INTERVIEW

Nujabesの右腕務めたUyama Hirotoが橋本徹と語る、〈freeform〉に託した想い―予定調和をなくして日本人らしい情感込めた新作

Uyama Hiroto 『freeform jazz』

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2016.11.01
(左から)橋本徹、Uyama Hiroto
 

Nujabesをサポートし続け、自身の作品でも美しく叙情的な世界を紡いできたマルチ・プレイヤー、Uyama Hiroto。そのサウンドは前作『freedom of the son』(2014年)の時点でかなり多様な広がりを見せてはいたのだが、それでもひと括りに〈ジャジー・ヒップホップ〉として受け止められてしまう傾向はあったように思う。しかし、それから2年を経て届けられたニュー・アルバム『freeform jazz』は、そうした旧来のカテゴライズを明確に拒否する、タイトル通りのフリー・フォームな作品だ。Uyamaらしい美しいアンサンブルが紡がれながら、ここにはフリーキーに躍るビートや実験的なアイデア、じっくり聴き手をハメていくドープな展開が詰まっている。今回はそのUyama氏に加え、かねてから交流の深い編集者・選曲家の橋本徹(SUBURBIA)氏を迎え、冒険心溢れる『freeform jazz』について大いに語ってもらった。

Uyama Hiroto freeform jazz roph(2016)

 

海に近い場所に住む人ならではの音楽

――まずは、お二人の交流が始まったきっかけから伺いたいです。

橋本徹「初めて顔を合わせたのは、Nujabesの家のテラスでバーベキューをやった時が最初かな。あれは2008年くらい?」

Uyama Hiroto「そうですね、ちょうど僕がファースト・アルバム(2008年作『a son of the sun』)を出した頃だと思います」

橋本「そうだよね。その時にUyamaくんやharuka nakamuraとか、今回の作品にも参加しているSegawa(DJ Segawa Tatsuya)くんあたりも来ていて。僕とNujabesが飲みすぎてソファーでくつろいでいたら、Uyamaくんとnakamuraくんのセッションが始まって、それに感動しちゃってね。もちろんそれまでもUyamaくんのソロ作は素晴らしいなと思って聴いていたし、それ以前からNujabesの右腕として活躍していることも知っていたんだけど、その時のセッションで、Nujabes作品の情感やウワモノの感じはUyamaくんに依るところが大きいんだなって、改めてわかったんです。NujabesもUyamaくんをすごく信頼していましたし」

Nujabesの2005年作『Modal Soul』収録曲“Modal Soul”
 

Uyama「その時は、橋本さんがバーベキューに来るよって言われたから、〈えっ!〉て驚いちゃって。ビートを作りはじめた18歳くらいの頃、周りはDJでヒップホップをかけていたんですけど、自分はネタものを中心にかけていて。音楽を知るうえで、橋本さんが手掛けていた〈Free Soul〉のコンピから学ぶことがすごく大きかったんですよ。橋本さんは先生みたいな存在といいますか」

橋本「94~95年に〈FREE SOUL UNDERGROUND〉というパーティーを渋谷のDJ Bar Inkstickでやっていた時、Nujabesもほぼ毎月通ってくれていてね。UyamaくんにしてもNujabesにしても、音楽に求める情緒が近いのかなと思いますけど」

Uyama「それはもう、橋本さんが紹介されていたものをチェックして、レコード買いに行って勉強した結果ですね(笑)」

橋本「いやいや、いまは僕がUyamaくんが〈ヤバイですよね〉っていうものをチェックしてますから。特にパット・メセニー&ライル・メイズ的なものとか、ミナスの音楽、スピリチュアル・ジャズと呼ばれる音楽に求めている感覚が近いんじゃないかな」

――橋本さんが今春コンパイルした『Good Mellows For Sunrise Dreaming』にはUyamaさんの楽曲が収録されています。

橋本「この1年ほどでいちばん好きな曲と言っても過言ではない“End Of The Road”を入れたくて、まだ本人のアルバムにも入っていない曲なので申し訳ないかなとも思ったんだけど、快諾してもらったんです。リリース記念のイヴェントにもライヴで出演してもらいましたね」

Uyama「〈Free Soul〉シリーズを聴いていた20年前の自分からすると、まさか橋本さんのコンピレーションに(自分の楽曲が)入るとは思ってもいませんから。これはもう光栄なことで」

――〈Good Mellows〉のコンピ・シリーズはバレアリックなチルアウト・ミュージック寄りの選曲で、その文脈でUyamaさんの音楽を紹介しているのがおもしろいなと感じました。

橋本「〈Good Mellows〉はハウス・ミュージック以降の感覚を踏まえたメロウ・チルアウトがコンセプトなんだけど、ジャジー・ヒップホップの流れともクロスするものがあるんですよ。Uyamaくんの“Homeward Journey”にブロークン・ハウスっぽいリミックスがあるけど、あの曲は〈Good Mellows〉のDJセットに入ってくるし、海辺でDJをやる時にもすごく映える。実際にUyamaくんは横須賀を拠点にしていて、一緒にレーベルを運営している小泉(巧)くんは逗子にいて、そしてNujabesの家は鎌倉にあって――そういう海に近いところの人たちの音楽との接し方は、ある種の週末気分があってすごく素敵だなと思うし、〈Good Mellows〉シリーズの感覚と合致するんです。そういう意味でもコンピを締め括るに相応しい作品だと思って、Uyamaくんの曲をエンディングに入れさせてもらったんですよ」

Uyama「ヒップホップでもLAとNYとでは全然違うように、住む場所で作る音が変わってくるよねって話はNujabesともしていました。やっぱり、僕の音はどこか海っぽかったり夕陽っぽかったりするのかなと」

橋本「特に湘南あたりは海のほうに陽が沈んでいくでしょう。あの夕陽が大きいんじゃないかな。haruka nakamura“Lamp”のPVのような、陽が沈むか沈まないかの時間の感覚。そういう時間帯に海辺を歩いていたら、Uyamaくんたちがレコーディングの休憩で出てきたところにたまたま出くわしたこともあった(笑)」

haruka nakamuraの2013年作『MELODICA』収録曲“Lamp”
 

Uyama「ハハハ(笑)、ありましたね。東京に住んでいれば便利だろうと思うこともありますけど、結局いまに至るまでこっち(横須賀)で暮らして音を作っていますね」

橋本「渋谷なんかに住んでいると、どうしても人や物や情報に溺れてしまうところがあるでしょう。そういう意味で、クリエイティヴの環境としてもすごくいいんじゃないのかな。僕は東京にいて距離的には離れているけど、UyamaくんとDJやライヴで共演したりする機会はちょくちょくあって、そういうやり取りがずっと続いている。良い距離感なのかもしれないね。半年に1回くらいは会って、そこでUyama Hirotoはいまこういう方向に進んでるんだなってことがわかる」

Uyama「ミュージシャン同士で会っても、いま作っているものについて詳しく話したりはしないんですけど、橋本さんにはストレートに、具体的に話せちゃうんですよね」

Nujabesの2003年作『Metaphorical Music』収録曲“Letter From Yokosuka”

 

予定調和を外したかった

――ではUyamaさんの新作『freeform jazz』の方向性は、橋本さんは以前から感じ取っていましたか?

橋本「ここ2回くらいのSegawaくんとやっているライヴを観て、ディープで本来的な意味でのスピリチュアルなジャズを志向しているんだろうなと感じていましたからね。即興的な部分も含めて」

――『freeform jazz』は、まさにいま橋本さんがおっしゃったような新しいモードが窺える作品ですよね。過去2作とは大きく変化を遂げたんじゃないかと。

Uyama「そうですね。前作にあたるセカンド『freedom of the son』はファーストの続編という位置付けで、ずっと前から描いていたイメージを形にしたものだったし、それまでのリスナーが聴きやすいようにと考えて作っていたところもあるんです。その後に、Nujabesの遺作『spiritual state』(2011年)を、作品の素材を集めながら主体的に関わって完成させたんですね。そこで、これまでの路線は一区切りで、より自分らしいことをしたいなって思うようになったんです」

Uyama Hirotoの2014年作『freedom of the son』収録曲“Waltz For Life ~Song For Children~”
 
Nujabesの2011年作『spiritual state』収録曲“spiritual state”
 

橋本「1週間ほど前に新作の音源をいただいんだけど、毎日、朝起きた時と夜眠る前に聴いていて、より心の深いところで感じる音楽だなと。これだけ繰り返し聴く音楽はなかなかない。これまでは、いわゆるジャジー・ヒップホップ~メロウ・ビーツのフォーマットに則した音楽を求められていたと思うし、そのフォーマットのなかでUyamaくんらしい表現をしていたと思うんだけど、今回はもっと根本のところで創作していると感じましたね。心のうねりを感じるというか、内面をえぐるようなサウンドというか。それが僕のリスナーとしての気持ちにもフィットしたのかなと」

Uyama「予定調和を外したかったという気持ちがいちばんデカかったですね。これまでは構築的で、頭の中で描いた青写真をどう具体化していくかという作り方だったんです。サンプリング・ミュージックだと、どうしてもそういう作り方になるというのもありますし。今回はほとんどサンプリングを使っていなくて、ビートはほとんど手打ちで補正もしていない」

橋本「それもあって、すごくエモーショナルだよね」

Uyama「ワンテイクで録っちゃったものも結構多いんです。一筆書きの書道みたいな音楽というか。そうやって、自分の内にあるものをストレートに反映させたらどんなものが出来るのかをやってみました」

橋本「だから作り方は大きく変わったんだろうけど、アルバムとしてガラリと変わったという印象は、僕はあまり受けなかったんだよね。相変わらずUyamaくんらしいなと。それは曲順が巧みに構成されているからかもしれないけど。感情のままに生み出した楽曲をアルバムとしてまとめる時に、これまで培ってきた経験が反映されたんじゃないかな」

――これまでの作品に通じるモーダルで美しいアンサンブルが、特に前半は前に出ているように感じられます。だから自然に入っていけるんですが、徐々にドープな展開を見せていく。沼にハマっていくような感じといいますか。

橋本「その感じが気持ち良いんだよね。やっぱり僕らはアルバムを聴いて育っているから、自然と構成を考えちゃうじゃない。自分がコンピレーションを作る時も考えるし」

Uyama「確かに全体の流れはかなり考えました。それから、今回は曲間を詰めて、間を置かずに次へ繋がっていく構成にしているのも大きいかなと」

次ページ日本人ならではの情感、鼓動感、躍動感
関連アーティスト
Hostess Club Weekender 2017