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メジャーでの振る舞い

――(笑)。では、その“オーケストラ”も候補にありつつ、なぜ“DEADMAN”がメジャー・デビュー曲になったんでしょう?

松隈「メジャー・デビューの候補には全部で3~4曲を出したのかな? もうアルバムが出るのも決まってたので、そのぶんも含めて。で、“DEADMAN”は、メジャー・デビューだからいきなり始まりたいなと思って。イントロなしにして、曲短かったら良いなと思って作ってたんです。でもまあ、こりゃ絶対ボツだなと思ってたら、俺と淳之介が〈“DEADMAN”良いんじゃない?〉って言ったら周りが汲んでくれて、逆に不安になったけどね(笑)」

渡辺「“オーケストラ”が良いっていう意見もあったんですけど、avexさんも行けるなら行ったほうがいいっていう意見になって」

松隈「自分のバンド(Buzz 72+)も昔avexさんからメジャー・デビューしたんですけど、その経験もあって、いきなり良い曲を最初にやっても聴いてもらえないんじゃないかっていう思いが個人的には強くて。BiSHは長期的に見てもらえるっていう話だったので、素直に良い曲はアルバムに取っておいて、最初はビックリさせたいなって凄く思ってましたね。アイナ(・ジ・エンド)がいきなり歌い出すっていう攻撃的な、普通に女性ヴォーカルの曲としてもなかなかないタイプなんで、僕はもうちょっと世の中ひっくり返るかなって。椎名林檎が出てきた時ぐらいになるかなと思ったんだけど……まあ、すべりましたかね(笑)」

渡辺「すべってはないっすよ」

――99秒っていう話題もありましたからね。その後に控えていた曲も考えると、良い前フリになったでしょうし。

松隈「壮大な前フリやったね(笑)」

渡辺「そう、それで別にライヴの動員が減ったわけでもなかったし。凄く良い〈咬ませ犬〉みたいな歌になったな、って」

松隈「そういう歌も大事なんですよ。うちらはずっと同じチームでやってるから、何か戦略ある感じになるよね」

――お二人が昔のインタヴューで、前のBiSが“PPCC”(2012年)でメジャー・デビューする時に〈メジャーを意識しすぎた〉って仰っていて、その時の反動もあったのかな?って。

松隈「ああ、僕はあったかもしれないですね。“PPCC”に関しては、インディー時代からBiSを追ってた人は、あのBiSが〈ぺろぺろちゅっちゅ~〉って可愛い曲をやるのはおもしろかったと思うんですよ。でも、メジャーに出ていくと可愛いことを歌うアイドルってたぶん普通なので、逆にわかりづらかったのかなって。せっかく大きい世界で広めてもらえるタイミングだったのに」

渡辺「難しいっすよね。“PPCC”自体は全然失敗じゃないですよ。ですけど、僕の認識では〈これで良いのかな?〉って思いながら出ちゃった部分があって。っていうか、当時は時間がなくて……まあ、いまだから言えるんですけど(笑)」

松隈「そうそう、前のBiSはホント時間がなかった。それでBiSHは、特にメジャーになる時からは、余裕を持ってやりましょうって。だから最初に4曲くらい出せたんよ。昔はだいたい候補も1曲だったもん。〈これでよろしく〉〈OKです〉みたいな(笑)」

渡辺「BiSの失敗を踏まえて……こういう話すると、プー・ルイがめちゃめちゃ怒るんですけど(笑)」

松隈「怒るよね(笑)。まあ、余裕というか、考えて選んだりできるように」

渡辺「そうなんです。大事にやらせてもらっていて。ホントにBiSの時は、“primal.”の歌詞じゃないですけど、来年のことより今を生きてたのが、最近はやっと3か月くらい先は見られるように(笑)」

松隈「そうね、そういう意味じゃ、あんまり先までは見えとらんね(笑)」

渡辺「まだまだ全然ですね(笑)」