髪を切った彼女は、夏の扉を開けてどこへ向かう? かの『星がみちる』から季節は巡って5年目のシーズン、満天の星座たちに守られたオリジナル作がついに完成!

 昨年は初めてのカヴァー・アルバム『My Favourite Songs』をリリースするなど、相変わらず自身のポテンシャルを掘り起こす作業に余念のなかった星野みちる。そんな彼女から1年9か月ぶりのオリジナル・アルバム『黄道十二宮』が届けられた。今作では、2012年の再始動以来プロデュースを手掛けてきたはせはじむ、佐藤清喜(microstar)を制作陣の中心としながらも、新進気鋭からヴェテランまで初顔合わせの作家陣も大挙迎え、これまで以上にブランニューな世界観を構築。年明け早々に一新したヘア・スタイルといい、今年のみちるは、か・な・り……!?

星野みちる 黄道十二宮 HIGH CONTRAST/ヴィヴィド(2017)

――髪、切りましたよね。

「そう、なんか嫌だったんです。長い髪が、じゃなくて、自分のことがやだなあ、やだなあって思うことがいろいろあって(笑)」

――いろいろ。

「失恋とかではないんですけど(笑)……なんでですかね? 生まれ変わりたいと思って(笑)」

――真新しい自分を見せたいと?

「そうかも知れないですね。〈変わった〉ってわかりやすいから」

――大人の女性が髪を切ると、何かあったのかな?ってみんな気にかけますしね。

「そうですね。ちょっと思い切ったことをしないと良いスタートが切れないと思ったので、去年の終わりぐらいから計画してました」

――非常にお似合いだと思うんですが、作品のほうでもしっかりと新しい星野みちるを見せてきましたね。アルバム『黄道十二宮』は、初めての作家さんもたくさんいます。

「今回、プロデューサーのはせはじむさんからは、全体を通して大人な一枚にしようっていう話があって。それで、ジャケットも〈みちるちゃん、写ってなくてもいいんじゃない?〉って。よく見ると写ってる、そのぐらいのほうがイイんじゃないかって(笑)」

――器量の良さも魅力の星野みちるとしては、ある意味〈攻め〉ですよね。で、アルバムは1曲目からビッグネームが登場します。

「杉真理さんに作っていただいた“Unstable Girl”は、いちばん最初に上がってきた新曲です。聴いた瞬間、なんか懐かしい気持ちになる曲調だなって思いました」

――作詞ははせはじむさん。〈Unstabel=情緒不安定〉って、これはみちるさんのリアルな部分でしょうか?

「情緒不安定ってことはないんですけど、まわりから誉められても〈どうせそんなこと思ってないんでしょ〉みたいに思ってしまう素直じゃない女の子のことが書かれていて、そこは〈みちるちゃんにピッタリでしょ?〉って言われました(笑)」

――2曲目、先行シングルとしてリリースされた“鏡の中の私”は、TWEEDEESの沖井礼二さんがプロデュースした曲で、新曲のなかでもいちばん振り切った曲という印象を受けますね。

「歌いこなすのも、すごく難しかったです。いただいたデモでは清浦夏実さんが仮歌を歌ってらして、なんかもう完成されてたので、うわー、どうしよう、どうやって歌おうかな、って慌てました(笑)」

――〈大人な一枚〉というコンセプトには、雰囲気だけじゃなくて、テクニカルな部分でもワンランク上という意味も含んでますよね。

「歌う曲はどんどん難しくなっていきますね。曲自体が難しい曲っていうことではなくて、表現の仕方が難しい。沖井さんも〈星野さんは歌えるから、遠慮しないで好きに作らせていただきました〉って言ってました。おかげさまで、すごく新たな一面を引き出してもらえたと思います」

――続いての“ONE-TIME LOVE”は、辻林美穂さんが書いた曲です。サウンド的には、みちるさんがしばしば聴かせてきたアーバンな路線を匂わせるものですけど、女性が書いた歌詞を歌うというのは新しいパターンですよね。

「辻林さんからは“メスのように歌ってください”って言われました(笑)。とくにBメロは〈もっとメス感を〉って言われて、なんか艶っぽく、色気のあるように、目の前に男性の姿を思い浮かべながら歌いました(笑)」

――その次の“キライよ”と、9曲目の“もっともっともっと”が、みちるさんの自作曲ですね。“もっともっともっと”は大人の恋愛風景、〈ワンルームの 通い慣れた あなたの部屋で〉って情景がリアルに浮かぶ歌詞です。

「遊ばれてる感のある歌詞なんですけど、いつも気持ちばかりを言葉にしがちなので、今回は情景がイメージしやすい歌詞にしようって意識しました」

――テーマとしてはやはり恋愛が多くなる、それもストレスの溜まるような。

「そうですね(笑)。すべてが実体験というわけでもないので、そういう感情を描写したほうが歌詞になりやすいですね。内容的には2曲とも大人の世界観なので、親に聴かせるのがすごく恥ずかしいです(笑)」

――(笑)。曲はたくさん書いてるんですか?

「このアルバムを作るにあたっては、はせさんに10曲ぐらい提出しました。採用されたのはこの2曲だけなんですけど、それは全体のバランスを考えてのことで。だから、いずれは全部自作の曲のアルバムを出してみたいですね。何かしらのテーマをもらって、それに沿った曲を……それだったら作れそうな気がします! あと、今回は女性に共感してもらえるような歌詞も多いと思うので、女性の方にも聴いてほしいですね。ジャケットに顔がバーンと出てないので、〈夜景がきれいだな〉とか間違って手に取った人が聴いて〈ステキ!〉ってなってくれたらなって」

――さすがに、間違えて買う人はいないかと思いますが……。

「ですよね(笑)」

――他にどんな方々が参加しているかは別項のコラムを参照していただくとして、今回はいままで以上にやりきった感のあるアルバムになったんじゃないかと思いますが。

「そうですね。今回は新しいジャンルの曲がまた増えたので、杉さんのファンだったり沖井さんのファンだったり辻林さんのファンだったりにも、星野みちるを好きになっていただけたらいいなあ思います。オジサマたちだけじゃなく、若い皆さんにもたくさん聴いてほしいです!」

 

星野みちるの近作。

 

シングルの近作を紹介。