『生活日和』から1年を待たずして発表の7作目。日々の暮らしに大きく舵を切った前作の延長で過去と現在を行き来し、見慣れた光景や思いを歌詞にする作風は、ますます衒いなく人となりや生活を映す。その内容には、〈柴又といえば……〉な冒頭のイントロも蛇足なほど。いわばシンプルなトラック群にもその等身大がますます投影され、無理がない。うららかな季節のまばゆさが懐かしいつれづれを誘う“春の風”は、表題そのままの心地良い風が流れる曲。一方、O.N.O(THA BLUE HERB)のビートを背にした“かんおけ”は、例外なく誰の身にも訪れる死に視線を向けたものに。〈死ぬ前にどう生きてく/死ぬ前にこう生きてる〉と力強く思いを滲ませるラップは、変わらぬ日常に慎ましやかな幸せを見い出す本作のよりどころとして、続くCalm制作の“ゆりかご”と対になる。それらを経てこそ、ラスト“柴又の夕焼け”での〈身に余るものはいらない/ありふれたものが欲しい〉というラインがより身に迫ってくるだろう。