INTERVIEW

ペンギン・カフェ『The Imperfect Sea』 ダンス、アンビエント方面へと大胆に舵を切った新作をErased Tapesよりリリース

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  • 2017.08.31
写真:石田昌隆、衣装:Herr von Eden

ダンス、アンビエント方面へと大胆に舵を切った新作をErased Tapesよりリリース

 ペンギン・カフェというアンサンブルを紹介する際、「80年代に一世を風靡したペンギン・カフェ・オーケストラ(PCO)の遺伝子を受け継ぐ」という枕詞は、もう不要かもしれない。このたびリリースされた3rdアルバム『The Imperfect Sea』は、そう思わせるほどに新たな方向へと大胆に舵を切った作品となっている。それはポスト・クラシカル・シーンの中心的なレーベルであるErased Tapes Recordsからのリリースである点からも明らかだ。リーダーのアーサー・ジェフスと、ヴァイオリニストのダレン・ベリーに話を聞いた。

PENGUIN CAFE The Imperfect Sea Erased Tapes/プランクトン(2017)

 「今作では新境地を開拓したいっていう気持ちが強くあった。じつは2014年に前作の活動が一段落したあと、1年ぐらい休止期間があったんだ。その間に一旦すべてを白紙に戻して、何もないところからはじめたことで、新しい風景、進むべき方向性が見えてきたように思う。Erased Tapesからリリースしたことでも、“今回はこっちへ行くよ”っていう意思表示ができたんじゃないかな。新しいお客さんとの出会いは、すごくエキサイティングだよ」(アーサー)

 「それが、このアルバムの肝なんじゃない?」(ダレン)

 冒頭の《Ricercar》を聴いた途端、思わず身体が動き出してしまうようなダンサブルなサウンドに驚く方も多いことだろう。

 「Ricercar(リチェルカーレ)というのはクラシックの古い音楽用語なんだけれど、クラシックには主題(テーマ)があって、それが途中でふっと隠れて、最後にまた現れるというような作品が多くあるんだ。僕らの音楽もそれに通じるところがあるなと思って。つまりダンスやアンビエントといった今作のテーマを、最初の曲で提示しているというわけさ」(アーサー)

 クラフトワークやシミアン・モバイル・ディスコのカヴァーにも挑戦した今作は、彼らいわく「アコースティック楽器によるエレクトロニック・ミュージックへのトリビュート」なのだという。

 「ブライアン・イーノ、ロバート・フリップ、クラフトワーク……70年代の、実験的なんだけれども、どこか軽やかで楽観性がある音楽に惹かれるね」(アーサー)

 「2年くらい前にコーネリアスとコラボしたのが、僕らとエレクトロニック・ミュージックとのはじめての接点だったんじゃない?」(ダレン)

 「ああ、そうだね。ただ、僕らがエレクトロニックなことをやるにしても、あくまでアコースティックな楽器で演奏するという部分は変わらないから、ある意味、エレクトロニックな世界にペンギンのかぶりものをしたまま入っていくようなものだけど(笑)」(アーサー)

 「もともとシンセサイザーっていうのは、アコースティック楽器の音を再現しよう、生音に近づけようと発達してきたものなのに、こっちは逆にアコースティック楽器でエレクトロニックな音を再現しようとしているんだから、なんだかおかしいよね(笑)」(ダレン)

 ビートを意識したダンサブルな曲がある一方で、ドローンが鳴り響くアンビエントな曲も。あらゆるフィールドで活躍するスーパー・プレイヤーが集結したペンギン・カフェは、音楽的な引き出しの数も半端ではない。

 「《Protection》という曲は、ここで小節が終わるという最後の音が、そのまま次の小節の頭の音になっているので、次へ次へと転がるように繰り返しながら進んでいく。PCOの《Perpetuum Mobile》を思い起こさせるような拍子の取り方だよね。そうかと思えば《Half Certainty》や《Now Nothing(Rock Music)》のように、ひと呼吸置いて躊躇うような曲もある。結果的に、アルバム全体の中でいろいろな表情が出せたんじゃないかな」(アーサー)

 「《Rescue》には一曲の中にアンビエントとダンスというふたつの要素が入っているけど、普通のポップスにおける曲作りでは、なかなかそこまでやる時間と余裕がないんだ。“2分35秒の尺の中ですべてをやりなさい”なんて言われても無理だからね。でも、僕らはそれをやる。1曲が7分になろうが10分になろうが、恐れずに曲作りをすることで可能になる音楽のジャーニーっていうものがあると思う。それが叶うのがペンギン・カフェなんだ」(ダレン)

 この夏、ペンギンたちが案内してくれる新たなサウンドスケープに身を委ねたい。

 


LIVE INFORMATION

ペンギン・カフェ来日公演 2017
○10/5(木)19:30開演 会場:渋谷クラブクアトロ
○10/7(土)17:15開演 会場:すみだトリフォニーホール 大ホール
スペシャル・ゲスト:やくしまるえつこ/永井聖一/山口元輝
○10/9(月・祝)15:00開演 会場:まつもと市民芸術館 主ホール
スペシャル・ゲスト:大貫妙子
○10/10(火)19:30開演 会場:梅田クラブクアトロ

plankton.co.jp/penguin/

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