現代とクラシックをつなぐ~自分の立ち位置からルーツへのリスペクトをこめて
最近の傾向として、演奏家がクラシックをもっと広めたいと発言し、そこからクラシカル・ソウルとか、クラシカルDJといった言葉が発信されている。清塚信也は、作曲家としても活躍するピアニスト。その彼もクラシックを広めたいとの思いから、自身のルーツと真剣に対峙したアルバム『connect』を制作した。
「もともとクラシックを広めていきたいと、いろいろ活動するなかで、周囲の反応に変化が見えてきた。それらを通して、現代とクラシックをつなぐ、コネクトする役割が自分の立ち位置になりつつあると感じるなかで、僕のルーツを聴いてもらいたいと思いました」
アルバムは、クラシック的な発想の作品集とかではなく、編成がとても特徴的。バッハの『イギリス組曲第3番ト短調』から始まり、モーツァルトの『ピアノソナタ第14番ハ短調』、ベートーヴェンの『ピアノソナタ第14番《月光》』と続く。
「クラシックを語るうえで、順を追って紹介したくて、音楽の父であるバッハ、次に天才ともて囃されたモーツァルト、さらに音楽の自由な表現を切り拓いたベートーヴェンを続けて演奏することで、時代の流れを知ってもらいたかった。また、僕自身が彼らの楽曲にコネクトする魅力を感じているので、現代人をクラシックの時代にタイムトリップさせる“コネクト”と、作曲家を現代にタイムトリップさせる“コネクト”の2パターンを想定しながらこの企画を練りました」
彼の話を聞いていると、映像が浮かんでくる。たとえば、バッハがこの世に舞い降りて、現代のピアノで作曲する姿とか。作曲家への思いも熱く語ってくれた。
「バッハの時代の鍵盤楽器は、強弱もつかなければ、レガートも弾けない。現在バッハに取り組む場合、彼へのリスペクトとして音を制御しながら弾いたりする。でも、僕が試みたかったのはグランドピアノの機能をふんだんに使って弾いたらどうなるか。現代版バッハの解釈を聴いていただきたいと思った。本人による解釈が不明なので、その不確かな要素がロマンであり、おもしろさでも。また、モーツァルトは、天真爛漫なイメージと異なり、この曲には哀しみや怒りが出ている。書いたとされる1778年は、ピアノフォルテが発明された頃で、フォルテとピアノのコントラストに初挑戦している。これは僕の推測だけれど、少年だったベートーヴェンは、この曲に影響を受けて、自身のバイブルにしていたのではないか。ここではモーツァルトとベートーヴェンのコネクトを考えました」
彼自身は「あわよくば」と前置きしたけれど、ぜひ『コネクト』をシリーズ化して、清塚信也のクラシックへのロマンをもっと伝えてもらいたいと思う。
LIVE INFORMATION
清塚信也 コンサートツアー2019 connect
○1/26(土)愛知県芸術劇場コンサートホール
○2/1(金)福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
○3/15(金)レクザムホール(香川県県民ホール)
○3/16(土)ザ・シンフォニーホール(大阪)
○29(金)長岡リリックホール・コンサートホール
○31(日)富山県教育文化会館
○4/13(土)日立システムズホール仙台コンサートホール
○14(日)サントリーホール(東京)
○17(水)幕別町百年記念ホール(北海道)
○18(木)旭川市大雪クリスタルホール
○19(金)札幌コンサートホールKitara小ホール
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