KNOCK ON THE DOOR
[特集]理想の〈アメリカ〉を求めて
アメリカがどこへ向かおうとも、アメリカーナはいつだってここにある。先行きの見えない時代だからこそ、ルーツに根差した音楽と旅に出ないかい?
★Pt.2 JEFF TWEEDY『Together At Last』
★Pt.3 DAN AUERBACH『Waiting On A Song』
★Pt.4 SUFJAN STEVENS/BRYCE DESSNER/NICO MUHLY/JAMES McALISTER 『Planetarium』
★Pt.5 「American Epic」と巡る1920年代の米国/ジョン・フェイヒーに愛を込めて
★Pt.6 ディスクガイド
遡ること60年代末。ヴェトナム戦争が泥沼化していく時代だ。その反戦運動を発端としたヒッピー文化が花開くなか、サイケデリックな浮世と逆行するかのように、みずからの源流を辿ったグラム・パーソンズはバーズに加入して〈カントリー・ロック〉なるスタイルを提唱し、ヴァン・ダイク・パークスやランディ・ニューマンを筆頭とするバーバンク一派は、混沌とした世相に対するアイロニーとしての〈古き良きアメリカ〉を音楽で甦らせた。時計の針を進め、湾岸戦争が勃発した90年代初頭には、アンクル・テュペロやジェイホークスらパンク通過後の温故知新派とも言える〈オルタナ・カントリー〉勢が登場。また、よりマージナルな立ち位置からフォーク、カントリー、ブルースなどを志向する作品を〈アメリカーナ〉と呼びはじめたのもこの頃である。
そして2017年、アメリカン・ルーツに根差したサウンドを現代的なインディー感覚で鳴らすミュージシャンの活躍が目立っていることをご存知だろうか? そうした状況をお伝えすべく、この特集では90s以降の流れを継承しつつも今日的なアプローチを試みた、〈ニュー・アメリカーナ〉とでも呼ぶべき作品を一挙に紹介している。
時代が変革期にある時こそ、地に足を着けて自己のルーツを見直す作業は有効性を増すと思う。政権交代によって大きな曲がり角に差しかかった現在のアメリカにおいて、ルーツ探求的な音楽が注目を集めているのは、もはや必然なのかもしれない。 *北爪啓之