初の全曲オリジナル作品で表現者として次のステージへ

 ピアニスト、作編曲家、俳優と近年ますます活動の場を広げている清塚信也。新作『For Tomorrow』は、人気ドラマや映画のために作曲した音楽や、盟友高井羅人との連弾曲、書き下ろしの新曲を収めた一枚。これまでもユニークなコンセプトのアルバムを次々リリースしてきた清塚だが、全曲オリジナルは初めてだという。

清塚信也 For Tomorrow ユニバーサル(2017)

 「前作までは、どこかで“クラシックも入れなきゃ”と思っていた部分があったのかもしれません。というのも、僕は音楽をするうえで“自分の立ち位置”がすごく重要だと思っていて、“自分がそれを弾く資格があるか”ということを突き詰めて考えます。やはりクラシックの世界に身を置く者としては、自分の曲を弾くことで、ベートーヴェンやショパンといった大作曲家と肩を並べているつもりかと、驕っていると受け取られる可能性もあります。曲が良いとか悪いとか以前に、果たして自分が今、オリジナルを弾く必然性があるのか。そう考えたとき、今回のアルバムでようやく自分なりに、その答えを見出すことができたのかなと思います。大きな一歩ですね」

 清塚が音楽監修した2015年放送のTBS系金曜ドラマ「コウノドリ」(主演:綾野剛)は、今年10月から続編となる新シリーズがスタート。このアルバムには2015年と2017年のメインテーマが収められている。

 「主人公の鴻鳥サクラは産婦人科医であり、ベイビーと名乗るピアニストでもあるのですが、前作で彼が弾くピアノは、自分の思いの投影なんですね。孤児として育った過去と向き合い、清算するためにピアノを弾いている。それから2年後の今作では、人間として大きく成長したサクラが、自分以外の人のことを思ってピアノが弾けるようになったという心境の違いを、曲で表現したいと考えました。『新宿スワン』のように、映像に沿う形で音楽をつける劇伴とは違い、『コウノドリ』は主人公が自分の言葉としてピアノを弾くので、音楽にセリフとしての役割があります。そういう意味では、作曲は役作りに近い作業でした」

 書き下ろしの新曲《good morning》《ikari_no_tomoshibi》では、これまでにない新境地も。

 「ここ数年、ノイズとか環境音といったものが本当に好きになって、家でもそればかり聴いているんですよ。たとえばマイクに風が当たるダダダダーッていう音や、ラジオのチューニングが合っていないときの音なんかも、捉え方ひとつで美しく感じる瞬間がある。ノイズと美しい音って紙一重ですよね。そういった要素を今回、ミニマルっぽいピアノと電子音で新曲に取り入れてみました。無機的な美というのかな、ずっと表現してみたかった世界観です」

 


LIVE INFORMATION

清塚信也コンサートツアー2018 For Tomorrow
○1/27(土)13:00開演 大阪 ・いずみホール
○2/10(土)13:30開演 香川 ・高松テルサ
○3/3(土)14:00開演 仙台・日立システムズホール仙台コンサートホール
○3/21(水・祝)13:00開演 福岡・FFGホール
○3/23(金) 13:30・18:30開演(2回公演)名古屋・しらかわホール
○3/25(日)13:00開演 横浜・はまぎんホールヴィアマーレ
○4/13(金)14:00・18:30開演(2回公演)札幌・ 札幌コンサートホールKitara小ホール
○4/27(金) 19:00開演 東京・東京オペラシティ コンサートホール
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