2016年もNegiccoから目が離せない。2月~5月にかけては、mabanuaら擁するNEGiBANDを引き連れての全国ツアー〈Negicco Second Tour “The Music Band of Negicco”〉を行い、その勢いのまま5月24日にサード・アルバム『ティー・フォー・スリー』をリリース。坂本真綾OKAMOTO'Sらが参加した同作は、珠玉のポップ・アルバムとして高い評価を受けている。さらに7月30日には、キャリア最大規模のワンマン・ライヴ〈Negicco 13th Anniversary 『Road of Negiiiiii ~TADAIMA~ 2016 Summer at NHKホール』〉を開催。盛況のうちに終了した同公演の模様を収録したBlu-Ray「Negicco at NHKホール~TADAIMA~2016 Summer」を11月29日にリリースする。

今回は、NHKホールでのワンマンを終えたばかりのNegiccoに、プロインタヴュアーの吉田豪が直撃。彼女たちにとって激動と言うべきこの2年間を振り返る。この前編では、シングル“矛盾、はじめました。”リリース直後に起きた体調不良の連鎖という危機的な状況や、勇気ある告白も挿まれたNHKホールでのワンマン・ライヴにまつわるエピソードなどを語ってもらった。 *Mikiki編集部

Negicco 『Negicco at NHKホール~TADAIMA~2016 Summer』 T-Palette(2016)

2人が具合悪くなったときは、自分が行くしかないという気持ちだけでした(Megu)

――ボクがタワレコのサイトでNegiccoのインタヴューをやったのが2012年と2014年だったので、2年ぶりのインタヴューです。今日はこの2年間を振り返っていただきます!

★2012年のインタヴュー
★2014年のインタヴュー

Nao☆「わかりました! この2年はすごくいろんなことがあったねー」

――ボクがまず思い出すのは、次々と体調不良で倒れちゃったことですけど。

Nao☆「ああ、最近ですよね」

――ぽんちゃ(Megu)が1人で“矛盾、はじめました。”(2016年3月29日)のリリース・イヴェントをやって。ああいうときって倒れる側もしんどいと思うんですよ。身体的にもしんどいし、迷惑かけちゃって精神的にもしんどいし。

Nao☆「かなりしんどいです……。感じたことのないヤバさを感じて」

KaedeNao☆ちゃん、 サンスト(サンストリート亀/2016年3月30日)ではがんばってステージに立ってくれたんですけど、ライヴが終わったあとぐったりしてて、これはマズイと思った」

Megu「サンストの日の朝、Nao☆ちゃんが急に泣き顔で私の部屋に来たんですよ。〈具合が悪い……〉と言って、ホントにしんどそうだったし、熱もあった。1回病院に行ったんだよね」

Nao☆「朝に行った」

Megu「そのときはただの風邪って言われたんだよね。サンストのときもすごくぐったりしてたし、無理はさせたくなかったけど、本人はやると言ってくれて。でも、終わった瞬間に倒れちゃってね……」

Nao☆「結局、救急で診てもらって」

Megu「しんどそうだった」

――で、次の日のインストア(タワーレコード新宿店/2016年3月31日)は2人でやることになって。

Megu「リリース・イヴェントとツアーがあったので、2人でどう乗り切ろう、2人でできる曲はなんだろうとすごい考えて。落ちサビやメインの箇所はNao☆ちゃんのパートが多いので、なるべく2人でやれることを決めて用意してました」

――そしたら……。

Megu「そしたら次の日、かえぽ(Kaede)から具合が悪いという連絡が入りまして(笑)」

――そのタイミングだと言い出しづらいですよね?

Kaede「言い出しづらいし、すでに1人欠けているのでこれ以上は絶対に……と思ったし」

Megu「でも、がんばってたよ」

Kaede「インストアは一緒に出たんですけど、全然声が出てなくて。握手会でも〈(ウィスパー・ヴォイス)でありがとうございます……〉と囁くような感じでした。帰りのタクシーでスタッフさんに〈昨日のNao☆さんと同じ症状だと思います〉と言われて。ずっと寒気が止まらないし、これはヤバイかもしれないと思ってたんですけど。そしたら次の日に倒れてしまい。ツアーのこともあったので、ぽんちゃが2人で何をするかを一生懸命練ってくれていたから、やりたかったなという気持ちもありつつ、結局1人にさせてしまった……。苦しみながら〈ぽんちゃがんばれ!〉って布団でぐったりしながら気持ちだけ送っていました」

――結局、ツアーの山梨公演が中止になり、ぽんちゃが1人でリリイベ(オリナス錦糸町/2016年4月1日、イオンモール幕張副都心&タワーレコード渋谷店/同年 4月3日)をやることになった心境は?

Megu「“矛盾、はじめました。”が出る前から、トップ10に入りたいという気持ちはみんな共通で持っていたし、(それを目標に)ずっとがんばってきた。2人が具合悪くなっちゃったから、自分が行くしかないという気持ちだけでしたね。そこでトップ10に入らなかったら2人に申し訳ないし、2人も自分たちのことを責めちゃうような気がして。だから、1人でできることをがんばろうという気持ちでした」

――あのときはファンも団結する感じがありましたよね。

Megu「いてもたってもいられなくなって、県外からもいろんなファンの方が予定を変更して来てくれたり、2人の推しの人も〈2人もがんばっているから、ぽんちゃを応援しに行く〉と県外から駆けつけてくれたり。みんなが一丸となってNegiccoを支えようという感じになって、改めて〈チームNegicco〉の底力を感じました」

『ティー・フォー・スリー』収録曲“矛盾、はじめました。”
 

――最近だと6月中旬にNao☆さんが入院というのもありましたけど。

Nao☆「あれは28年生きていていちばんつらかったです……」

――そんなに!

Nao☆「丸一日の仕事が2日間続いていたんですけど、その前から5日間、38度の熱と喉の痛みでつばが飲み込めないし、ご飯がほとんど食べられなくて。栄養が摂れてないから薬も全然効かなかったし……。迷惑かけてしまいました」

――で、仕事が終わった瞬間に限界がきて。

Nao☆「〈ご飯も食べれないのはヤバイんで、いますぐ入院しなさい〉と言われたんですけど、東京で入院しても親は来られないし、新潟に帰ってから入院したんです。でも入院先が相部屋で、夜はクーラーが全然効かなくて。入院してた3日間はほとんど寝てないんですよ」

――暑くて。

Nao☆「暑くて。逆にノイローゼになるかと思うぐらいで。最初は点滴を打って良い感じになってきたんですけど、夜寝られない状況が続いていたから、逆に悪くなってきちゃって」

Megu「病院なのに悪化した(笑)」

Nao☆「これは早く退院したほうが良いなと思って。病院内で、Negiccoがいるというのが知れ渡ってしまったのに、スッピンだし髪ボサボサだしお風呂も入れないしで、大変なことになってました。ちょっと男の人が来たら〈さっき男の人が来てましたけど、どういう関係なんですか?〉とか訊かれたり」

――熱愛疑惑が(笑)。

Nao☆「男の人なんて熊さん(熊倉維仁/マネージャー)しか来てないし、〈私の関係者じゃないですよ!〉と言ったんですけど。あと、すごくグッタリして弱ってるのに〈サインもらっていいですか?〉と人が入ってきたり。嬉しいんですがタイミングが……。すごく親切にしてもらったけど」

Megu「全然休めなかったね」

Nao☆「やっぱり入院はしたくないですね。家に帰ったとき、マジでパラダイスかと思いました。この私が3日間ぐらいクーラーつけないで過ごしたんですよ?」

――〈この私〉という基準がわかんないですけどね(笑)。

Nao☆「すごい暑がりで、すぐクーラーをつけちゃうんですよ」

Megu「冬でもクーラーつけるんですよ」

Nao☆「だから死ぬかと思いました。かえぽママがお見舞いに来てくれたんです。かえぽと一緒に選んだ、疲れた身体を癒すというCDを持ってきてくれて、それを聴いてました」

 

私、やってていいのかなと、この1年間は苦しんでました(Kaede)

――体調不良以外はこの2年間、順調だった感じですかね?

Kaede「個人的には野音(2015年8月16日の東京・日比谷野外大音楽堂)以降、自分の納得いくライヴが全然できなかったんです。野音がピークなのかなと思ってしまって……」

Nao☆「〈野音がピーク〉と言ってたよね」

Kaede「自分のなかで、野音でもう終わりなんじゃないか、あれ以上のことはできないんじゃないかと自信をなくしていた。野音で〈武道館に立ちます〉と言ったけど、自分は付いて行けてないし、2人の足を引っ張っているとずっと思っていて。ツアーも心残りがある感じになっちゃったし、この1年間はすごく苦しんでました。私、やってていいのかな、辞めなきゃいけないかなって」

2015年のDVD「日比谷野外大音楽堂 Road of Negiiiiiii 〜Negicco One Man Show〜 2015 Summer」ティーザー映像
 

――つまり、そんな精神的に危ういときにBELLRING少女ハートを脱退した直後のもえち(宇佐美萌)との対談(CDJournal 2016年4月号に掲載)をボクが組んじゃったんですか!

Kaede「はい。そのときの対談でも〈私はいないほうがいい〉とか言ったんですけど……」

――でも、あの対談を組んで良かったと思ったのが、もえちが〈アイドルを辞めたら良いことない〉みたいな話をずっとしてたことですよ。〈やることなくなってホントにつらい〉という。

Kaede「〈引きこもってるし彼氏できないし〉って(笑)」

 

――もえちが〈運動もしなくなるし人とも喋らなくなるからアイドルは辞めないほうが良い〉とボヤきまくってくれたおかげで、かえぽがNegiccoを続けようと思えたのなら良かったです!

Kaede「〈あんな幸せな職業はない〉と言っていて、確かににそうだなって。こんなに愛してくれる人たちがいっぱいいる状況ってないなと思うし。もえちに〈だから辞めちゃダメ〉と止められて(笑)」

Nao☆「感動するね。泣けてくる……」

――前回の取材が“光のシュプール”(2014年12月2日)リリース直前で、この2年でシングルがオリコン10位以内に入るようになったわけですけど、何か変わりました?

Nao☆「メディアに出られることが増えました」

2015年作『Rice&Snow』収録曲“光のシュプール”。Negiccoにとって初のオリコン10位以内をマークした
 

――「ダウンタウンDX」(2015年10月22日放送)はボクも緊張しながら観ましたよ。

Nao☆「あのときは緊張しました。だけどスタッフさんはもちろん、松ちゃんと浜ちゃんも出演者の皆さんもすごく優しくて。テレビから受ける印象と全然違うなと思った」

――怖くなかった。

Nao☆「全然怖くなかったです」

――以前、「いらこん」(2014年5月17日放送)でバカリズムさんにツッコまれたときは本気で怯えていましたけど、だんだん克服できているんですかね?

Nao☆「『ダウンタウンDX』のスタッフさんは打ち合わせのときから優しくて、〈Negiccoは無理して何かやろうとしなくていいから〉〈ちゃんと映すし、出ないっていうこともないようにします〉〈浜ちゃんと松ちゃんに任せてれば大丈夫だから、がんばらなくていいよ〉と言ってくださって」

――すごいですね、そのアドヴァイス!

Nao☆「それで安心して出られたし、楽しくてあっという間に終わっちゃって。あと、セットの裏に松ちゃんと浜ちゃんが普通にいたり、小藪(一豊)さんがいて喋ったりしたんですけど、小藪さんもすごく優しくて」

Kaede「すごい世界だったよね」

Megu「収録中は隣の方のことをずっとディスるじゃないけど、ツッコんでいたんですけど、カットがかかると〈すみませんでした〉みたいな感じで謝られていて」

Nao☆「小藪さん、『逃走中』に出ていたときはすごく悪い感じだったんですよね。〈俺は助けには行かない〉みたいな。それで〈なんだよ!〉〈なんでこの人こんなにTVに出るんだろう〉と思ってたんですよ」

――それぐらいに思ってたんですか(笑)。〈こんな性格が悪い人なのに!〉って。

Nao☆「でも、裏側で観ると、すごく良い人ですよね。だから、いろんなところに呼んでもらえるんだなと思いました」

Megu「あと、TVに出ても何も喋れないまま終わっちゃうことが多かったんですけど、ダウンタウンさんは結構話しかけてくれて。小藪さんも振ってくれたり、陣内孝則さんが〈ネギネギ〉と言ってくれたり、おいしくイジっていただいて」

Nao☆指原(莉乃)さんも、松ちゃんがNegiccoのことをおもしろく言ってくれたときに、フォローしてくださって」

Megu「松ちゃんが〈Negiccoっていうネギを持ってるワケのわからないアイドル〉みたいなことを言ったとき、指原さんが〈13年やってるんですよ!〉と言ってくれたんですよ。

――あと、この2年間で大きいのはCM出演(2015年12月1日〜)ですよね。

Megu「サトウ食品さん!」

Nao☆「それまで全然テレビに出られなかったのに、部屋を片付けてるときに自分のCMが普通に流れてきて」

――CM効果は絶対デカイですよね。〈お餅の人〉という認識が世間に広まって。

Kaede「東京でも買い物していて、〈ご飯のCMやってませんか?〉と言われたり、気付かれることが増えました」