押し付けられたことはやりたくない! さまざまな動きを経て選んだ自身の表現手段は〈ラップ〉。改めましてのワンマイク、その第1弾のコンセプトは〈吉田凜音〉!!

 術ノ穴を主宰するFragmentのバックアップのもと、今年3月にRINNE HIPとしてEP『裏原ンウェイ.ep』をリリース。4月には西寺郷太と村田シゲによるプロデュースで、自身はヴォーカルとして参加するバンド=マジペパでのアルバム『テル・ディスコ』を発表した吉田凜音。そういったオルター・エゴやグループ作品の先で、本名の吉田凜音としてのミニ・アルバム『STAY FOOL!!』が到着した。

吉田凜音 STAY FOOL!! Colourful(2017)

 「ひとつひとつ(のプロジェクト)を楽しんでいるので、リリースが多いことは全然苦ではないですね。ただ、今回は本名の吉田凜音としてリリースするので、私が〈違う〉と思ったモノはみんなに発信したくないし、大人から〈これをやれ〉とか、押し付けられたことはやりたくなかった。だから、より〈自分〉が出た作品になったと思います」。

 そんな新作において、自身を表現するために選ばれた手法は〈ラップ〉を中心としたもの。デビュー当時の彼女の活動はいわゆる〈歌〉をベースとしていたが、今回ラップがフィーチャーされていることは、現在のアーティスト性を考えるうえでの鍵となるだろう。

 「ただ、ラップに関しては徹底的に練習をしてないんですよ(笑)。それよりも、聴いた時に直感的に〈こう歌うんだ〉って感じたことを大切にしてます。歌の場合は歌い方を細かく考えるんですけど、ラップはそれよりもノリや自分の気持ち良さ、体感をそのまま形にするほうがいいのかなって。だから他のラップ作品もあまり聴かないようにしてますね。ラップは〈自分で発信すること〉が大事だなと思ってるので、他からの影響をあまり受けたくない。いろんなラップを聴いて、〈良いな〉と思ったら自然と真似しちゃうと思うし、それで自分の良さがなくなってしまうこともあるのかなとも思うんで、意識的に聴かないようにしてます」。

 そうした意識で「〈吉田凜音はこうだぞ〉っていうコンセプトのアルバム」として完成された『STAY FOOL!!』。「〈バカやってようぜ〉って大人の背中を押す、ラップでガツガツいく曲」でCMソングになってもいる表題曲や、彼女をラップの世界に引き込んだE TICKET PRODUCTIONの制作による“パーティーアップ”をはじめ、アグレッシヴで歯切れのいい、パンチのあるラップを聴かせるナンバーがまず印象に残る。しかし、そんな“りんねラップ”からの流れにある楽曲と同時に、バクバクドキンのYUIが作詞を手掛けた“サイダー”での柔らかなフロウや、作詞にkiki vivi lily、作曲にケンモチヒデフミ、編曲にAutomaticという現在の日本のシーンで大きな注目を集める俊英が集った“RADIO GIRL”における最新型のビート上ではやや後ろノリでのアプローチを見せたりするなど、ラップのヴァリエーションによって曲ごとの心情を表現している点も興味深い。

 「同世代では出せない〈強い吉田凜音〉はもちろんなんですが、それだけじゃない部分も出したくて。だから、女性の共感を得られるような可愛らしい曲や、“HELLO ALONE”のような歌を中心にしたしっとりしたバラードも形にしたかったし、私のいいとこ取りの内容になってると思いますね。リリックは……自分で考えたりもするんですけど、その前に日本語を勉強しなきゃって(笑)。女の子の目線で書いてみたいですね。〈女の子もこんだけ大変なんだぜ!〉みたいな(笑)」。

 ライヴの際の観客の反応にもラップのおもしろさを見い出しているという彼女。今作を送り出した後にはワンマン公演〈it's rinne time~vol.01~〉も開催する。

 「イヴェントのタイトル通り、吉田凜音の新たな一歩になると思いますね。ライヴは自分のアーティスト活動の中心だと思うし、バック・ダンサーの4人と私で、一体感で見せるステージにしたいです」。

吉田凜音の作品を一部紹介。