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【starRoのLos Angeles云々】Vol.7 アメリカをめざす人へ、僕から言える2つのこと

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3月に開催されたSoulection5周年イヴェントに出演した時の写真。2晩に渡って開催されて両日ソールドアウト、計2,000人で5周年を祝いました
Photo by VZMAESTRO
 

こんにちはー! 早くも連載7回目。おかげさまで、最近は投稿のたびにアクセス・ランキング上位に喰い込むようになり、ちょっと調子に乗ってるので、あとで自分にガツッと言っときますから! 安心してくださいね!

さて、その連載の効果もあるのか、ここ数か月、アメリカで音楽活動に挑戦したいという日本の方から結構な数のご相談を受けます。ここ10年ぐらいで日本人の海外志向が劇的に薄れているという話はよく聞きますし、実際アメリカの名門大学における日本人留学生の数は、一昔前より圧倒的に少ないみたいで。ましてや海外で音楽をやってみたいという人はほんの少数派だと思っていたんですが、意外といるもんですね! 自分としてはできるだけそういった相談にはきちんと答えるようにはしているんですが、そもそも自分にそんな相談を受ける資格があるのかも含めて、皆さまに知っておいていただきたいことがあり、今回はこの場を借りて、自分が何故アメリカで音楽をやっているのか、アメリカで活動するとはどういうことなのかを、自分の経験ベースで書いてみたいと思います。


なぜアメリカで活動しているのか

相談を受ける際、まず圧倒的に誤解を受けているなと思うのは、自分が音楽で勝負しにアメリカへ渡ったと思われていることです――ごめんなさい、僕はアメリカに渡った時、超普通のサラリーマンでした。音楽は大好きだったし、トラックもたまに趣味で作ったりはしていたので、〈いつかミュージシャンに!〉なんて口では言っていたものの、実際はサッカー少年が〈いつかバルセロナに入りたい〉とかいうのと同じ次元の話。とにかく、アメリカに渡ったのは単にアメリカ生活によってライフスタイルを変えたかったというだけの動機でした。

なので、アメリカでは普通に就職をして音楽はほとんどやらず、少なくとも2~3年はアメリカで淡々と日々を過ごしていました。というかその間は生活するのに必死で、音楽活動をするという発想すらなかったですね。正直な話、単純にアメリカを生活の場とするのは、日本よりも全然大変なんです。もちろん、ここではアメリカの大都市に住むのが前提ですが(というかアメリカにわざわざ渡って音楽をやるならLAやNYといった大都市じゃないと意味がないと僕は思うので)、医療費など日本では自己負担割合が少なくて済むものが物凄くかかるうえ、諸々の生活コストも東京よりだいたい高かったりします。アメリカの大都市の場合、特に日本と同じような治安の場所に住むという最低限の生活レヴェルを保つためには、より生活コストをかけるしかありません。

ということで、僕の場合は最初の2~3年は必死で、4~5年経ってやっと仕事先での給料も上がって生活基盤も出来て、ちょっと余裕が出てきたって感じですかね。趣味の音楽でもまた再開しようかなあと思いはじめたのは、その後のことです。逆にいうと、自分の場合は音楽活動を始める前に、アメリカ住民として普通に生きるための地盤がすでに整っていたわけです。

そんな経験から、これから音楽活動のためにアメリカへ渡るアーティストの方に伝えたい最初のポイントは、アメリカでアメリカ人と同じ土俵で勝負するにあたって、〈生活もままならない〉というハンディキャップが最大の難関になるということです。大リーガー・レヴェルの実力があっても、自分だけ生活のためにバイトしながら野球をやっていたら、たぶん他のチームメイトに太刀打ちできないのと同じことです。

それともう一つの難関は、アーティストとしての芽が出るまで十分な時間がないかもしれないということです。アメリカで生活するためにネックになることは、合法的に滞在する手段なんですが、そのためのビザ取得は結構大変です。もっとも簡単な方法はアメリカの学校に入学して学生ビザを取得することですが、こっちは学費がとにかく高く、特に4年制大学だとかなりお金がかかります。手っ取り早いのは1年間の語学留学ですかね。でもアーティストとして一人前になるまでは非常に長い道のりです。いまアメリカの第一線で活躍しているような才能ですら、何年もかけてやっと芽が出るという世界のなかで、たった1~4年で結果を出すのはかなり難しい。

そもそもアーティストとしての成功は、サポートしてくれる周りのいろいろな人間、またはアーティストとして受け入れてくれるマーケットがあってのこと。自分の望むペースでは物事は進まず、結局辛抱強く、淡々とやれることをこなしながらゆっくり前進するのみという世界だと思いますが、そんななか無理やり短期間で結果を出そうとすると、成功するものもできなくなってしまいます。

自分の場合は、たまたま自分のジョブ・スキルを求めてくれる会社がビザ・サポート付きで雇ってくれて、さらに5年の滞在後に永住権の取得もサポートしてくれたので、本当にラッキーでした。しかし当然それはそもそも音楽活動をやっていなくて、その仕事に集中していたからこそできたことです。

3月、憧れの中の憧れ、DJプレミアと共演した時の会場の様子。会場のベラスコ・シアターも出演者も豪華すぎてもう夢のようでした


これから渡米したい人に伝えられること

ということで、僕の場合はとにかく、音楽のために渡米したわけじゃなかったこと、ビザ・サポートしてくれる就職先が見つかったこと、ものすごく遠回りして音楽家として食ってくことになったことの3点で、これから渡米して音楽活動をしようとする人には参考にならないし、オススメもできません。

かといって、音楽で成功することをめざしてアメリカに来るべきではないということではありません。僕がこれから渡米したい人に伝えたいのは、音楽に限らず、もし海外へ勝負しに行くのであれば、現地の人間とのハンディキャップができるだけない状態で、同じ土俵で戦いましょうよってことなんです。大リーグをめざすのであれば、マイナー・リーグのテスト生から始めて、慣れない土地で生活もままならない、収入も厳しいという状態で勝負するんじゃなくて、日本のプロ野球で実力を認めさせて最初からメジャーにスカウトされ、生活環境もプレイ環境も整えてくれている状態で行きましょうよと。

ミュージシャンであれば、いまはネットがあるんだし日本からでも世界に発信するのは簡単になっているので、まずは生活が一番簡単な日本でミュージシャンとして名実共にある程度の成果を出し、アメリカへ行ったらいきなりショウやスタジオの仕事がバンバン入ってくる状態に持っていくのがベストなんじゃないでしょうか。特に音楽の場合、実力で判断されるスポーツと違って、その人が売れるか売れないかという基準で判断されるので、わかりやすく〈何故自分は売れるのか〉を証明する何かが必要です。アメリカであればアメリカ人でもわかりやすい魅力、例えば欧米アーティストの誰々とコラボした、SNSのフォロワーがこれだけいる、DJ世界大会で優勝した……といった名刺代わりになるものがないと、誰にも相手にされず、スタート地点にも立てません。そういうセールス・ポイントは日本にいても作れるはずです!

いまのところ、アメリカの音楽の世界ではご存知の通りアジア人は本当にマイナー。ただ、いま特に韓国のアーティストのアメリカ上陸の動きが加速しており、日本を含めたアジア全体がやっとちょっとずつ興味の対象になりつつあります。なので、日本からどんどんいい音楽が発信されて、注目を集めるアーティストがたくさん出てくる時代が来ると信じています!

ということで、次回の連載はアメリカの音楽シーンにおけるアジアンの台頭をテーマにしようかなと思っていますので、お楽しみに!

あと、自分の告知で恐縮ですが、5月に日本でライヴさせていただきます。去年の4月以来1年ぶりの東京、大阪公演なので、ぜひ観にきてください!

5月13日(金)大阪・心斎橋CONPASS(with Seihoほか)
※詳細はこちら

5月14日(土)東京・Sound Museum Vision GAIA(with Mr. Carmack, Jarreau Vandal, Yukibebほか)
※詳細はこちら

 starRoの最新チューン“Dont Stop”
 

PROFILE:starRo


LAを拠点に活動するプロデューサー。いま注目を集めるかの地のレーベル/コレクティヴ・Soulectionに所属し、オリジナル曲の制作に加えてフランク・オーシャンアウトキャストリアーナアッシャーなどのリミックスを自身のSoundCloudで多数公開するほか、滴草由実ら他アーティストへの楽曲提供なども行う。2015年2月に初EP『Emotion』をリリース。コンスタントに現地でライヴ/ツアーも行っている。最新情報はこちらでチェックを! 

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