(c)こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会
 

第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞!!
のんが主演を務めた話題の映画が遂にBlu-ray&DVDで登場する

 1944年2月、広島・呉で海軍勤務の文官・北條周作の妻となった18歳のすず。本作は、戦時下の困難の中、工夫を凝らして豊かに生きる彼女の姿を描いた物語である。

 封切り日の公開館数は63館という小規模だったにも関わらず、興行成績で初登場10位にランクイン。2週目以降も右肩上がりで興行収入と動員数を増やし続け、最終的には累計動員数200万人、興行収入26億円を突破。ミニシアター系の映画として超異例の大ヒットを記録している。

 メガホンを取ったのは、「マイマイ新子と千年の魔法」で異例の断続的ロングラン上映を記録した片渕須直。原作・こうの史代とNHK「花は咲く」アニメ版以来となるタッグを結成し、主人公のすず役には片渕監督が「ほかには考えられない」と絶賛したのんが抜擢されている。他にも実力派のキャストに囲まれて完成したすずの物語。また、クラウドファンディングに3,971名のサポーターが参加し、3900万円を超える支援が集まったことも話題になった。「この映画が観たい」という、日本中の想いが形になった珠玉のアニメーション―必見である。

 


のんさんインタビュー

――出演が決定したとお聞きになった際のお気持ちを教えてください。

「この作品のオーディションのお話をいただいたとき、原作とパイロット版を見て『絶対に自分がやりたい!』と思いました。出演が決まった時はとても嬉しかったです」

――「すずさん」というキャラクターを作り上げていく上で、片渕須直監督とはどのようなやりとりをされましたか。

「スタッフを通じて監督と何度もやりとりをさせていただきました。監督から答えをいただいて、そこからまた湧いてくる疑問もぶつけて。すずさんは、一見ぼーっとしていて受け身のように見えるんですけど、力強さのある人だと思いました。自分の意思をちゃんと持っていて、それに従っている強い女性。そういうイメージをベースにして、監督とやりとりしながらすずさんを作っていきました」

――台本を読んだ時に疑問に感じたことを監督に質問されたと伺っています。どのようなシーンについてお聞きになりましたか。

「周作さんに家から閉め出された、水原さんとのシーンなどですね。あのシーンは今までのすずさんからは想像できない部分があって、自分の中でうまく理解できなかったんです。でも監督から『ふたりは小さいときから一緒に育ってきた。その頃は水原さんの方がすずさんよりも身長が低くて、すずさんは水原さんを弟みたいに扱っていた、というこうの先生の裏設定がある』と聞いて、納得できました。家族や兄弟のような繋がりを感じているから、膝枕や一緒に布団に入って暖まることに違和感がないんだなと思えたんです。でも次は、そのシーンにある『うちはこういう日を待ちよった気がする』という台詞について、家族や兄弟みたいな気持ちなのにこの台詞は……と困りました。ちょっと生々しいシーンなので、ドキっとする感じを表現しなきゃいけないのかなと悩んでいたら、監督が『この台詞は周作さんにも怒りがあるけど、水原さんにも拒絶する声色で言ってほしい』と言ってくれたので、やっと腑に落ちました」

――すずさんを演じる上で大切にしたことなどがあれば教えてください。

「監督から『すずさんの魅力はお茶目でユーモアがあるところだから、そこを大事にしてほしい』と言われていたので、おとぼけな面白いシーンはチャーミングに見えるように頑張りました。そういう一面とは逆に、終戦の日にすごく怒りをあらわにするシーンがあるんですが、すずさんはこんなに怒りを抱えていたのかとびっくりしたんです。すずさんは、やわらかい穏やかな振る舞いながらも、力強い女性だと意識して演じました」

――アフレコ現場で印象に残っていることがあれば教えてください。

「監督の誕生日の8月10日にアフレコ日が重なったので、一緒にケーキを食べて誕生日をお祝いしました。あと、私の誕生日をちょっと過ぎた頃にもアフレコ日があって、浦谷(千恵)さん(監督補・画面構成)がすずさんのイラストを描いてプレゼントしてくださったんです。描き下ろしのイラストですごく嬉しかったですね」

――完成した映画をご覧になって感じたことを教えてください。

「本編は素晴らしいけど、『自分がもっとこうしておけばよかった』と、観た直後反省ばかりしていました。試写会の時、隣の席がこうの史代先生だったので、とても緊張しました。視界の端に見えるこうの先生の動きがとても気になってしまって。こうの先生が座り直したりちょっと動いたりするだけで、『今のシーンはこうすればよかったかな』『ダメだったかな』って(笑)。最初はこうの先生や監督たちの後ろの席だったんですけど、真木(太郎)プロデューサーが『のんちゃん、こっちのほうがいいんじゃないの?』って言うから……(笑)。でも、こうの先生から『原作よりも明るいすずさん! 素敵になりました』と言っていただけたので、ほっとしました」

――本作はアニメーション映画初主演作となりました。アニメーション映画のここが魅力的!とご自身が思ったことがあれば教えてください。

「時限爆弾が爆発したあとに画面が真っ暗になって火花みたいにパチパチと飛んで、すずさんの描いた絵みたいな昔の記憶が流れるシーンなど、直接的ではない表現だからこそダイレクトに胸に響いてくる、これはアニメーションならではの凄さだと思いました。お芝居に関しては、声だけで表現しなければいけないのですごく難しかったです。実写だと、身体を動かしたりその時々に作られるテンポや間によって動くので、声だけのときに比べてナチュラルにセリフが出てくる気がします。ただ、私は他のキャストのみなさんが先に入れてくれた声を聞きながら『こうやって表現するんだな』とか『息の音はこういうふうに入れるんだな』って勉強しながらできました。キャストの中で一番最初に声を入れている細谷さん(周作役)は、すずさんの声を私がやるということすら知らされていない状態で収録されて大変だったと聞きました。それなのに、あんなに素敵に演じられるという事に感動しました。私は周作さんの声を聞きながら収録出来て本当にありがたかったです」

――公開初日からの累計動員数が200万人を突破し、世界各地での上映も予定されるほどのヒット作となりました。この作品はご自身にとってどのような作品となりましたか。

「これからも役者をやっていく上で、とても特別な作品に出会えたと思っています。一生残っていく作品です。作品自体の素晴らしさはもちろん、作り手側と観てくださる方の『たくさんの人に観てもらいたい!』という熱量や気持ちを持った観客の方たちが、宣伝してくださって、盛り上がっていった作品だったので、そこが素敵だったなと思います」

――9月15日に発売となるブルーレイ&DVDの特典にはご自身のインタビュー映像が収録されます。インタビューの見どころは?

「話しているうちにいろいろな記憶が呼び起こされて、今までの宣伝活動ではお話していないようなことをたくさん話しました。自分が疑問に思っていたシーンについて、監督から聞いた貴重なお話などもあります。きっと初めて聞くお話が盛り込まれているのでお楽しみいただけたらと思います」

――発売を楽しみにしているファンの皆様、これから作品を観る方たちへメッセージをお願いします。

「『この世界の片隅に』は観れば観るほど発見があるので、何度も観ていただきたいです。特典のインタビューのあとに本編を観ると、また違った発見があると思います。これを買えば10回でも20回でも好きなだけ観られますので、ぜひお手元に置いてください!」