伝説の続きを描くべく集結した頼もしい吸血鬼たちを紹介しよう

ALICE COOPER  

 

 吸血鬼を甦らせるにあたり、もっとも奮起したのがアリス・クーパーだ。60年代末、毎晩のようにレインボーで宴を開いていたちょうどその頃、彼はゴシック・メイクやギロチン・セットなどによる視覚的な効果を用いて、〈ショック・ロック〉なる新たなロックのあり方を提示。もしこのレジェンドがいなかったら、マリリン・マンソンロブ・ゾンビも存在しなかっただろう。とりわけボブ・エズリンが手掛けた『School's Out』は、アリスの魅力がすべて詰まった大傑作。奇抜な見た目に反し、彼の音楽に普遍的なポップさが宿っているのは、ブルース~ロックンロールの基礎をしっかり踏襲しているからこそだ。その王道感を『Hollywood Vampires』でも楽しんでくれ! *山口


【参考動画】アリス・クーパーの72年作『School's Out』収録曲“School's Out”

 

BOB EZRIN
 アリスを筆頭に、エアロスミスジェーンズ・アディクションら多くの名盤を手掛けてきた名匠。強者揃いの吸血鬼集団を束ねられるのは、彼しかいないだろう! オーケストレーションの導入など劇的なアレンジを得意とする一方、骨太な直球ロックンロールにも定評があり、今回は後者の面が強く出ている。 *山口

 

BRIAN JOHNSON
 70年代半ばのUSデビュー時に、レインボーと同じ通りに面するウイスキー・ア・ゴー・ゴーで頻繁にライヴをしていたAC/DC。その2代目ヴォーカリストのブライアンも、アンガスに連れられてレインボーの洗礼を受けている。ブルース・ロックをこよなく愛する彼、今回のツェッペリン・カヴァーもバッチリだ! *山口

 

DAVE GROHL
 2013年から1年間かけて全米8都市を回り、各地の音楽の歴史を訪ねながらアルバムとドキュメンタリーを作ったフー・ファイターズ。そのなかでデイヴはドアーズガンズ・アンド・ローゼズの名を挙げ、サンセット通り周辺の地区をアメリカン・ロックの聖地と語っている。ほどなくして吸血鬼仲間となるジョー・ウォルシュとも、この時に“Outside”で手合わせ済み。 *山口

 

JOE PERRY

 

 同プロジェクトの中心メンバーであるジョー・ペリーは、ご存知、エアロスミスのギタリスト。いまでこそ素行も良く、愛妻家として有名だが、1度目の結婚期間(75~82年)はLAに訪れるたびに、夜な夜なここで遊んでいたとか。アリスとは70年代からの付き合いで、今日に至るまで共にアメリカン・ハード・ロックを牽引してきた兄弟であり、戦友的な間柄だ。また、映画「ショコラ」でのギター演奏シーンに感銘を受け、知人を介して仲良くなったというジョニデとも、エアロの最新作『Music From Another Dimension!』やソロEP『Joe Perry's Merry Christmas』などで共演を重ねている。かねてからルーツ志向の強いジョー、吸血鬼化しても持ち前のブルージーな魅力は薄れるわけもなく! *山口

【参考動画】ジョー・ペリーの2015年作『Joe Perry's Merry Christmas』収録曲“Run Run Rudolph”

 

JOE WALSH
ジェイムズ・ギャングイーグルスで名を馳せた西海岸が誇るこの剛腕ギタリストも、吸血鬼一味へ加わることに。ジミ・ヘンドリックス“Manic Depression”のカヴァーでヘヴィー極まりないギターを轟かせているのが彼だ。ちなみにレインボーに入り浸っていたリンゴ・スターは義理の兄にあたる。 *桑原

 

JOHNNY DEPP

 

 このスーパー・グループの首謀者の一人。カリブの海賊でもある彼は、もともと高校中退後にキッズというバンドを組み、一旗揚げんとLAに移り住んでいる。あの頃はまだ10代で、レインボーに入れずヤキモキしていたのでは!?……なんて妄想を働かせてみたくもなるものだ。いずれにせよ、当時のバンド仲間、ブルース・ウィトキンを招いていることからも察せられる通り、ジョニデにとって同プロジェクトが〈あの頃の夢よ、もう一度〉って意味合いを持っていることはまず間違いない。オアシスとの共演など音楽家としての顔も保ち続けてきた彼だが、ここ数年はそちらの活動により力を注いでいる模様。掲載している関連盤のほか、パティ・スミスライアン・アダムスの最新作で達者なギター演奏を聴くことができる。 *桑原

 

KIP WINGER
 80年代中期にアリスを支え、甘いマスクとしなやかな身のこなし(元バレエ・ダンサーという経歴も持つ!)で多くの女性の心を射抜いたベーシスト。この吸血鬼復活祭には、彼のほかにもニール・スミスデニース・ダナウェイら元アリス・バンドの面々が駆け付けていて、師弟関係の健在ぶりに興奮したぜ!  *山口

 

ORIANTHI
マイケル・ジャクソン〈This Is It〉のリード・ギタリストに起用されて脚光を浴びたこの女傑、ツアー・メンバーだったこともあり、アリス・クーパーとは深い付き合いがあるのだ。クラシックなハード・ロックはお手のもの、といった風情で屈強なヴェテラン吸血鬼に交じって荒々しく演奏する姿が頼もしい!  *桑原

 

PAUL McCARTNEY
 70代半ばに差し掛かっても精力的に世界ツアーをこなしている怪物のようなポール卿も、若き日を懐かしんで吸血鬼化だ。アルバムでは愛弟子のバッドフィンガーに提供した“Come And Get It”でアリス・クーパーと共にリード・ヴォーカルを担当し、いつも通りの溌剌とした歌声(プラス、ブンブン唸るベース・プレイ)を聴かせてくれるぞ。待望の初コラボが実現したジョー・ペリーの弾けるような笑顔も目に浮かぶ。 *桑原

【参考動画】ポール・マッカートニー&ウィングスの73年作『Band On The Run』収録曲“Band On The Run” 

 

PERRY FARRELL
ジェーンズ・アディクションのフロントマンとして90年代にショック・ロックを甦らせた功労者の一人である彼が、吸血鬼再生計画に参加したのは自然な流れだろう。バンド離脱期に結成したサテライト・パーティでジム・モリソンと合体するなど、往時の吸血鬼伝説への憧れの強さはハンパじゃない! *山口

 

ROBBY KRIEGER
 ドアーズのジム・モリソンもまた、聖なる酔っぱらい伝説の一員だった。彼に代わってバンドの同僚であるこのギタリストが今回のプロジェクトに加わるなんて、男の固い友情を感じさせるよな。 ハードなドアーズ・メドレーが、ジムの霊を叩き起こそうとしているように聴こえて仕方ない。他にも店の常連だった亡き友人、ハリー・ニルソンのカヴァー・メドレー“One /Jump Into The Fire”に参戦。 *桑原

【参考動画】ドアーズの67年作『The Doors』収録曲“Twentieth Century Fox”

 

SIR CHRISTOPHER LEE
 ハマー・フィルムのドラキュラ役で映画ファンから愛されるこの名優まで駆り出すとは、吸血鬼たち恐るべし! 彼から多大な影響を受けたアリス・クーパーも真っ青の、おどろおどろしい語りをアルバムの冒頭で披露し、良い具合に背筋を凍らせてくれる。これが93歳で天寿を全うした御大のラスト・レコーディングに。 *桑原

 

SLASH
 エアフォース(エアロスミスの熱狂的な信者の呼称)であることを公言し、レスポールによるルーツ志向な音作り、ヴォーカリストとの衝突劇など、常にジョー・ペリーの背中を追ってきたスラッシュ。ガンズ・アンド・ローゼズ時代にコラボして以降、アリスにも可愛がられていて、誰もが納得の吸血鬼入りだ!  *山口

 

ZAK STARKEY
 レインボーの常連だったキース・ムーンを師と仰ぎ、ザ・フーの準メンバーとして活動するなど、いまやUKロック界に欠かせない存在のドラマーだ。父リンゴ・スターが同じく店に通い詰めていた縁もあって吸血鬼入りを果たし、フーの“My Generation”や“I'm A Boy”でラウドかつマッドな太鼓をブチかましている。 *桑原