INTERVIEW

ミシェル・ダルベルト『フォーレ:ピアノ作品集』 内省的で静かな情熱を秘めた作風を表現、熟成したワインのようなピアニズム

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  • 2017.05.18
(C)Caroline Doutre

熟成したワインのような馨しいフォーレ

 モーツァルト、シューベルトからフランス作品まで、洒脱でウイットとエスプリに富む音楽性と表現で聴き手の心を魅了するミシェル・ダルベルトが、フォーレの作品集を録音。恩師のヴラド・ペルルミュテールから伝授された、フォーレの内省的で思索的で静かなる情熱を秘めた作風を繊細に表現している。

MICHEL DALBERTO フォーレ:ピアノ作品集 Aparte(2017)

 「ペルルミュテール先生は、フォーレの最晩年に演奏を聴いてもらった経験があるのです。楽譜のこまかな指示に関しても直に助言をもらっている。それを私たちが引き継いでいるわけです」

 ダルベルトは、若いころはフォーレのソロ作品はあまり好まず、室内楽を積極的に演奏していた。

 「35歳までソロ作品は弾かなかったんですよ。ヴァイオリン・ソナタや歌曲の伴奏などをしていました。それが徐々にソロ作品へと目を向けるようになり、いまでは録音までこぎつけ、リサイタルでも演奏するようになりました。フォーレは自由を重んじ、抒情的で、渋く内面的な志向性が特徴です。ペルルミュテール先生は、楽譜を厳密に読むことを熱心に説いていました。その教えがいまの私のモットーとなっています」

 ダルベルトは今春の来日公演でも滋味豊かで詩的なフォーレを披露し、その演奏は熟成したワインのような豊潤な薫りを放っていた。

 「長年ピアノを弾き、いまは弾き振りなども行っていますが、今後はより教育に力を入れたい。若いピアニストは、言語の大切さを理解するべきですね。日本語は強いアクセントを必要とせず、抑制された平坦な発音が多いですが、ヨーロッパの音楽を学ぶ場合はイタリア語を勉強するべきだと思います。フランス作品もそうですが、ラテン的な感性が磨かれると表現が変ってきますから。フォーレの場合も、静かな表現のなかに深い情感が息づいています。それを理解するには、言語を学ぶといいと思いますよ」

 ダルベルトは、フォーレの前にドビュッシーのピアノ作品集も録音しているが、今後はフランクとラヴェルを予定しているという。

 「60歳を超えましたから、自分の好きな分野を極めたい。しばらくはフランス作品とじっくり対峙します。それ以外ではブラームス。これは私の夢であり、いまもっとも心がときめいている作曲家。そしてシューマンも比重が高い。アルフレッド・コルトーのように、自分の好きな作品をだれのまねでもなく、個性的で人々の印象に残る演奏をしたいと願っています」

 まさにダルベルトの音楽は、聴き手の心の奥深く浸透してくる味わい深きピアニズム。このフォーレも伝統と革新が共存した新たな世界を生み出している。

 


LIVE INFO

ミシェル・ダルベルト ピアノ・リサイタル
〇8/1(火)19:00開演 会場:青葉区民文化センター フィリアホール
〇8/6(日)15:00開演 会場:浦添市てだこホール 大ホール(沖縄)

名古屋フィルハーモニー交響楽団
〇8/4(金)18:45開演 会場:日本特殊陶業市民会館フォレストホール

www.pacific-concert.co.jp

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