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〈風街〉は砂漠になれど、すばらしかは進む―キンブラやCAR10らも賛辞寄せる3人組の日本語ロック・ルネッサンス

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  • 2017.07.28
〈風街〉は砂漠になれど、すばらしかは進む―キンブラやCAR10らも賛辞寄せる3人組の日本語ロック・ルネッサンス

KiliKiliVillaとライヴハウスの下北沢THREEが共同企画したコンピレーション『Block Party at shimokitazawaTHREE』(2017年)への参加でも話題を呼んだ90年代生まれの3人組ロック・バンド、すばらしかが待望のファーストEP『灰になろう』を発表。ケイゾウ(キングブラザーズ)や松島皓(never young beach)、川田晋也(CAR10、suueat.)らも賛辞を寄せ、新たな日本語ロックの金字塔と称される力作と、ブルースやファンク、ソウルの要素を採り入れながらスリリングなロック・アンサンブルを炸裂させるバンドの魅力を、音楽ライターの峯大貴が紐解いた。 *Mikiki編集部

すばらしか 灰になろう Pヴァイン(2017)

今年の3月10日、HMV record shop 新宿ALTAのインストア・ライヴで演奏していたバレーボウイズとすばらしかという東西の2組を見ていると、日本語によるロックの新たな曲がり角、いやスタート地点をふと感じた。先行で登場した京都・左京区の7人組大所帯バンドであるバレーボウイズは60~70年代の学生運動やフォークゲリラ集会、またはアングラ・フォークのパンク化とでも言おうか。当時における岡林信康“友よ”や五つの赤い風船“遠い世界に”を彷彿とさせる若者のテーマソング的なシンガロング・アンセムを青春パンクの感覚を用いつつお祭り騒ぎに鳴らしていた。一方、後攻で登場した東京発の4人組、すばらしか。出身である明治学院大学のサークルでの風景も伺える、無愛想で淡々とした立ち居振る舞い。しかしリズム&ブルースのグルーヴにぶつけるポップなメロディーと、福田喜充(ヴォーカル、ギター)のニヒルで軽妙な声質で放つ吐き捨てるような歌唱、“嘘と言え”“灰になろう”“地獄が待っている”における徹底して斜に構えてふさぎ込んだ歌詞など、ジャックスや村八分などのニュー・ロック勢に通じる確かなオーラを纏っていた。最後には友達だという3人組フォーク・ロック・デュオ、たけとんぼの日暮圭介を呼び込んで唐突な選曲だがローリング・ストーンズの“Dead Flowers”を披露し煙に巻いたように終了。この2組の演奏・サウンドには〈時代〉という軸を無視して日本語のロックを一望し、斜めの視点からもう一度捉えなおそうとする姿勢を感じ受けた。

そんなすばらしかが初の全国流通盤『灰になろう』をリリース。2月に出した同タイトルの自主制作盤の5曲をマスタリングし直し、さらにカヴァーとライヴ音源を追加した8曲入りだ。オープンハイハットのドラムとエコーの効いたアコースティック・ギターがガツガツ進んでいく幕開け“大雨のメロディ”、間奏のサックス・ソロが象徴的なフィラデルフィア・ソウル“嘘と言え”、今日珍しいフリーセッション的な長尺ギター・ソロを持つスタンダード・ブルース・ナンバー“地獄が待っている”など、全体的にざらついたアナログ感のある仕上がりが、ガレージでフレッシュな響きをもたらせている。また追加されたカヴァー曲は萩原健一の80年作『DONJUAN』から井上堯之による詞曲のレゲエ・チューン“お元気ですか”。若手世代から歌手ショーケンへの明確なリスペクトを示したのはサンボマスター以来だろうか。原曲に忠実なアレンジだが、決して突飛なインパクトのためではなく彼ら自身のルーツの一つとして確実にあることを感じさせる。

ジャケット背面に映るメンバー4人が路地裏にぎこちなく佇んだ白黒写真。〈日本語ロックの金字塔!!〉というキャッチコピーが書かれたレコードを彷彿させる明朝体の帯デザイン、そしてCD盤面中央に描かれたURC(アングラ・レコード・クラブ)を思わせる正三角形の中に2重丸のロゴマーク。あからさまなほどにはっぴいえんど『風街ろまん』のオマージュが感じられる。そうなると“灰になろう”という曲名も“はいからはくち”のトリプル・ミーニングに対して、〈ハイになろう〉〈High&Low〉という言葉遊びを含ませているようにも見える。しかし肝心のジャケットはその文脈をぶった切るような広大な砂丘に人が点在している殺風景な風景写真だ。70年代以降の日本のロックにおいてもっとも多く参照されてきたバンドの筆頭であろうはっぴいえんどは、2010年代に入り森は生きているやその後のnever young beachの登場時にも引き合いに出されたが、彼らを含めたインディー・シーンは東京を中心として多様化にドライブがかかった。またそれに伴ってシティー・ポップというものの捉えどころも混沌としたが、2017年現在は一周回って落ち着いた状況にも思える。ここでの砂丘は日本語ロックの金字塔としての〈風街〉は消費しつくされ荒廃し、砂漠化してしまったという意味だろうか。またそこから一歩踏み込んで、もう一度更地の状態から太い幹となるルーツとしての日本語ロックを構築しようというのだろうか。

※〈肺から吐く血〉〈ハイカラ白痴〉に加えて中盤の歌詞〈ぼくはYES(はい)から血を吐きながら 君のNO(脳)にただ夕まぐれ〉のトリプル・ミー二ングだと松本隆が近年Twitter上で明かした

そんな彼らの思想は、退廃的かつ煌びやかでポップな光を放ちみずからを〈日本語ロックの西日〉と称する京都の3人組、台風クラブとの共通性を見いだせるし、正式音源はまだないものの70年代フォークやパブロック、ロカビリーに影響を受けフレッシュな泥臭さを抱擁したロックンロールを鳴らす大阪のアフターアワーズも、もちろん冒頭のバレーボウイズもそう。同時多発的に頭角を現し始めている。8月には台風クラブが初アルバム『初期の台風クラブ』を控え、バレーボウイズも夏にはEPリリースを予定と、全貌公開となる作品が待ち構えている中で、先手を切ったのが本作。すばらしかから今一度〈日本語ロック〉ルネッサンスが起こる予兆を感じる。

台風クラブの2017年のシングル“相棒”
 
バレーボウイズの2017年のライヴ映像
 
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