INTERVIEW

acid android × THE NOVEMBERS ×土屋昌巳―なぜデペッシュ・モードをカヴァーするのか? 音楽の扉を開いた恩人への想い

acid android in an alcove vol.8 × THE NOVEMBERS PRESENTS 首

acid android × THE NOVEMBERS ×土屋昌巳―なぜデペッシュ・モードをカヴァーするのか? 音楽の扉を開いた恩人への想い

L'Arc〜en〜Cielのドラマー、yukihiroのソロ・プロジェクト=acid androidと、結成11周年を迎えて勢いに乗るTHE NOVEMBERSによるコラボ・イヴェント〈acid android in an alcove vol.8 × THE NOVEMBERS PRESENTS 首〉が8月11日(木・祝)に神奈川・川崎CLUB CITTA'で開催される。acid androidは去る6月のワンマン公演でさらなる進化を遂げており、THE NOVEMBERSとは約2年ぶり2度目の共演。しかも今回は、yukihiroがこよなく愛するデペッシュ・モードの楽曲を、自身と土屋昌巳(ギター)、KENT(ヴォーカル/Lillies and Remains)、 高松浩史(ベース/THE NOVEMBERS)、TOM(キーボード/PLASTICZOOMS)でカヴァーするスペシャル・セッションや、DJとして石野卓球の出演も決まっている。

この豪華なラインナップから窺えるのは、先人へのリスペクトと、共通のルーツであるニューウェイヴへの愛情だ。そこで今回は、yukihiroと土屋昌巳、THE NOVEMBERSから小林祐介と高松浩史を迎えて、イヴェント実現の経緯とお互いに抱くシンパシー、そしてUKニューウェイヴの巨星デペッシュ・モードを2016年にカヴァーする理由を存分に語ってもらうことに。世代は異なれど深い部分で通じ合う4人が集まったことで、笑いの絶えないリラックスした座談会となった。 *Mikiki編集部

 


土屋さんは音楽への扉を開いてくれた恩人(yukihiro)

――今回は共演される皆さんにお集まりいただいたわけですが、それぞれお互い浅からぬ因縁があるとお聞きしています。

小林祐介(THE NOVEMBERS)「因縁(笑)!」

――それは追い追いお訊きするとして、今回はacid androidのイヴェント〈alcove〉とTHE NOVEMBERSのイヴェント〈首〉が合体した形なんですね。

小林「そうです。もともとお互いの企画をこの時期(8月)に打とうとしていたんですね。それが発覚して、一緒に何かできないかという話になりまして」

yukihiro(acid android)「THE NOVEMBERSには僕のイヴェント(〈acid android in an alcove〉)に出てもらったことがあるんです。2年前かな」

小林「そうです。深夜のイヴェントでしたね」

――小林さんはacid androidにギタリストとして参加した経験があるし、お互いのことはよく知っている。

小林「そうですね」

acid androidの2013年12月のライヴ映像(サポート・ギターはKENT)
 

――それに加えて、今回は石野卓球がDJとして参加します。

yukihiro「卓球さんは以前サンレコ(サウンド&レコーディング・マガジン)で対談させてもらった時にお話して、すごく楽しかったんです。僕のイヴェントはDJとバンドが交互に出るというスタイルでずっとやっているんですが、今回は卓球さんに出ていただけたらおもしろいだろうな、と思って声をかけさせてもらいました」

――お2人はキューン・ミュージックのレーベルメイトですけど、対談するまで面識はあったんですか。

yukihiro「ほとんどなかったんです。ディレクターが一緒だったりしたんですけど、いままではお会いする機会がなくて。だから(声をかけるのに)勇気は要りました(笑)」

――勇気が要りましたか! サンレコの対談は何がテーマだったんですか。

yukihiro「デペッシュ・モードです」

――なるほど。ここでデペッシュ・モードというキーワードが出てきましたが、実は今回のイヴェントの目玉は、土屋さんやyukihiroさん、高松浩史さんなどが参加するデペッシュのトリビュート・セッションですよね。これはどこから出たアイデアだったんでしょうか。

yukihiro「卓球さんと対談した時に、ドイツではDJがデペッシュ・モードしかかけない〈デペッシュ・モード・ナイト〉というのがあって、それに何万人とは言わないまでも、それに近い数のお客さんが集まるという話を聞いて。そういうことが日本でやれたらなぁと(笑)。デペッシュ・モードが好きな人たちが集まったイヴェントで、デペッシュ・モードのカヴァーがやれたらおもしろいだろうなと思って、それで今回提案させてもらいました」

――しかも前出のお三方に加え、KENT(Lillies and Remains)、TOM(PLASTICZOOMS)のお2人も参加した豪華なメンバーです。メンバーはどのように決まったのでしょう?

yukihiro「まず、土屋さんにダメ元で(笑)。土屋さんが引き受けてくださるなら、本気で考えようかなと思っていました」

――なぜデペッシュ・モードのトリビュートに土屋さんだったんです?

yukihiro「自分にとっては、デペッシュ・モードがというより土屋さんがギターを弾いてくれたらすごく嬉しいというのが第一でしたね」

――土屋さんは、yukihiroさんが音楽を始めるきっかけになった人なんですよね。

yukihiro「そうです。音楽への扉を開いてくれた恩人なので」

――デペッシュ・モードは口実で、とにかく土屋さんとやりたかったと。

yukihiro「はい(笑)」

――高松さんはどういう経緯で?

yukihiro「せっかくTHE NOVEMBERSとやるイヴェントですし、セッション・バンドをやるなら、そこに出ている人たちでやったほうがおもしろいかなと。KENT君は普段から付き合いがあって近い関係だし、声質も(デペッシュ・モードに)合っている。TOM君は、キーボードに誰かいないかと探していた時に、彼がいいんじゃないかと思いついたんです」

デペッシュ・モードの83年作『Construction Time Again』収録曲“Everything Counts”
Lillies and Remainsの2014年作『Romanticism』収録曲“BODY”

 

卓球君が選曲したミュートのコンピは素晴らしかった(土屋) 

――土屋さんはデペッシュのカヴァー・バンドのオファーを、どう受け止めたられたんですか。

土屋昌巳「来たな、っていう(爆笑)。僕の場合は完全にリアルタイムで聴いてましたから。お話をいただいて、一度(yukihiroと)お会いしたんですよ。ちゃんと話したことがなかったので。そうしたら思ったよりも深いところでデペッシュを理解していて。実はものすごく歴史のあるバンドで、彼らがデビューしたミュートはイギリスのテクノでは最重要と言っていいレーベルで。僕がロンドンに住んでいた時、たまたまミュート(のオフィス)が近所にあったんですよ」

――へぇ!

土屋「僕がKA.F.KAをやりたいと思った頃は、ジョイ・ディヴィジョンとかニューウェイヴ前夜ぐらいのバンドにものすごくハマっていたんです、精神的に。そこをきっかけにして、やっぱりあの頃(80年代初頭)のテクノっていいなと改めて思いはじめていたタイミングだったので」

※2013年に土屋、ISSAYDer Zibet)、森岡賢minus(-))、KenKenRIZE)、MOTOKATSUTHE MAD CAPSULE MARKETS)で結成されたバンド。KenKenは初ライヴのみに参加し、以降のベーシストはウエノコウジthe HIATUS

――どこに魅力があったんでしょう。

土屋「可愛らしいテクノというか。アナログの発信器があって、そこから音が出ているというね。僕はまだギターがいない頃の、初期のデペッシュが特に好きなんです。まだ(デペッシュが在籍する)ミュートが小さなインディー・レーベルで、本当に一部の人しか知らなかった頃ですよね。卓球君はおそらくそのうちの一人で、彼が選曲したミュートのコンピ(98年発表の『EARLY MUTE SELECTION “THE SCIENTIFICALLY TUNES』)が素晴らしくて。ミュートの素晴らしさもさることながら、石野卓球ってやっぱりすげぇなと。選曲も曲順も言うことなくて。そうしたら偶然(今回のイヴェントに)卓球君もDJで出るというので、そこでご一緒できるのは光栄だなと」

『EARLY MUTE SELECTION “THE SCIENTIFICALLY TUNES』に収録されたデペッシュ・モード“Any Second Now”
 

――なるほど。

土屋「THE NOVEMBERSもそうですけど、僕は音楽と深いところで関わっている人たちとやりたいし、そういう人たちとしか一緒にできないですから。なので(声をかけてもらったのは)嬉しかったですね。あとは、yukihiro君が部屋(プライヴェート・スタジオ)にシンセサイザーを縦に立てかけてるという話も決定的だった(笑)。だいたいみんなデジタルのソフト・シンセに走っているので、ちゃんと鍵盤の付いたアナログ・シンセを持ってる人は少ないから」

――やはりアナログのハード・シンセにこだわりがある。

yukihiro「もちろんです」

土屋「そこなんですよね。〈なぜ、いまデペッシュなのか?〉っていう。最初にソフト・シンセの音を聴いている人にはわからないかもしれないけど、真実は、いい音はちゃんとそこにある。それを伝えていくのが僕らの仕事だと思うんです。デペッシュはまさにそうだもんね。初期は5万円ぐらいで買えるような、ローランドのモノフォニックなシンセをリードに使っていたわけですよ。あの頃の音には、いまも敵わない。愛おしさがあるっていうかね。〈どうだ!〉って音はわりと簡単に作れちゃうけど、ああいう可愛い音はなかなか出せない。実際に若い世代も、モノフォニックの単音しか出ないような昔のアナログ・シンセを再認識しはじめていますよね」

――やはり土屋さんにとっては、デペッシュは初期のイメージが強い。

土屋「そうですね。あとはもう運命的なものですよ。僕がジャパンデュラン・デュランのメンバーと付き合っている頃、彼らやソフト・セルマーク・アーモンドも同じように英国で活動していて、近くに住んでたんです。映画を観に行って、後ろでポップコーンをバリバリ食べててうるせえな、と思って振り返ったらマーク・アーモンドだったり(笑)。あの頃はみんな情熱だけはあったんですよ。俺たちはものすごいことをやってるんだっていう、何の根拠もないんだけど、自信だけはどのバンドもあって」

――土屋さんがロンドンにおられた頃に、デペッシュと面識はあったんですか。

土屋「面識はないけど、そのへんに普通にいた(笑)! 特にあの頃のノッティングヒル・ゲイト界隈にはそういう人たちが結構住んでいたし、アメリカのミュージシャンやイギリスの地方のバンドがロンドンに来るとよく泊まる、ポートベロー・ホテルって有名なホテルもあったりするので、わりとよく見かけましたよ。僕が現地で若いミュージシャンを集めてバンドをやっていた時は、モリッシーが(ライヴを)観にきましたからね」

小林「うわぁ(笑)。それは初めて聞いた」

土屋「たまたま僕の知り合いがマネージメントしてるスタジオで、モリッシーがソロ作のレコーディングをしていて」

――スミス解散後の話ですか?

土屋「そうです、ギタリストを探していたみたいで」

――じゃあその時に、土屋さんがモリッシーに誘われて一緒にバンドをやっていた可能性もあったということですか?

土屋「僕がもうちょっと巧かったら実現したんじゃないですか(笑)」

小林「それはすごいな(笑)」

土屋ミック・ジャガーの時もそうでしたからね。キース(・リチャーズ)と仲が悪い時に、僕と2回ぐらい会ってくれて」

――へぇ……。

土屋「でも、実力不足で(笑)。その時は結局ジェフ・ベックがやってましたね」

――『She's The Boss』(ミック・ジャガーの85年作)の時ですか。

土屋「ほんのちょっと及ばなかった(笑)」

――すごいですね……。デペッシュ・モードの場合は、あまりギターのイメージがありませんが。

土屋「そうですね。そこはギターのいないデペッシュで僕がやったらどうなるか。そういう楽しみがあります」

 

L'Arc~en~Cielが自分の価値基準を作ってくれた(高松) 

――ところで、演奏する曲はもう決まっているんですか。

yukihiro「はい。以前も(acid androidの)プログラミングを手伝ってくれた方と一緒にトラックを作ってるところです」

――流石に作業が早いですね。今回は何曲やるんですか?

yukihiro「5曲です。トラックに関してはもう、なるべく(忠実に)再現しようと思っていて。もちろん、実際の演奏に置き換える部分は出てくるでしょうね。デペッシュの音源は完全に打ち込みだけど、ライヴではまた別物のパフォーマンスになる。ここでもそれができたらいいなと。しかもデペッシュの場合、ベースはライヴでもシーケンスですけど、今回は生でやるので、そういう部分は違ってくると思います」

※追記
“Never Let Me Down Again”“Enjoy The Silence”“Behind The Wheel”“Personal Jesus”“Walking In My Shoes”をカヴァーすると発表された

土屋「そこがいちばん楽しみだよね。高松くんがどうプレイするか」

デペッシュ・モード“Enjoy The Silence”の2013年のライヴ映像
 

――yukihiroさんは、デペッシュだと中後期のイメージですか。

yukihiro「初期のイメージもありますけど、いちばん聴いたのは『Construction Time Again』(83年)以降ですね。(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンとかが出てきたあとの、音がハードになってインダストリアルになってから。その頃のイメージが強いですね。いちばん聴いたアルバムは『Violator』(90年)です」

デペッシュ・モードの84年作『Some Great Reward』収録曲“People Are People”
デペッシュ・モードの90年作『Violator』収録曲“Personal Jesus”
 

――THE NOVEMBERSのお2人は、デペッシュに関していかがでしたか。

小林「デペッシュ自体はそこまで深く聴いてなかったんですけど、ニューウェイヴやポスト・パンクが海外の音楽にのめり込むきっかけだったので、もちろん避けて通れなかったところがあって。最初に聴いたのがやはり『Violator』だったんです。その後に友人のお勧めとかをいろいろ聴きつつ、2作前の『Black Celebration』(86年)を聴いてより好きになって。それでリリーズのKENTくんやPLASTICZOOMSのSHOくんなんかと知り合ってから、どんどん興味が深まっていった感じですね。高松はそんなに聴いてなかったんだよね」

高松浩史(THE NOVEMBERS)「僕は正直に言うと、今回のお話をいただくまでほとんど聴いたことがなくて。小林君に教えてもらって、いま勉強しています」

小林「リリーズに通じるところもあるしね(笑)」

高松「うん、似てる。歌い方とか」

小林「ハーモニーの付け方なんかはリリーズが影響を受けていそう」

――デペッシュを勉強してみて、どういう感想を抱きましたか。

高松「パッと聴いた時に、すごく声が好きでしたね。ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンみたいな、すごく惹かれる声だなと」

小林「艶っぽい」

高松「そう。何の違和感もなく好きになれそうだな、という気はしています」

――さっき、プログラミングのベースを生のベースに置き換えるのがポイント、という話が出ましたが、自分には何ができると思いますか。

高松「どうなんですかね。本家のトラックにはベースが入っていないので、それをどうしようかなと。トラックを聴いて、お話させてもらってから詰めていこうかと思っています」

――高松さんにとっては、デペッシュ・モードの曲をやれることよりも、yukihiroさんに声をかけてもらったこと自体が……。

高松「そうですね! もう夢のような話で」

――以前インタヴューさせてもらった時に印象的だったのが、〈L'Arc~en~Cielになりたい〉という高松さんの発言です。〈L'Arc~en~Cielみたいになりたい〉じゃなくて(笑)。

高松「恥ずかしいですね、ご本人を前にして(笑)」

yukihiro「僕は土屋さんになりたいと思っていましたから(笑)」

――それで土屋さんはTHE NOVEMBERSの作品をプロデュースしていると。因縁めいたおもしろい関係ですね。

土屋「大事だよね、誰かになりたいって気持ち(笑)」

――ちなみに、土屋さんは誰かになりたいと思ったことは。

土屋「それはもう、デヴィッド・ボウイです(即答)」

――そうでした(笑)。

土屋がプロデュースしたTHE NOVEMBERSの2015年のEP『Elegance』収録曲“きれいな海へ”
 

――ところで、THE NOVEMBERSが2年前にacid androidと共演した時はどうだったんですか。

高松「いろんな出来事があった思い出の日なんですけど――まずその日に、僕はバンドのリーダーになったんですよ(笑)」

――その日から?

高松「はい(笑)。あと、僕らの出番の前にyukihiroさんがDJをやっていて、そのDJの最後にL'Arc~en~Cielの“metropolis”をかけていて」

小林「ヴァージョン違いね」

高松「そう。それでブチ上がりながらステージに向かった記憶が」

小林「その時、ステージ幕の向かい側で僕らは機材のセッティングをしていたんですが、あの曲がかかった瞬間に〈マジか!〉となって(笑)。お客さんも最高潮の盛り上がりを見せていて、この後にライヴするのか俺ら、みたいな(笑)」

高松「あの日は小林君がacid androidでギターを弾いたんですよね。いろいろ濃い1日だったなと」

――じゃあ対バンは今回で2回目と。前回よりは落ち着いてできそうですね。

高松「いや……、そうでもないと思います(笑)」

――今度は、同じバンドでやるわけですからね。

高松「緊張します……」

――いまさらですが、L'Arc~en~Cielのどんなところに魅了されたんですか?

高松「えーと……、〈すべて〉と言いたいです。自分の価値基準を作ってくれたというか。子供ながらに心が震えるような感動をいただいたので。上手く言葉にできないです、ご本人の目の前では(笑)」

――もう、だいぶお話はされたわけでしょう。

高松「いや、まだ……」

小林「同じ部屋にいるだけで緊張してる(笑)」

――でも、リハーサルもやらなきゃいけないし。

小林「同じリズム隊同士だもんね」

高松「がんばろうと思います……(笑)」

※追記
今回のイヴェント限定で、THE NOVEMBERSがL’Arc~en~Ciel“cradle”のカヴァーを披露することが決定

――土屋さんから見て、高松さんはどんなプレイヤーですか。

土屋「素晴らしいですよ。音楽そのものを大切にしているというか、音をものすごく……綺麗な言葉を使うと〈崇高なもの〉として扱っていますよね。自分にできる最高の音を、いつも送り出したいと考えている。そういう誠実なミュージシャンはなかなかいないですよ。高松君は機材にも詳しくて熱心だし、音に対して感覚が鋭い。この年代のベーシストのなかではダントツだと思います。あと、リズムが異常だよね」

高松「(不安そうに)えっ?」

土屋「それに、(高松は)適当なところで妥協するのが許せないんだよね。もうちょっと大人になれば、もう少し丸くなるんだろうと思うけど(笑)。ちゃんとやらないと怒り出しちゃうんですよ」

小林「この間のレコーディングで、僕がトラックを作って高松君がリズム隊としてフレーズを担当する曲があったんです。そこで高松君がドラムに対してああだこうだと注文を付けて、昌巳さんを交えて話をしたんですけど、最終的には昌巳さんが〈僕はいいけど、高松君がなんて言うか……〉って(笑)」

土屋「でも結局、そういう割り切れない話になると、誰かの感性を優先しなきゃいけないわけで。音楽には何が正しいというのはないわけですよ。だから、その曲のリーダーシップを持ってる人が良しと言うまでやるしかない」

――その点で高松さんは、妥協を許さないリーダーであると。

土屋「すごいですよ(笑)! でも言ってることが全部正しいからしょうがないですよね。耳がいいからどこをどうするべきかをわかっていて、それをちゃんと伝えられる。ダメだって言える人はいっぱいいるけど、ちゃんと伝えられる人はなかなかいないんですよ。向こうのプロデューサーでいうと、スティーヴ・ナイ(ジャパン、XTC、土屋昌巳のソロなど)やジョン・パンターロキシー・ミュージックなど)みたいに、ものすごく耳が良くて感覚が鋭い。だから……将来はいいプロデューサーになるんじゃないですか。〈鬼の高松〉と言われるような(笑)」

――楽しみですね。yukihiroさんは土屋さんや一風堂のどこに惹かれたんですか。

yukihiro「まず最初はヴィジュアルですね。カッコイイ!と」

――土屋さんの佇まいやプレイが。

yukihiro「プレイなんて最初はわかってないですよ。中学生の時にTVで観て、〈なんだこれは!〉というインパクトがすごかった。男性でお化粧するって、当時は沢田研二さんとか知っていたけど、もっとすごい人がいた、という感じだったんですよ。別次元というか、感覚が違うというか」

――何か決定的に新しいものを感じたと。

yukihiro「そうですね」

一風堂の82年作『Lunatic Menu』収録曲“すみれ September Love”
 

――その頃は、ロックでそういう新しい美意識をしっかり持った人たちがTVに出ることは珍しかったし、そこに反応できたかどうかでその後の運命が決まった感じですね。

yukihiro「僕は反応しました(笑)」

――土屋昌巳のようになりたいと。

yukihiro「とにかくヴィジュアルにインパクトを受けて、それからちゃんと聴いていくわけじゃないですか。ジャパンに参加されているとか……もちろんその頃から海外で活躍されている日本人のミュージシャンはいたと思うんですけど、僕にとっては土屋さんが最初だった。海外で活動する日本人の音楽家で、ジャパンという格好良いバンドに参加してツアーも一緒に回っている。すごいと」

土屋「運が良かっただけですよ(笑)」

yukihiro「自分も音楽をやるようになって、海外に行きたいと思うきっかけになりました。そういうこともできるんだ、やろうと思えば可能性はあるんだってことを示してくれた。当時はまだ日本よりずっと先を進んでいた海外(のシーン)に飛び込んで音を鳴らしている、すごいと子供心に思いました。自分にもその可能性があるかもしれないと気付かせてくれたんです」

――なるほど。

yukihiro「当時はそこまで考えてはいなかったと思いますけど(笑)。いまの自分だから言葉が出てきますが、その頃はただ漠然と〈カッコイイなあ〉〈すごい人だなあ〉と感動してました」

――実際に土屋さんと会われたのは最近なんですか。

yukihiro「そうです。会えるものだと思っていなかったから(笑)」

土屋「何年か前にBUCK-TICKの年末の武道館公演が終わってから、楽屋で声をかけてくれたのが最初だったよね」

yukihiro「あの時は楽屋打ち上げを別室で待っていたら、横に土屋さんがいらっしゃって。ここで話しかけないともうチャンスがないと思ったんですよ。その後にいつお会いできるかもわからないし。これは話しかけろということだと思って、声をかけました」

――人生最大の勇気を。

yukihiro「振り絞りました(笑)。僕の性格的に、いつもだったら絶対にやってないと思います」

――そうでしょう(笑)。

yukihiro「その時はもう、これは話しかけないとダメだろうと。男が廃る、ぐらいの気持ちでした(笑)」

土屋「そうだったんだ(笑)」

――声をかけて良かったですね。それが今回の共演に繋がっている。

土屋「そういうのってあるよね。小さなことでも繋がっている」

――土屋さんはいろんなミュージシャンからリスペクトを受けていて……。

土屋「いやいや、とんでもないです。yukihiro君もリスペクトされる存在になっているけど、THE NOVEMBERSもそういう対象になってほしいよね。中学生や高校生から、〈うわ、カッコイイ!〉って。僕なんかもまさにそうだった。ビートルズストーンズを観て聴いて、こういうふうになりたい、この人になりたい……それだけですもん。いま実際に音楽している人は、そういう想いが人一倍強かったんだと思う。夢は必ず叶うとは言いたくないけど、想いが深ければ、なんとかなるんじゃないですかね」

――土屋さんはyukihiroさんをどんなふうに見ています?

土屋「カッコイイよね。誤解されると困るんだけど、僕が学生の頃に憧れていたタイプのミュージシャンに似てると思う。ファー・アウト村八分みたいな。

――リアル・ヒッピーのレジェンドですね。

土屋「そうそう。ロック・ミュージシャンのカッコ良さって昔から変わらない気がするんだよね」

 

楽しみしかない1日なので、自分も観客として楽しみ尽くしたい(小林)

――今回のイヴェントはyukihiroさんが当然バンマスとして仕切ることになると思うんですが、全体的にはどんな感じになりそうですか。

yukihiro「僕が(バンマスを)やるんですかね……やっぱそうですよね?」

――いや、私に訊かれても……。

一同「ハハハハハハ(爆笑)」

yukihiro「この間、土屋さんとお話しさせていただいた時も〈僕が仕切ります〉と言ったので……がんばって仕切ってるところです(笑)」

――デペッシュ・モードの素晴らしさを伝えつつ、各人の個性を活かして。

yukihiro「そうですね。トラックだけはちゃんと作っておいて、あとは各自で解釈してもらってやってもらえたらと思っています」

――トラックを作るにあたって心掛けていることは?

yukihiro「(デペッシュは)いまもツアーをしているバンドじゃないですか。だから、古い曲のトラックも現代に合わせて作り変えていると思うんです。なので、今回もなるべく新しい感じのものにしようと。たぶん80年代後期から90年代にかけての曲をやることになると思うんですけど、その当時のデペッシュが出していた音ではなくて、なるべく新しい、最近のデペッシュのトラックに近いものを作りたいですね」

――デペッシュがいまでもトラックを作り替えているのはどうしてですかね。

yukihiro「たぶん、昔の曲といまの曲を同じセットリストでやるにあたって、整合性を取るためには音色の差し替えをしないと難しいんじゃないですかね。acid androidも節目ごとにトラックを作り替えていますから。たぶんデペッシュも同じことをやっているんじゃないかと思います」

――acid androidは先日久々にライヴを拝見したんですが、最近はデペッシュ・モードみたいな感じになってますよね。

yukihiro「ダメですよ、それ言っちゃ(笑)!」

――yukihiroさんと言えばインダストリアルな印象でしたけど、インダストリアルというよりはダークなエレクトロになっていて、デペッシュに近いものを感じました。

yukihiro「自分的には、インダストリアルは十分がんばった、という感じはしています」

――もうやり尽くしたと。

yukihiro「やり尽くしたとまでは言えないですけど、自分のなかでやりたいと思っていたことはやったかなと」

――なるほど。当日は新しい局面に入っているacid androidが聴けそうですね。THE NOVEMBERSはどんな感じになりそうですか。

小林「当日は僕も高松も2ステージなんですけど、THE NOVEMBERSに関してはいつも通り全力で。僕がacid androidでギターを弾かせてもらうのは久しぶりですが、一回り成長して戻ってきた感じを出せたらいいなと思いますね。なんせ楽しみしかない1日なので、演奏するのも観るのも楽しみ尽くしたいというのがいちばんです」

――石野卓球のDJも楽しみですね。

yukihiro「やるなら、きっちり自分のセットをやりたいと言ってくださって。ちゃんとやるならガッチリやらせてほしいと申し出があったので、〈好きなだけお願いします!〉と伝えています(笑)」

―本気のセットで踊れる、これは卓球ファンも観逃せないですね。

yukihiro「ライヴの合間にDJがありますよ、という感じではないです。各バンドのライヴがあって、卓球さんのアクトがあって、それからセッションがある、という感じになると思います」

石野卓球の2016年〈STERNE〉でのDJセット音源
 

――ところで、THE NOVEMBERSは9月21日にリリースされるニュー・アルバム『Hallelujah』が完成したそうですね。

小林「はい、つい最近マスタリングを終えて。すごい傑作が出来ました」

――じゃあ今度のライヴで新曲も聴けそうですね。

小林「それはもう、最近のライヴでは新曲をやることを義務付けているので」

THE NOVEMBERS Hallelujah MAGNIPH/HOSTESS(2016)

9月21日にリリースされるニュー・アルバム『Hallelujah』収録曲“黒い虹”
 

――楽しみですね。今度、土屋さんとyukihiroさんとでCDを作ったらいかがでしょう。

小林「それはヤバイですね(笑)」

――こういう話の流れになったら期待しますよ。ライヴの次はCDを作りましょう!

yukihiro「そ、それは……」

土屋「やりましょう!」

yukihiro「本当ですか! 僕はいつでも大丈夫です! (笑)」

 


acid android in an alcove vol.8 × THE NOVEMBERS PRESENTS 首
日時/会場:2016年8月11日(木・祝) 神奈川・川崎CLUB CITTA
開場/開演:17:00/18:00
出演:acid android/THE NOVEMBERS/石野卓球(DJ)
special session(Depeche Mode Cover): ヴォーカル/KENT(Lillies and Remains)、ギター/土屋昌巳、ベース/高松浩史(THE NOVEMBERS)、キーボード/TOM(PLASTICZOOMS)、ドラムス/yukihiro(acid android)
料金(1D別):前売り/5,000円、当日/5,500円
※学生は前売り4,000円
★詳細はこちら

 

~acid androidからのお知らせ~

acid android live 2016 #4
小林祐介(ギター/THE NOVEMBERS)と山口大吾(ドラムス/People In The Box)がバック・メンバーを務めるワンマン公演が実現!
【名古屋公演】
日時/会場:2016年10月27日(木)  愛知・名古屋CLUB QUATTRO
開場/開演:18:15/19:00
料金(1D別):5,500円
【東京公演】
日時/会場:2016年10月31日(月)、11月1日(火)  東京・恵比寿LIQUIDROOM
開場/開演:18:00/19:00
料金(1D別):5,500円
★詳細はこちら

 

~THE NOVEMBERSからのお知らせ~

GEZAN / LOSTAGE「true blue tour」
8月26日(金) 大阪・心斎橋CONPASS
共演:GEZANLOSTAGE

Re:mix 2016
8月27日(土)愛知・名古屋CLUB DIAMOND HALL/APOLLO BASE & SPADE BOX

THE NOVEMBERS presents 首 vol.13 – Redder Than Red -
9月11日(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
共演:The Birthday

11th Anniversary & 6th Album Release Tour - Hallelujah –
9月30日(金) 大阪・心斎橋JANUS
10月2日(日) 愛知・池下CLUB UPSET
10月4日(火)石川・金沢van van V4
10月6日(木) 新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE
10月13日(木)宮城・仙台enn 2nd
10月23日(日) 栃木・宇都宮HEAVENS ROCK VJ-2

11th Anniversary & 6th Album Release Live 「Hallelujah」
11月11日(金) 東京・新木場STUDIO COAST

★ライヴ詳細はこちら

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