巨大な敵はどこにいる? またも鋭利なキラー・チューンの束を携えた6人はいよいよ約束の場所へと辿り着く。今回は〈生みの親〉たちにたっぷり語ってもらったよ!

 始動から2年強……とは思えないほど、その軌跡は濃厚! 〈楽器を持たないパンクバンド〉を謳ってのメジャー・デビューからまだ1年しか経っていないものの、3月のシングル“プロミスザスター”のヒットも手伝って、すでに堂々たる風格を身に纏ったBiSHの人気は際限なく拡大するばかりです。そして、7月22日に幕張メッセイベントホールでの〈BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED FiNAL "REVOLUTiONS"〉という過去最大のワンマンを控える彼女たちから、今度は充実のミニ・アルバム『GiANT KiLLERS』が到着しました。5曲入りの同作には現編成の歌唱によるライヴ定番曲集『iNTRODUCiNG BiSH』も同梱されており、その2枚を聴けば大舞台に臨む6人の現在と過去が再認識できるというわけです。そこで今回はプロデューサー/マネージャーの渡辺淳之介(WACK代表)、サウンド・プロデューサーの松隈ケンタ(SCRAMBLES代表)というBiSHを創った名コンビに、短くも濃密な〈これまで〉と輝ける〈これから〉を語ってもらいました。

BiSH 『GiANT KiLLERS』 avex trax(2017)

 

オルタナからメロコアへ

――BiSH結成時のサウンド的な狙いはどういうものだったんでしょうか。

松隈「最初からパンクだったっけ?」

渡辺「ややパンク気味だったんですけど、まずBiSを意識するのはやめようっていう話にはなっていて、どっちかと言うとオルタナでしたね。ギザギザの音にしましょうって話で、『Brand-new idol SHiT』の制作を始めました。ニルヴァーナとかスマッシング・パンプキンズ、ジョンスペ……昔ながらの好きだったもの、それこそeastern youthとか、そういう雰囲気のものをやりたいです、みたいな話はしました」

松隈「そうだ、言いよったね」

渡辺「あと、BiSのファースト『Brand-new idol Society』もそうでしたけど、おもちゃ箱っていうか、好き勝手に一枚作ったら、そこから方向性も決まるよね、ぐらいの感覚で」

松隈「最初だからいろんなジャンルに挑戦してみようっていう感じだったね。で、結局、俺の得意な感じがジョンスペじゃなかったから(笑)、メロコアが良いんじゃないかってなったのが『FAKE METAL JACKET』かな。そのなかで最初から一貫してたのは、BiSHはサウンドになるたけシンセを入れないようにしたことですね」

渡辺「そうっすね。“MONSTERS”と“DA DANCE!!”とかちょっと入れてるんですけど、その後はほぼ排除されてるんすよね」

松隈「いちばん初めに作った“BiSH -星が瞬く夜に-”も、デモの時点ではちょっとデジロックっぽかったのを最終的にはシンセを外したからね。“OTNK”のフィドルとティン・ホイッスルもシンセっぽいんですけど、ちゃんと本物の方に演奏してもらっていて」

渡辺「“OTNK”はもう完全に僕がエクリブリウムっていうヴァイキング・メタルのバンドの曲を気に入ってて、そういうアイリッシュ・メタルみたいな曲で叫ばせたい言葉を思いついちゃっただけですね(笑)」

――そういうリファレンスも共有して進めることが多いんですか?

松隈「昔から淳之介は、具体的に〈こういうサウンドが欲しい〉〈こういうアルバムにしたい〉っていうヴィジョンがあるんですよ。それか〈好きに作ってください〉の二択なんで、わかりやすいですね。あとは〈次にアルバムを出します〉〈ここまでこういう方向性です〉っていう先の先まで見せてくれるので、こちらも先のことを考えながら取り組めたり」

――先の画を見ながら作れるというか。

松隈「そうです、そうです。このへんで新メンバーが入るとか。まあ……脱退するとか(笑)。例えば『KiLLER BiSH』だったら僕が鬼バンドで帯同するツアーがあるとか、今回の『GiANT KiLLERS』なら幕張を控えているとか、ライヴを想定した作りができるのもデカいですね。本人たちのストーリーに合った曲が作りやすいというか」

 

BiSHならではのサウンド

――そのなかでメンバー編成も徐々に変わってこられたわけですけど、歌う声の変化というのは意識されていますか?

松隈「まったくないですね。僕の仕事として、作曲っていう作業と、プロデュースや歌のディレクションの作業はくっきり分けてて。出来た瞬間に〈あ、このメロディーはあの声に歌わせたいな〉とかはありますけどね。作る時点ではないです、はい」

――例えばBiSやGANG PARADEと、曲作りのプロセスは違ったりするんですか?

松隈「それもないです(笑)。もっと言うと、渡辺くん以外の案件でも違いはあんまりなくて、自分がかっちょいいって思うのを作ってるだけですね。僕が考えなくても、その人たちが歌えばその人たちのテイストになると思ってるので、どっちかと言うと、その後の歌を録る時に凄く考えます」

――作曲家としては……。

松隈「考えないってことです。歌を録ってミックスする時は物凄く考えてます。味付けはそこで十分に変わるので」

渡辺「とはいえ、アレンジとかは何となく意識されてるのかな?と思ったり」

松隈「そうかな? BiSHに言えるのは、さっきのシンセの件と、とにかくライヴがやりやすい感じというか、〈楽器を持たないパンクバンド〉って謳っているので、バンド感は強いですね。BiSHは全曲を同じギターで録ったりするんですよ。それこそバンドみたいに、同じアンプで同じセッティングで同じ日に全部バンッみたいな。BiSもバンド感は強いですけど、一曲一曲に合うギターに変えたり、シンセを入れたり、もっと可愛い曲もやったり。ギャンパレはもうちょっとエレクトロ寄りだからシンセを中心に……そういう意味だと、確かに全部分けて考えてるかな」

――BiSHの曲は編曲もSCRAMBLES名義だし、ひとつのバンドで録ってる印象があります。

松隈「確かに。BiSは各アレンジャーがギターも担当して、曲によって合うドラマーにしたりもしてるんです。BiSHのレコーディングはうちの若山トシユキ(ドラムス)と坂内“Nori-P”孟紀(ベース)でプレイヤーをほぼ固定してて、ギターもほぼ僕が弾いてますね」

――それでいうとBiSHはやっぱりドラムがカッコイイなってずっと思っていて。

松隈「ありがとうございます。自分、ギタリストなんですけど、あんまりギターは興味なくて、ドラムが好きなんですよ(笑)」

――ギターのプロデュースもされているのに(笑)。

松隈「発売中ですけど(笑)」

渡辺「ドラムのこだわりは昔から強いですよね?」

松隈「ドラムはハンパないね。ギターはもうワンテイクくらいで、フッて録り終わって音ズレてる、みたいな(笑)」

渡辺「BiSHはけっこうファーストから意識してましたよね。下手く弾くっていうか」

松隈「そうね、キッチリしないで弾くっていうのがパンクっぽいというか。録るマイクとかも全部変えてて、最近はちょっと違うんですけど、インディーの頃のBiSHは、わざと安いマイクでドラム録って、コンデンサーマイクじゃなくて、57ってやつで録っちゃったりとか。そうね、BiSHはヘンなマイクで録ってるな。キック用のマイクでスネア録ったりとか。ジャンクっぽい音を研究してて、それが出てましたね」

――そこは最初にあったオルタナっていうところと繋がるのかもしれませんね。

渡辺「そうっすね。最初に話した時に、ニルヴァーナも『Nevermind』じゃなくて、『In Utero』のスティーヴ・アルビニのミックスがいいんだって話してて、とにかく〈汚い音〉にしたいっていうのはありました。“サラバかな”のギターがキレイすぎちゃって、松隈さんに当日ミックスの時に弾き直してもらったりとかありましたね(笑)」

松隈「俺が弾くとちょうど下手になって、ちょうどいいって(笑)」

――歌のほうの話ですけど、デモの仮歌も松隈さんが歌うことが多いんですか?

松隈「100%僕ですね、はい。わかりやすく言うと岡崎体育さんみたいな感じというか……英語っぽく聴こえるけど日本語とか。あの感じで僕が歌って、それを共有して〈これでいこう〉って決まったら、フル・アレンジを進める間に渡辺くん主導で歌詞ができていく感じです」

――作詞クレジットに松隈さんの名前がある場合は、仮歌の歌詞が活かされているってことですか?

渡辺「めちゃめちゃ活きるんですよ、うちの制作体制でいくと。松隈さんの考えた言葉が仮歌でちゃんと入ってると、僕がそれを使いたくなっちゃうんですよ(笑)」

松隈「まあ、割合的なもん? 半分くらい使ってたら俺の名前が入るとか。だから、厳密に言うとBiSHで〈作詞家〉的なことはやってないです。ただ、トータルの意味は考えないんですけど、その曲の持つ世界観や意味は僕も考えるんで、例えば〈最後のシングルだから“FiNAL DANCE”とか〉曲名から考えることも多いんですね。そういうワードを散りばめながらデモを作って、そこに淳之介がハマッたら上手く意味を繋いでくれて……っていう場合が多いよね?」

渡辺「そうっすね。例えば“BiSH -星が瞬く夜に-”だったら、仮歌のサビに入ってた〈星が瞬く夜に~♪〉をどうしても使いたくて。たぶん松隈さんなりに物凄く力を入れてるメロディーのところって、だいたいパワーワードが入ってて、そこは動かせないっすね、なかなか。“オーケストラ”もそうで、〈その手と手繋いで~♪〉とか完全に他の言葉がハマらなくなって」

松隈「“オーケストラ”は、その頃に再録が出るっていう話があったんでアジカンを聴き直してたんですよ。それで何となく仮歌で〈オ~、消して~〉って入れてたんです(笑)。どうせ差し変わるだろうと思って。そこに淳之介が〈オーケストラ〉って言葉を当ててきたんで、〈何あれ、斬新やね〉って言ったら、〈いや、松隈さんがオーケストラって歌ってたじゃん!〉って。〈空耳アワー〉みたいになっとって(笑)」

渡辺「そうでしたね(笑)」

 

メジャーでの振る舞い

――(笑)。では、その“オーケストラ”も候補にありつつ、なぜ“DEADMAN”がメジャー・デビュー曲になったんでしょう?

松隈「メジャー・デビューの候補には全部で3~4曲を出したのかな? もうアルバムが出るのも決まってたので、そのぶんも含めて。で、“DEADMAN”は、メジャー・デビューだからいきなり始まりたいなと思って。イントロなしにして、曲短かったら良いなと思って作ってたんです。でもまあ、こりゃ絶対ボツだなと思ってたら、俺と淳之介が〈“DEADMAN”良いんじゃない?〉って言ったら周りが汲んでくれて、逆に不安になったけどね(笑)」

渡辺「“オーケストラ”が良いっていう意見もあったんですけど、avexさんも行けるなら行ったほうがいいっていう意見になって」

松隈「自分のバンド(Buzz 72+)も昔avexさんからメジャー・デビューしたんですけど、その経験もあって、いきなり良い曲を最初にやっても聴いてもらえないんじゃないかっていう思いが個人的には強くて。BiSHは長期的に見てもらえるっていう話だったので、素直に良い曲はアルバムに取っておいて、最初はビックリさせたいなって凄く思ってましたね。アイナ(・ジ・エンド)がいきなり歌い出すっていう攻撃的な、普通に女性ヴォーカルの曲としてもなかなかないタイプなんで、僕はもうちょっと世の中ひっくり返るかなって。椎名林檎が出てきた時ぐらいになるかなと思ったんだけど……まあ、すべりましたかね(笑)」

渡辺「すべってはないっすよ」

――99秒っていう話題もありましたからね。その後に控えていた曲も考えると、良い前フリになったでしょうし。

松隈「壮大な前フリやったね(笑)」

渡辺「そう、それで別にライヴの動員が減ったわけでもなかったし。凄く良い〈咬ませ犬〉みたいな歌になったな、って」

松隈「そういう歌も大事なんですよ。うちらはずっと同じチームでやってるから、何か戦略ある感じになるよね」

――お二人が昔のインタヴューで、前のBiSが“PPCC”(2012年)でメジャー・デビューする時に〈メジャーを意識しすぎた〉って仰っていて、その時の反動もあったのかな?って。

松隈「ああ、僕はあったかもしれないですね。“PPCC”に関しては、インディー時代からBiSを追ってた人は、あのBiSが〈ぺろぺろちゅっちゅ~〉って可愛い曲をやるのはおもしろかったと思うんですよ。でも、メジャーに出ていくと可愛いことを歌うアイドルってたぶん普通なので、逆にわかりづらかったのかなって。せっかく大きい世界で広めてもらえるタイミングだったのに」

渡辺「難しいっすよね。“PPCC”自体は全然失敗じゃないですよ。ですけど、僕の認識では〈これで良いのかな?〉って思いながら出ちゃった部分があって。っていうか、当時は時間がなくて……まあ、いまだから言えるんですけど(笑)」

松隈「そうそう、前のBiSはホント時間がなかった。それでBiSHは、特にメジャーになる時からは、余裕を持ってやりましょうって。だから最初に4曲くらい出せたんよ。昔はだいたい候補も1曲だったもん。〈これでよろしく〉〈OKです〉みたいな(笑)」

渡辺「BiSの失敗を踏まえて……こういう話すると、プー・ルイがめちゃめちゃ怒るんですけど(笑)」

松隈「怒るよね(笑)。まあ、余裕というか、考えて選んだりできるように」

渡辺「そうなんです。大事にやらせてもらっていて。ホントにBiSの時は、“primal.”の歌詞じゃないですけど、来年のことより今を生きてたのが、最近はやっと3か月くらい先は見られるように(笑)」

松隈「そうね、そういう意味じゃ、あんまり先までは見えとらんね(笑)」

渡辺「まだまだ全然ですね(笑)」

 

大舞台の先には……

 そんななかで届いた『GiANT KiLLERS』は……竜宮寺育が作詞した表題曲からして、メリーゴーランドorジェットコースター的なライヴ感丸出しの大合唱チューンで最高! セントチヒロ・チッチの切迫した美声が刹那的な曲調に映えるモモコグミカンパニー作詞の“Marionette”がそれに続き、同じくモモコ詞でメジャー感を担保する“Nothing.”、さらには作詞したハシヤスメ・アツコのユーモラスな空気感も伝える“社会のルール”、そしてアユニ・Dのやんちゃ感とリンリンらしい内省的な詩情が光る“VOMiT SONG”と、申し分のない5曲が用意されています。

――これは幕張を見据えた作品で。

渡辺「そうですね。いわゆる〈giant killing〉って〈勝てそうもない大きな相手を何とかする〉っていう言い回しで、〈giant killer〉だと〈番狂わせな奴ら〉みたいな意味合いになるんですけど。やっぱりBiSHってホントにクソみたいなインディーズから始まって、物凄いスピード感で、わけもわからずトントン拍子に進んできて、幕張を控えて……さっきの“DEADMAN”じゃないですけど、ここでちょっとバカな曲を出したかったところがまずありましたね」

――新しいファンの人も増えましたし。

渡辺「“オーケストラ”~“プロミスザスター”がやっぱりキレイすぎちゃったんですね。もちろんそれもBiSHの本分だし、カッコイイ楽曲たちなんですけど、そこで興味を持ってくれた人たちに、そればっかりだと思ってほしくなくて」

――シングルじゃなくEPっていうのは?

渡辺「EPはずっと前から出したかったんです。シングルってどうしても、〈“プロミスザスター”です!〉みたいになっちゃうじゃないですか?」

――1曲の重みが強くなっちゃうから。

渡辺「そうなんです。それよりは、やっぱりいろんな曲で判断してほしいし。と言いつつ、買いやすさとかも考えて、〈5曲並べたらわかってもらえるかな?〉みたいな気持ちなんですけど。でも、今回はホントに良い曲が揃いましたね。『KiLLER BiSH』からの流れを汲むめちゃめちゃ良いEPだなと自分的には思っていて」

――曲調的に“プロミスザスター”の流れにある“Nothing.”も、リード曲じゃなくてこの5曲の中にあるのが凄く良いなって。

渡辺「そうなんです。“Nothing.”もありつつ、他の曲はけっこう遊んでるというか、僕たちはこういう曲もやってますよ、みたいなところを見せられたかな。特に“VOMiT SONG”のミックスが気に入ってて、この曲で終わるのが凄く僕の中では良くて。しかも短いじゃないですか? 5曲入りなんで、ループしたくなるというか」

――“VOMiT SONG”みたいなUSインディーっぽい鳴りもあれば、“Marionette”はちょっとLUNA SEAみたいだったり、いろんな曲があって。

渡辺「“Marionette”、確かに途中までLUNA SEAの曲にいきそうな、イントロの雰囲気ありますよね」

松隈「おもしろいね、メンバーもみんなそう言いよったね。別に指示出してないのに、〈ヴィジュアル系みたいに練習してきました!〉って。俺の中ではBUCK-TICKなんやけどな(笑)」

渡辺「流れ的にはそっちですね(笑)」

松隈「まあ今回は、やっぱりこの間のツアーでメンバーが凄い成長したなっていうのを感じました。僕らも鬼バンドで一緒に回ったんで、みんな楽器をよう聴くようになったんですよ。だから、歌を録る時もコミュニケーションが円滑になって」

――ああ、いいですね。

松隈「〈このスネアにノッて〉とか〈ここでドラマーがこう叩いてるのを感じながら歌って〉っていうのが感覚としてできるようになってて。特にチッチ、アユニはもうロックっぽく歌う感じが強くなりましたね。もちろんアイナは軸にいるんですけど、今回は全員の見せ場が多くて良かったかな」

渡辺「アイナからメールありましたよ。〈今回は歌割りが少なかったので、もっと努力します〉って」

松隈「〈もうさんざんメインにしたから、一回くらい良いじゃん〉って返しといて(笑)。まあ、ダメだったからアイナを引っ込めてるわけでもないしね」

渡辺「いや、全然全然、もう誰がメインで出てきても問題ないなっていうぐらい、違和感なくちゃんとBiSHになってる感じが凄くしましたよね。その意味でもこれは凄く良いタイミングの作品になったというか」

松隈「リンリンとハシヤスメのキャラクターも出てきよったしね。モモコとリンリンの歌詞も凄くキレキレやし」

――度合いはあると思うんですが、歌詞はどれぐらい添削されてるんですか?

渡辺「曲によるんですけど、言い回しとか、譜割の合わないところをちょろっと直すぐらいですね。かなり直した場合は僕が自分の名前も入れるので、今回のモモコとリンリンのは、ほとんど直してないはずですね」

――お2人とも自分の作風がハッキリ出てきていて。

渡辺「そうなんですよ。あ、“社会のルール”はけっこう直したかな。でも、俺の名前を入れると〈何で渡辺さんの名前入ってるんですか!〉ってハシヤスメが怒るから(笑)」

松隈「怒るんだ(笑)」

――そこは穏便に……。では、来たる幕張のステージはどんなものになるでしょう?

渡辺「幕張はですね、BiSHらしいというか、ファンの人たちに観たことないようなものを観てほしいなと思っているので、ちゃんとチケットが売れれば素敵な舞台装置をいっぱい用意しようかなと思ってますね(笑)。まあ、そこは上手くいくと思ってるんですけど。BiSH本人たちが良いって思ってもらえるようなライヴにしたいです。そこからやっと、いわゆる地上戦に行ける立ち位置になるのかなと思っていて、なので、そこに向かってテイクオフできる本人たちのパワーっていうものを幕張では観せたいなって思ってます」

 今回の『GiANT KiLLERS』に続いては、GANG PARADE、BiSが各々のシングルを控え、一方では新グループとなるProject aW(仮)の動向も気になるところ。そんななかWACKの看板として、SCRAMBLESサウンドを武器に幕張の攻略に挑むBiSH。それが大番狂わせなのか、順当な結果なのか、いずれにせよ6人の到達点がそこじゃないことは間違いなさそうです。

 

関連盤を紹介。

 

BiSHのシングルを紹介。

 

BiSHのライヴDVD「Less Than SEX TOUR FiNAL "帝王切開" 日比谷野外大音楽堂」(avex trax)

 


松隈ケンタ(SCRAMBLES代表)
福岡出身の音楽プロデューサー。2002年にBuzz 72+を結成し、上京して2005年にメジャー・デビュー。その活動休止後は柴咲コウ“ラバソー 〜lover soul〜”(2009年)のヒットを皮切りに、多くの作曲/プロデュース業で活躍していく。2014年には自身の制作チームを母体に株式会社SCRAMBLESを設立。プー・ルイ〜BiSをはじめ、BiSH、GANG PARADEらのサウンド・プロデュースを一手に担う。BiSHの〈鬼バンド〉ではギターを担当。

 


渡辺淳之介(WACK代表)
東京出身の音楽プロデューサー/マネージャー。つばさレコーズにて2009年よりプー・ルイのマネージャーを担当し、2010年にBiSを結成する。〈悪徳マネージャー〉として名を馳せ、2014年のBiS解散後は株式会社WACKを設立。WACKではBiSH、GANG PARADEのプロデュース/マネージメントを手掛け、NIGOと共同でBILLIE IDLE®もプロデュース。2016年に再結成したBiSのプロデュースも手掛ける。多くの楽曲でいい歌詞を書くことでもお馴染み。

 

BiSHサウンドのバックボーンとなる、松隈ケンタとSCRAMBLESの名品たち Pt. 1

プー・ルイ 『みんなのプー・ルイ』 つばさレコーズ(2010)

渡辺が送り出した〈次世代サイバーエモ〉アーティストの処女作が、現在にまで至るWACK×SCRAMBLESスタイルの最初の一枚となった。松隈が全編のサウンド・プロデュースを手掛け、JxSxKこと渡辺も作詞に参加。U2風の“You too”やBiSでも歌われる“One day”など聴きどころは多い。

 

中川翔子 『cosmic inflation』 ソニー(2010)

まだ無名だった松隈の株を上げたしょこたん仕事。その端緒として作詞/作曲/編曲を手掛けた“フライングヒューマノイド”は、以降のエモい女声ロック・スタイルの原型とも言えるヒットに(MVにも出演!)。同曲を収めた本作では“涙星”の詞曲も担っています。

 

BiS 『Brand-new idol Society』 つばさレコーズ(2011)

プー・ルイの発案で結成されたアイドル・ユニットの初作。Buzz 72+として仕上げた“Give me your love 全部”を筆頭に、後のSCRAMBLESを構成する面々も動員してカラフルな内容にまとめられている。JxSxK作詞の名曲“レリビ”、“BiSH -星が瞬く夜に-”のネタ元でもある“BiS”も聴かなくちゃ。

 

BiS 『IDOL is DEAD』 avex trax(2012)

後にBiSHがオマージュする“primal.”や“IDOL”をはじめ、本文中にあるポップ・パンクなメジャー・デビュー・シングル“PPCC”など、より明確にロックな音像へと焦点を絞ったセカンド・アルバム。絶叫と呻き声だけで構築された冒頭の表題曲など、後進の過激派に与えた影響は絶大でしょう。

 

this is not a business 『10 GOODS』 10 goood(2013)

渡辺が見い出した天狗バンドの初作。カート・コバーン好きのフロントマンや九州男児のギタリストらを擁し、“MAN”“WITH A MISSION”や“OK GO”など曲名こそ人を食ったものながら、キャッチーな楽曲は粒揃いです。メジャー入りを果たすも2015年に解散。

 

LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN 『JAPONiCA!!2』 つばさレコード(2014)

BiS解散を控えたプー・ルイが松隈らと結成した4人組バンド。この初EPはJxSxKも共作した“感じたいよ ソバにいたいよ 新しい風と切り裂く光を”など、多様な楽曲をシンプルな編成で調理。ベースの小原just begunはBiSHの〈鬼バンド〉でも活躍しました。

 

BiS 『WHO KiLLED IDOL?』 avex trax(2014)

作家陣の多彩さもあって、デジタル・ハードコアにまで及ぶ多様なラウド~ミクスチャー系の音がひしめく(この時点での)最終アルバム。JxSxKが詞を書いた松隈渾身のピアノ・エモ名曲“Hide out cut”もここに。結びはイエモン“プライマル。”のカヴァー。

 

旧BiSの解散を飾った最高最後のシングル。今回BiSHの“Nothing.”でも引用されている表題曲は、松隈 × BiSの中でも異例の陽気さが映えるエモい快曲に。〈孤独が運命さ〉と潔く歌うカッコ良さが、却って絆のかけがえのなさを強く感じさせるのは言わずもがな。

 

BiSH 『Brand-new idol SHiT』 SUB TRAX(2015)

最初期メンバーの貢献も刻み付けられたファースト・アルバム。冒頭の一節を丸ごとTHE YELLOW MONKEYから引用した“スパーク”をはじめ、さまざまな感情を多彩なアレンジによって引き出された全体の仕上がりは表情豊かなもの。今回〈iNTRODUCiNG〉されていない代表曲も多々あり。

 

BiS解散後のカミヤサキによるプラニメを前身とした、現GANG PARADEの初めてのアルバム。代表曲“Plastic 2 Mercy”など、ラーメン系のダンス・エモをEDM的な感触でまとめたシンセ主体のサウンドが特徴となっています。SCRAMBLESの構成員が多様に貢献。

 

椎名ぴかりん 『MAKAI NO OWAR』 avex trax(2015)

人気モデルでもある魔界アイドルの怪作。総合プロデュースを松隈が手掛け、田仲圭太や佐藤カズキ、井口イチロウらSCRAMBLESの面々が作/編曲したヘヴィーな楽曲が並んでいます。“ドゲザナイ~お前をひざまづかせてやろうか~”など大半を竜宮寺育が作詞。

 

BiSHサウンドのバックボーンとなる、松隈ケンタとSCRAMBLESの名品たち Pt. 2

BiSH 『FAKE METAL JACKET』 SUB TRAX(2016)

リンリンとハシヤスメを加えてのセカンド・アルバム。初作から4曲も再録しつつ、青春パンク的な新録曲とのバランスも相まってトータルの人懐っこいまとまり具合は前作以上。モモコグミカンパニーとリンリンの詞才もここから際立ってきています。

 

GHOST ORACLE DRIVE 『TVアニメ GOD EATER 挿入歌集』 Lantis(2016)

松隈がヴォーカルのSCRAMBLESメンバーによるバンド、GHOST ORACLE DRIVEが全曲を演奏した、表題通りのアニメ挿入歌集。JxSxKと松隈がすべての詞曲を書き下ろし、“Human After All”ではチッチの幻想的な歌唱も聴けるので、BiSH好きなら必聴です。

 

アユニ・D加入を経てのサード・アルバムにして、メジャーでの初作。切迫感を帯びたヘヴィーなサウンドにエモーションを乗せて突破するようなキラー・チューンが連発され、各々のヴォーカルの個性もよりいっそう鮮明に。一方で“KNAVE”や“summertime”の温かみもあって隅々まで名曲だらけ。

 

PiiiiiiiN 『容赦なく逃げてった未来』 STARRAY(2016)

残念ながらこの5月に解散した青春ロック系アイドル・グループ。松隈のプロデュースによるこの最初で最後のアルバムは、SCRAMBLESの面々が楽曲を持ち寄った快い内容になっていました。なかでもJxSxKが作詞した表題曲のエモさは素晴らしいです。

 

GANG PARADE 『Barely Last』 T-Palette(2016)

制作途上のメンバー脱退など危機的な状況が結果的に楽曲に乗った感もあるセカンド・アルバム。井口イチロウやsome、佐藤カズキらソングライターの個性がカラフルな曲ごとの彩りに結び付きつつ、前作よりストレートなロック色もアップ。松隈のペンによる表題曲にはグッときます。

 

BiS 『Brand-new idol Society2』 つばさレコーズ(2016)

再始動していきなり届いたアルバムは、SCRAMBLESの総勢でリアレンジした過去曲の再録と、まっさらな新曲が混在する変則的な一作。復活を告げた“BiSBiS”や、変わらない思いをJxSxKがストレートに綴った“CHANGE the WORLD”は泣ける名曲でしょう。

 

DISH// 『召し上がれのガトリング』 ソニー(2016)

このアルバムに松隈の書いたナンバーが2曲収録されている縁もあってか、後にBiSHとのツーマンも実現させたダンス・ロック・バンド。先行ヒットした“HIGH-VOLTAGE DANCER”はもちろん、オープニングを飾る“JUMPer”がシンガロング必至の熱い出来映え!

 

touch my secret 『GET YOUR WORLD』 KATSUSA PLANNING(2017)

MONDO GROSSOの新作にも招かれていたAnneを含む、3ピースの次世代ロック・バンド。このミニ・アルバムでは前年の『nil』に続いて松隈がサウンド・プロデュース、SCRAMBLESで編曲を担い、攻撃的でエモーショナルな楽曲集に仕上げられています。

 

BiS 『Re: STUPiD』 つばさレコード(2017)

短いスパンで登場した再始動後の2枚目はすべて松隈の作曲したナンバーで固められた力作。痛みを伝えるような名曲“gives”に旧BiSからの連続性も漂わせつつ、新鮮なポップネスのある“twisted grunge”や“Never Starting Song”、温かい“ロミオの心臓”などで新生面を切り拓いた佳曲集です。

 

GANG PARADE 『FOUL』 T-Palette(2017)

現時点での最新シングル。開放的でスケールの大きいアップ・チューンはWACK関連でも随一の曲調の幅広さと抜群の一体感を誇る彼女たちならでは。7月のニュー・シングル“Beyond the Mountain”ではまたもハイパーな新機軸にブッ飛ばされるはず!

 

BiS 『SOCiALiSM』 つばさレコーズ(2017)

新メンバーを加えた現7人体制でのメロ(ン)パン仕立てな初シングル。いずれも松隈の作曲で、不穏に迫る表題曲は井口イチロウ、突き抜けるように明るい“Did not”は佐藤カズキが各々アレンジを担当しています。8月には次のシングル“I can't say NO!!!!!!!”も出る!

 

ばってん少女隊 『ますとばい』 Colourful(2017)

私立恵比寿中学、たこやきレインボーに続いて関わったのは、松隈と同じ福岡生まれのグループ。記念すべき初のアルバム(詳細はP62を!)にて爽やかな青春スカ・パンクの“STORM!”を松隈が作曲し、BiSH曲と同じリズム隊も痛快なスピード感で盛り上げます。