INTERVIEW

ゲスの極み乙女。/indigo la End川谷絵音×THE NOVEMBERS小林祐介、海外インディーから独自のサウンド築き上げる2人が〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉の魅力を語る

〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER 2017〉

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  • 2017.07.24
(左から)小林祐介、川谷絵音

 

〈SUMMER SONIC TOKYO〉の深夜を彩るイヴェントとして定着した感のある〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉(以下〈HCAN〉)が今年も8月19日(土)深夜に千葉・幕張メッセにて開催される。トム・ヨーク、フランツ・フェルディナンド×スパークスらが出演した2015年、ダイナソーJr.、アニマル・コレクティヴらが出演した2016年に続き、3回目の開催となる今年は、先日3年ぶりとなる新曲“New York”を発表し、日本を皮切りに世界ツアーをスタートさせるセイント・ヴィンセントが登場。さらには、モグワイ、ライド、ホラーズなど、ギター・サウンドが特徴的なバンドが並び、新人のシガレッツ・アフター・セックスらも含め、オルタナ色の濃いラインナップと言える。

そこで、今回は〈フジロック〉への出演を控えるTHE NOVEMBESの小林祐介と、ゲスの極み乙女。/indigo la End――両バンドで〈サマソニ大阪〉へのラインナップに加わった川谷絵音を迎え、今年の〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉について語り合ってもらった。それぞれが独自の審美眼を持って海外の音楽に接し、吸収することによって、日本において独自のポジションを築き上げてきた両者は、いまどんな音に注目しているのだろうか? イヴェントへのパスポートとして、各出演者をチェックしつつ、楽しんでもらいたい。

★シューゲイザーやポーティスヘッドを愛する人にも大推薦、オルタナ精神に満ちた今年の〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉が現時点でスペシャルな理由

 

常に〈いま〉が一番かっこいいバンドでありたい

――まずはあらためて、2人の関係性について話してもらいたいと思います。もともと絵音くんがTHE NOVEMBERSの大ファンだったそうですが、実際の出会いはいつだったんですか?

川谷「ライヴは何回も観てたんですけど、初めて話したのは2012年にindigo la Endの企画に出てもらったときです。ただ、そのときは全然同じ土俵に立ててなくて、THE NOVEMBERSに出てもらえるというだけで舞い上がっちゃってたから、そんなに話はしてなくて。ただ、THE NOVEMBERSとindigo la Endはレコーディング・スタジオが同じトリプル・タイム・スタジオなので、エンジニアの岩田(純也)さんからはいろいろ話を聞いていました」

※2012年2月15日、東京・下北沢SHELTERにて開催

小林「そうそう、実際会う回数はそんなに多いわけじゃないんですけど、僕もわりと頻繁に岩田さんから絵音くんやインディゴの話を聞いていて、作品も定期的に聴いていたので、よく知ってる気がするというか」

――絵音くんにとって、なぜTHE NOVEMBERSは特別なのでしょうか?

川谷「好きなバンドでも、〈このときがよかった〉みたいなことが普通にあると思うんですけど、THE NOVEMBERSは常に〈いま〉が一番かっこいいんですよね。僕らもそうでありたいと思っているんですけど、THE NOVEMBERSはホントに最新作を出す度にそれが最高で、ライヴも毎回更新していってる。今年の5月に観に行ったときも最高で、僕は復帰の時期でもあったから、ゴチャゴチャしてた感情がそこで吹っ切れたんです。自分がバンドをやっていると、好きなバンドでも純粋にライヴを観ることができなくなったりするけど、THE NOVEMBERSはそれが一切なくて、いつも普通に感動しちゃうし、自分が音楽を作る原動力にもなっている。僕のなかでホントに特別な存在なんですよね」

THE NOVEMBERS の2016年作『Hallelujah』収録曲“1000年”
 

――逆に、小林くんは絵音くんに対してどんな印象を持っているのでしょうか?

小林「インディゴから誘ってもらったイヴェントの打ち上げで初めて話をしたときに、絵音くんがどういうものを抱えているかが垣間見えて、だからこそああいう曲になるんだと、すごく合点がいった瞬間があったんです。それまで僕の周りにいた人はすごくダイレクトな人か、装っている人か、いずれにせよわかりやすい人が多かったのに対して、当時の絵音くんはいろんな感情を抱え込んだまま活動してるような印象があって、どこか底知れない感じがありました。〈あの人はこれからどうなっていくんだろう?〉と、岩田さんと話しながら帰った記憶があります。あの頃って、いろんなコンプレックスとか抱えてた?」

川谷「それしかなかったです(笑)」

小林「そんな感じがあって、でも作るものは耳馴染のいい瞬間も多かったし、〈何でこんなにいろんなものが同居してるんだろう?〉と思った。屈折してるのに耳懐っこいというか。しかも、それが散らかって見えるわけじゃなくて、一音の中に共存しているような感じ。だから、〈絵音くんはこういう人〉と一言で言うのはすごく難しいんだけど、抱えているものの熱量はちょっと桁が違うなって、そんな気がしましたね」

indigo la Endの2017年作『Crying End Roll』収録曲“鐘泣く命”
 

――今日は〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉について話してもらいたいのですが、その前に2人の洋楽におけるルーツについてお伺いしたいです。小林くんはキュアーやスミスといった80年代のバンド、絵音くんはレディオヘッドなど90年代のバンドと、それぞれのリアルタイムよりも少し上の世代のバンドがルーツにあると思うのですが、そのあたりのことも含めて、どんな入り口で洋楽に接するようになったのかを話してもらえますか?

小林「海外の音楽にのめり込むきっかけは、まさにキュアー、スミス、バウハウスとかで、じゃあ、何でそういうバンドを知ったのかっていうと、僕はやっぱりL'Arc〜en〜Cielが大きくて。kenさんがインタヴューで、さっき言ったようなバンドやダイナソーJr.とかの名前を挙げてて、それらをタワレコで初めて聴いたときに、〈自分はこれの良さがわかる〉って思ったんですよね。〈ラルクと通ずるものがあるぞ〉と。kenさんとかの世代から、隔世遺伝的に伝わってきて、自分も〈わかる〉って思えた。それは大きかったですね」

――リアルタイムのものも聴いてはいました?

小林「(洋楽を聴きはじめたのが)ちょうどポスト・パンク・リヴァイヴァルの時期で、ブロック・パーティとかフランツ・フェルディナンド、その前にはザ・ストロークスとかがいたわけですけど、ブロック・パーティとニールズ・チルドレンにハマったくらいで、それ以外は全然でした。レディオヘッドやニルヴァーナも、兄の影響で知ってはいたんですけど、なぜか当時は何とも思わなかったんですよね。でも、大学に入った頃に、“Idioteque”のスタジオ・ライヴ映像を観たことがきっかけで、ちょっと前まではなんとも思ってなかったレディオヘッドが急に神のようになって。みんなより遅れて90年代、00年代の音楽を聴いていって、2006年くらいにようやくリアルタイムに追いつきました(笑)」

レディオヘッドの2000年作『Kid A』収録曲“Idioteque”のスタジオライヴ映像
 

川谷「俺は洋楽をちゃんと聴きはじめたのが大学の軽音部に入ってからなんで、2007年とかなんです。それまでは海外の音楽というと、〈サム41しか知らない〉みたいな感じで(笑)、もともとはJ-Popしか聴かなくて、高校からELLEGARDENとかRADWIMPSとかバンドを聴くようになった。でも、大学に入って、軽音楽部の先輩からゆらゆら帝国とかを教えてもらって、そのあたりから自分でいろいろ聴くようになって。リアルタイムだったのはアークティック・モンキーズやクラクソンズとか。軽音楽部のみんながアークティック・モンキーズをコピーしてるみたいな状況のなか、無作為に有名なのをバーッと聴いて、そのなかでレディオヘッドにいちばんハマったんです」

――〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉の第一回にはトム・ヨークがソロで出ていましたね。絵音くんにとってレディオヘッドはなぜ特別だったのでしょうか?

川谷「当時はYouTubeのライヴ映像ばっかり見てて、そのなかでいちばん感動したのがレディオヘッドだったんです。理由は特になくて、直感的に好きになったんですけど、その頃〈村上春樹とレディオヘッドを好きっていうのがオシャレ〉みたいな風潮があったから、〈好き〉とか言うと、そういうのと一緒だと思われたりもして(笑)。でも、ホントに直感的に好きになったし、〈一時期好きだったけど、もう聴かなくなっちゃった〉みたいなアーティストがたくさんいるなか、レディヘッドだけは新作も追い続けてます」

クォリティーの高さが正義に転ぶことを証明するセイント・ヴィンセント
インダストリアルな新作に大期待のホラーズ

――では、ここからは〈HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER〉のラインナップについて話をしようと思います。まず今回の目玉と言えるのがセイント・ヴィンセントですね。2014年の前作『St. Vincent』がグラミー賞の〈最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム〉を受賞して、いまやブルックリンのみならず、アメリカを代表する女性アーティストになったわけで、そんな彼女が日本から世界ツアーをスタートさせるというのは非常に興奮します。

川谷「セイント・ヴィンセントはすごく好きです。ひとつ前のアルバムはリード曲が4つ打ちのダンサブルな曲(“Digital Witness”)だったり、アルバムごとにスタイルが変わるから、全然飽きない。あとはギターがめっちゃ上手くて、音作りもすごいから、〈これどうやって出してんの?〉って思う。実はギタリストでカッコイイなって思う人はあんまりいなくて、People In The Boxの波多野(裕文)さんのプレイに〈やばいな、これ〉って思うくらいなんですけど、この人のフレーズもめちゃめちゃ格好良いから、生で観たいですね」

2014年作『St. Vincent』収録曲“Digital Witness”
 

――彼女のファズの音はホント独特ですよね。

川谷「僕ゆらゆら帝国が大好きなんで、前はファズばっかり集めてました。“冷たいギフト”のミュージック・ビデオを真似して、全部直列につないだら音細くなっちゃって、いまはやってないですけど(笑)」

――ハハハ(笑)。小林くんはセイント・ヴィンセントどうですか?

小林「僕も大好きです。最近のライヴではトーコ・ヤスダと2トップでの演出にも力を入れているじゃないですか? もともと曲やパフォーマンスにすげえなと思ってたんですけど、演出が加わってさらに好きになりました。衣装、舞台装置、照明とか、クォリティーの高さが正義に転ぶってこういうことだよなって」

※2011年頃からセイント・ヴィンセントのライヴでシンセサイザー/ギターで参加している日本人ミュージシャン

2015年のライヴ映像。開始45秒あたりからトーコ・ヤスダとの超絶フォーマンスを観られる
 

――新曲の“New York”もすごくいいですよね。告知動画もおもしろいし。

川谷「ヴィジュアルがカッコイイなって。アートっぽい見せ方が上手いから、ギャグでもギャグに見えないというか、美しく見えるんですよね」

――続いて、小林くん的にはやはりホラーズは注目かと。ゴスやポスト・パンクを出自に持ちつつ、作品を発表するごとに進化をしてきましたが、9月22日(金)に約3年ぶりの新作『V』の発売が予定されています。

小林「今回好きなバンドばっかりなんで、全部観たいんですけど、ホラーズは新曲がすごく良かったので、あのモードの新曲が他にも聴けるんだったら、とても楽しみ」

――“Machine”ですね。インダストリアルな感じがカッコイイ。

川谷「ジャケットがめっちゃキモいですよね(笑)」

小林「横の日本語もいい味出してる。変な邦題とかつけてほしい(笑)」

――ホラーズは昔から好きなんですよね?

小林「あ、でもセカンドの『Primary Colours』(2009年)あたりからです」

川谷「俺もファーストの『Strange House』(2007年)はあんまり好きじゃなくて、最初は〈何だこれ?〉と思ったし、歌い方とか嫌いだったんだけど、セカンドで急に変わりましたよね」

小林「実は僕もファーストは最初バカにしてたんだけど、セカンドを聴いて好きになって、サードも良かったから、〈しょうがねえ、ファーストももう一回聴いてみるか〉と聴いたら、〈あれ? カッコイイじゃん〉って思った(笑)。ひとつ前の『Luminous』(2014年)とか、最近のザ・ホラーズはあんまり印象に残ってなかったんだけど、あの新曲のモードでアルバム全体を作ってほしいですね」

2009年作『Primary Colours』収録曲“Who Can Say”のライヴ映像
 

――レーベルが変わって、アデルとの仕事で世界的なプロデューサーの仲間入りを果たしたポール・エプワースがプロデュースしているから、また作風が大胆に変化している可能性はありそう。

小林「プロデューサーは大事ですよね。ポーティスヘッドのジェフ・バーロウが手掛けたセカンドも最高だったし」

――そのジェフ・バーロウはビーク>として来日しますね。ジェフはポーティスヘッドでも来てないし、ソロのDJセットも直前にキャンセルになったりして、まだ日本でパフォーマンスをしたことがないから、今度こそ実現してほしい。

小林「ビーク>は期待していいのかわからないっていうのが正直なところです。すごく楽しみではあるんですけど、そこまで聴き込んではいないので、未知数っていうか」

川谷ライヴの途中でトイレ行っちゃって、そこからケンカ始まったみたいな話ありましたよね? 海外のアーティストはそういうのも込みで楽しみだなって(笑)」

2015年のライヴ映像
 

 

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