INTERVIEW

上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトの挑戦―不動の3人で録音した心の揺れ~衝動示す4作目『SPARK』を語る

上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトの挑戦―不動の3人で録音した心の揺れ~衝動示す4作目『SPARK』を語る

体力が許す限り一生進化し続ける!
上原ひろみザ・トリオ・プロジェクトの挑戦

 「始めて5年になるんですけど、やってきただけのかいを感じて、“継続は力なり”という気がします」

 「どんどんテレパシーみたいな部分が増えていますし、誰を前に出すとか、2トップにしようかとか、そういったフォーメーションがトリオでいろいろ組めるようになって、トリオとしての音色っていうのが広がっていっていますね」

 「2人とも本当に挑戦し続ける人たち。妥協を許さない人たちなので、一生体力が許すかぎり、この3人で進化し続けるんだなと思っています」

上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト SPARK Telarc/ユニバーサル(2016)

 これらは、上原ひろみのパーマネント・バンドであるザ・トリオ・プロジェクトの進化について、彼女が言及している箇所の抜粋だ。もちろん、新作『SPARK』もまた、不動のアンソニー・ジャクソン(6弦ベースたる、コントラバス・ギター)とサイモン・フィリップス(ドラム)の3人でレコーディングされている。

 その『SPARK』は同トリオによる4作目となるが、そもそも上原はどうして(現在)63歳と58歳という年長者と一緒にやりたいと思ったのだろう。

 「アンソニーはデビュー・アルバムと2作目で部分的に入ってもらったんですが、鉄壁のグルーヴ感と、エレクトリック・ベースにも関わらずとてもスウィングする彼のウォーキング・ベースにひかれていたんです。音の選択も彼でかしない音の選び方をしていて、例えばC7でも普通の人が選ぶC7ではなく、違う音の繋ぎ方をし、とにかく一緒にやってとてもおもしろかった。だから、一緒にやりたいねと、会うと話していたんですよ。サイモンの場合はジェフ・ベックをはじめ私は一ファンとしてその演奏に触れていたんですが、彼のすごく色彩感のあるドラムが大好きなんです。サイモンはとても高い技術を持つドラマーですが、歌心が技術を超えているともいつも思っていました。私は彼の歌うようなドラムを欲したんです。アンソニーとサイモンは元々顔見知りでしたが、この3人が集まったら絶対におもしろいものが出来ると思い、実際やってみたら、それが確信に変わりましたね」

 『SPARK』は、この3人で演奏することを想定した曲を用意することから始まった。基本、収録された楽曲は前作『ALIVE』発表後に書かれたものだ。そして、3人でリハーサルに入り、その後ツアーに出て現場でより曲趣を煮詰め、最終的に昨年10月にコネティカット州のスタジオ(NYのパワー・ステーションとまったく同じ仕様を持つそう)でレコーディングされた。結果、冒頭にあるような三者関係を軸とするメロディとインタープレイが魔法のように共存する、壮絶にして深淵なインストゥメンタル表現が結晶。自らのピアノ演奏で新機軸と感じるところはありますかと彼女に問うと、次の答えが帰ってきた。

 「タイトル曲の《SPARK》の延々と繰り返されるピアノのリフは本当に一粒一粒、はっきりと弾きたいと思いましたが、あれをずっと長い時間弾いているのはけっこう難しかった。でも、やっぱりリフレインするものなので、きちんと粒立ち良く弾きたかった。それが出来るようになったのは嬉しかったですね。それから、ソロで演奏した《ウェイク・アップ・アンド・ドリーム》は3テイク目だったかな、弾いていて、進めば進むほど、これこそが(決定)テイクだという確信が沸いて来て、どんどんゾクゾクしていったのを覚えています。高揚感とか緊迫した気持ちとかが入り交じり、最後の音を弾いて、はあと息が詰まる感じを得て、すごい印象に残っています」

 アルバム表題の『SPARK』とは、“心の揺れ~衝動”を示すという。彼女は毎度アルバムを作る際、トータルな“物語り性”をそこに与える音楽家だが、今作もそれは同様。当然のことながら、上原が描くストーリーにそって多彩な楽曲は流れていく。

 「なぜ、この曲が同じアルバムに入らなければならないか。そういう曲どうしが曲を呼び合うような関連性を大切にしたいんです。1曲目を聴いたら最後まで止まらない、最後まで聴いてしまうという、流れのあるものにしたつもりです」

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