。でも特に西側が優勢なんだ。西海岸全体がヒップなところだよ」

Seimei「ダンス・ミュージックに関してはLAがトレンドの発信地だと思います。EDMの場合はマイアミだったかもしれないけど」

Grimecraft「マイアミは大きいけど最終的に行き着く先であって、何か新しいことやってるのはやっぱり西海岸だよ。SoundCloudでこれからキそうなアーティストはLAの人が多いし」

tomad「そうだよね」

Seimei「LAはとにかく人が多くて、若いアーティストはみんなLAに行くんですよね。NYはマクソとアナマナグチくらいじゃないかな」

【参考音源】マクソの2015年作『Chordslayer』

 

tomad「NYにはもっと伝統的なクラブ・ミュージック・シーンがあるのかな?」

Seimei「NYというかブルックリンですかね、NY市内のクラブってほとんど機能していないと思う。だから若いアーティストはみんなブルックリンに移って……でもギリギリでやってる感じ(苦笑)。結構DIYでやってる人は多い気がする」

tomad「もしMaltineがLAやサンフランシスコでパーティーをやったら盛り上がるかな?」

Grimecraft「間違いなく盛り上がるよ! Maltineはアメリカにしっかりしたファン・ベースがあるし、(出演陣の)良いセレクトができたら間違いなく上手くいく。みんな待ってると思うし。LAは完売になるだろうし、サンフランシスコでも来てくれるから。僕が橋渡し役を喜んでするよ!」

――やらなきゃ、tomadさん。

tomad「やりたいですね」

――この間ロンドンでやった時とはまた違う雰囲気でしょうし。

tomad「そうですね。LAのほうがお客さんは来ると思うんですよね」

Seimei「前からそういう話はしていたんですよ。日本から誰を呼ぼうか、みたいな」

――Seimeiさんもいるなら心強いですよね!

 

海外アーティストから見た日本の魅力

tomad「最近は海外のDJが日本に気軽に来るようになってますよね」

Seimei「自腹で来ますからね」

――えっ!

tomad「日本に行きたいし…みたいなのもあると思うんですけど」

Seimei「エージェンシーを通した場合でも、日本だったらギャラ低くていいよっていう人が多い」

――そこまで思わせる魅力とは何なのでしょうか……。

Seimei「やっぱり小さい頃に体験したゲームやアニメが刷り込まれているから、やっぱり一度は日本に行かなくちゃと思うんじゃないですかね」

――聖地巡礼的な(笑)。

Seimei「僕、14歳までオランダに住んでたんですけど、日本でこんなアニメ誰が見てるの?っていうアニメをオランダ人は観てるんですよ」

――へぇ~。

tomad「再放送とか?」

Seimei「再放送ですね。そのきっかけが、僕が5歳くらいの時にいきなりみんなが〈ポケモン〉って言い出したような気がするんですよ。ある時突然。オランダがそんな感じだったんで、アメリカではもっと凄かったと思いますけど」

Grimecraft「アメリカでのポケモン・ムーヴメントは伝染病みたいな感じだったよ。楽しい思い出で自分でもよく覚えているのが、ある時VHSテープを受け取って、それを再生したら生放送の番組の録画で女性が話していたんだ。アッシュ・ケッチャム(=ポケモンの主人公・サトシの英語版役名)について、あとゲームについて、そしてもうすぐポケモンが世界中で大流行りするかもしれないと言っていた。そうしたらその数か月後には子供たちがポケモンのカードやゲームを持っていて、アメリカ中の子供たちが魅了されていたんだ。あんな勢いで何かが起こるのを初めて見たよ」

――それはいつ頃?

Grimecraft「1996年の11月(即答)」

――速っ(笑)。ということでtomadさん、Grimecraftさんに最後に訊きたいことありますか?

tomad「アメリカの若者にとって日本はどのように見えているのかな?」

Grimecraft「自分としてもいつも行きたい場所だった。TVで日本を観ても、常に進んでいて、近未来的なイメージがあって。それはアニメやゲームの影響もあるかもしれない」

――では実際にいま日本に来てみて、抱いていたイメージとは違いますか?

Grimecraft「思っていたよりも良い土地だと感じています。いちばんは音楽の聴かれ方で、アメリカだとアーティストのヴァリュー、ブランドに頼っている感じが強いけど、日本は音楽そのものを受け止めてくれる。日本のファンは僕だから聴いてくれてるわけじゃなく、音楽そのものを気に入ってくれているという実感があって、音楽の受け止め方がすごくオーセンティックなのがとてもいいと思う。すごく開いた気持ちで聴いてくれている気がするよ。アメリカにはそういう感じはもうないから」

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