最高の演奏陣と映像で贈る、奇跡の生演奏上映が実現!

 2005年9月にカール・デイヴィス指揮新日本フィルの「街の灯」生演奏上映を見た時、通常の演奏会ではあり得ない光景を目の当たりにして驚いた。チャップリンのコミカルな演技に笑いを堪え切れぬオケ。すみだトリフォニーホール全体に響き渡る観客のすすり泣き。80年以上前の映画を上映し、その音楽を演奏しているだけなのに、こんなにもエモーショナルで生々しいリアクションが出てくるとは、正直予想もつかなかった。初公開当時の観客が腹の皮をよじらせ、大粒の涙を流したのと同じように、21世紀の現代(=モダン・タイムス)にあってもチャップリンは確実に生きていたのだ。そして今年、10年ぶりに再びカール・デイヴィスを指揮台に迎えた「モダン・タイムス」生演奏上映がようやく同じ会場で実現することになった。

 チャップリンの全作品の中でも、「モダン・タイムス」ほど〈現代〉の我々に強烈なメッセージを投げかける映画は他にない。ベルトコンベアの流れ作業に象徴されるブラック企業の搾取、格差社会に起因する犯罪、そしてドラッグ汚染。21世紀の我々の眼から見ても、あまりにも生々し過ぎる題材である。しかしながら、チャップリンは得意のパントマイムでシリアスなテーマを笑いに昇華し、そこに豊かな音楽をあてがうことで、単なる社会派作品を芸術の領域まで高めることに成功した。ホームレスの男女が理想の邸宅を夢見る場面で流れてくる、ジャズのスタンダード・ナンバーとしてもおなじみの名曲“スマイル”。富裕層のナンパの顛末をデタラメ語の歌詞と珍妙な振付で表現した、チャップリン自身の歌唱による“ティティナ”。「モダン・タイムス」が〈現代〉においてもメッセージ性と感動を失わないのは、チャップリンの音楽が最高の力を発揮しているからだといっても過言ではない。

 だからこそと言うべきか、「モダン・タイムス」の生演奏上映はそれ自体がチャップリン級の曲芸的演奏を要求するため、現在もごく僅かなスペシャリストを除いて指揮が許可されていない。工場の場面の慌しいネジ締めのマイムと、賑やかなオーケストラによって表現されるハンマー音を完璧にシンクロさせるなんて、普通の指揮者がモニター映像とクリック音を使って演奏しても不可能なのだ。その不可能を可能にしてしまうのが、長年チャップリン音楽の復元と演奏に携わってきた魔術師、カール・デイヴィスなのである。ともかく、巨大スクリーン(映像は最新デジタル・リマスター版を使用)に映し出されるチャップリンの名演を見て大いに笑い、大オーケストラが演奏するチャップリンの名曲を聴いて大いに泣いていただきたい。それこそが、チャップリンの正しい鑑賞法なのだ。

 


LIVE INFORMATION
新日本フィルの生オケ・シネマ
チャップリン《モダン・タイムス》(日本語字幕付き)

○5/7(土)
【昼公演】13:00開場/14:00開演
【夜公演】17:00開場/18:00開演
会場:すみだトリフォニーホール 大ホール(東京)
出演:カール・デイヴィス(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団
曲目:チャップリン:モダン・タイムス
www.triphony.com