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BARBにはエロさがある

――ではBARBの話に移りたいんですが、門田さんがソロ・プロジェクトをやりたいと思うようになったのはいつ頃だったんですか。

門田「実際は、PE’Zが解散することが決まってから本腰入れるようになったところはあるんですが、解散の話が出る前から(PE’Zだけでなく)自分一人でもやっていかなきゃという想いが高まっていたんです。バンドを結成してからの16年間、一人のプレイヤーとしてPE’Z以外のセッションをほとんどしてこなかったし、若い世代から刺激を受ける場所に身を置かないとミュージシャンとして終わるなという感覚があって」

――ものすごく切実な感覚ですね。

門田「そうですね。そんな時期にPE’Z主催のイヴェントでYasei Collectiveに出てもらうことになって、それにあたって彼らがニーボディと共演したときの映像を観たんです。これは間違いないと思って、将来的に何か一緒にやりたいなと漠然と思っていたんですよね。そのときはPE’Zが解散することになるとは思っていなかったんだけど」

ニーボディとYasei Collectiveの2013年に行われた共演ライヴの模様
 

――BARBを結成するにあたって、門田さんのなかでは具体的な音のイメージはあったんですか。

門田「音の手触りとしてはエレクトリックな方向に振りたいなというのはあって、だったらヤセイの2人が適任だろうと。その2人が決まっていて、キーボードをどうしよう?となったときに、ヤセイの2人が(宮川)純くんを紹介してくれたんです」

BARB
(左から)宮川純、門田“JAW”晃介、中西道彦、松下マサナオ
 

――4人で最初にやったライヴはいつだったんですか。

門田「去年の11月に、渋谷の東京354CLUBでやったのが最初ですね。解散ライヴの1か月前だったので、お客さんのなかにはちょっと戸惑っていた方もいたと思うんですけど」

――BARBの始まりとPE’Zの終わりがちょうど同じタイミングだったわけですね。

門田「そうですね。そこは計算していたわけじゃないんですけど、流れに身を任せている間にそうなっちゃって」

――類家さんはBARBのライヴをご覧になってるんですよね。いかがでした?

類家「そうですねえ……(笑)」

門田「大丈夫、存分にDISってください(笑)」

類家「いやいや(笑)。エロさがありますよね、BARBには。自分の好きなアーティストで言えばマイルスもそうだし、最近だとクリスチャン・スコットなんかもそうですけど、どう見てもみんなエロいじゃないですか(笑)」

クリスチャン・スコットの2015年のライヴ映像
 

――どう見ても、ですか(笑)。

類家「しかもBARBのリズム・セクションはどう考えてもおかしいので、そのバランスが物凄いなと思いました」

門田「エロ担当が俺ってことですか」

類家「そうそう、エロ担当(笑)」

門田「僕からしてみると、類家心平もかなりエロ担当のトランペッターなんですけど(笑)」

類家「ハハハ(笑)。でも、音楽においてセクシーな要素って重要なものだと思っていて、その要素を出せるというのは〈才能〉だと思う。練習して出せるようになるものでもないんで(笑)」

――そうですよね(笑)。

類家「そんなJAWさんがYasei Collectiveのリズム隊を選んだというのは、とても理に適っていると思うんですよ。そこでゴリゴリのR&Bをやるリズム隊を持ってきちゃうと、音楽としての新鮮さが失われてしまうわけで。しかも鍵盤は宮川純くん。彼もとても守備範囲の広い人なので、このメンバーじゃないと出せない音をやっていますよね、やっぱり」

Yasei Collectiveの2016年作『Light』収録曲“Lindner”のライヴ映像
 

門田「全体のバランスは最初から狙っていたところではあるんですよ。僕の書く曲は基本的にちょっと甘めのものが多いので、R&Bやソウル的なリズム隊がそのままやっちゃうとトゥーマッチなものになってしまうだろうし、だったらおもしろいことをやってくれる人たちがいいなと思って」

――アルバムを聴く限り、暴れる役割を他の3人に任せて、門田さんはドーンと構えてるようなバランスになっていますよね。ご自身は暴れに行かないというか。

門田「それがリーダーっぽくていいじゃないですか(笑)」

宮川純の2015年作『The Way』収録曲“ The Water Is Wide”
 

――アルバム収録曲だと“Sweet Scent”や“Over, Come-On”は7分を超えるゆったりとした長尺曲ですけど、他の3人が暴れたり、リズムにアクセントを付けたりするので、派手な構成がない曲でもBARBらしさがしっかり出てきますよね。

門田「その2曲は、平たくやってしまうとベタな感じになりそうだったので、サンプラーを入れたりしてちょっと変わったアレンジにしたんですよね。ヤセイの2人がそのへんのアイデアを無尽蔵に持っているし、彼らは絶対に普通にはやりたがらない(笑)。〈そのままだと普通なんで、こういうのはどうですか?〉とアイデアを出してくるんです」

類家「彼らはやっぱりすごいですよ。常に新しいことをやろうとしてるし、自分たちのイメージを持って演奏してる人たちなので。ジャズにせよ、R&Bやヒップホップにせよ、ドラムとベースってジャンルを決定付ける重要な要素になってきてると思うんですよ、これまで以上に。ヤセイのリズム隊はその意味でも最先端の2人だと思いますね」

――“Blue”には門田さんの持っているキャッチーなメロディー・センスがはっきり出ていますよね。このあたりの曲は、それこそPE’Zのファンだった方も楽しめるんじゃないかと。

門田「PE’Zの活動ではやはりメロディーラインを大事にしてきたので、“Blue”はその点を意識して作ったところはありますね。今回のアルバムはPE’Zが解散してから最初の一歩なので、コンセプトとしては、これまでPE’Zでやってきたもののなかで何が良い部分だったのか、そして今後自分はどういうことをやっていきたいのか、その両方を混ぜてみたかったんです。これから音楽をやっていくうえで、PE’Zというバンド名は僕の音楽を聴いてくれる人の脳裏から消えることはないと思うし、一生付き合っていかないといけない名前だと思うんですね。だからこそ、PE’Zでやってきたことをポジティヴに消化したいという気持ちが強くて」

――とりあえずこうしてアルバムが完成したわけですが、そうなると次はライヴですね。

門田「そうですね。(アルバム収録曲を)どうやってライヴでやるかを考えなきゃいけないけど」

類家「(BARBも)対バンをたくさんやったらいいと思うんだよね。僕も今年アルバム(『UNDA』)を出したけど、それ以降はいろんなバンドと対バンするようにしていて。そのほうが、お客さんも違うものを聴けるからいいと思うんですよ」

★類家心平『UNDA』のインタヴューはこちら

類家心平『UNDA』収録曲“DANU”
 

――機会があれば、BARBと類家さんのバンド(RS5pb)の対バンも観てみたいですね。それこそ2人の共演音源も聴いてみたいです。

類家「この間、RUIKE × JAW SESSIONという名義で渋谷のUNDER DEER LOUNGEでライヴをやったんですよ。あれはおもしろかったですね」

門田「うん、おもしろかったですね。そのときの演奏がすごく良かったから、いつか何か一緒にやりたいね、という話もしたんです」

類家「僕のオリジナル曲をJAWさんが一人で演奏して、多重録音した音源をくれたんですよ。それが物凄く嬉しくて……この人は〈人たらし〉だなあと思いました(笑)」

門田「人たらしって(笑)。それぐらい好きな曲なんですよ!」

――わはは!

門田「とはいえ自分の立ち位置をちゃんと作らないと、他のミュージシャンとアンサンブルをやってもおもしろくないし、〈俺、サックスやってるんでバンドに入れてください〉とどこかに入るのも違うと思ってたんですね。だから、まずは自分のバンドをちゃんと作って立ち位置をはっきりさせないことには、類家くんとも一緒にできないと思っていて。だから……一緒にやりましょう」

類家「うん、やりましょう!」