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ポスト・マローン『Beerbongs & Bentleys』 独自のセンスを誇る記録破りなラッパーが現代のロックスターたる理由

ポスト・マローン『Beerbongs & Bentleys』 独自のセンスを誇る記録破りなラッパーが現代のロックスターたる理由

数字の話しかされないシーンで本当の興奮はどこにある? 記録破りな21世紀式のロックスターは、この夏に大きな記憶を残してくれるはずだ!

独自のスタイルでの登場

 肩下あたりまで伸びたロングヘアに腕先から顔面にまで夥しい数のタトゥーを刻み、たっぷりと周囲に髭を蓄えた口元からはグリルがチラリ、というインパクトのある出で立ちでありながら、そのルックスからは想像のつかぬマイルドな声を武器に、歌とラップの両刀を器用に使い分けてヒット曲を連発。ついに今夏には〈フジロック〉での来日も決まった、現在もっともイケてるラッパーのひとりがポスト・マローンだ。

 2015年にSoundCloud上で発表した楽曲“White Iverson”のヴァイラル・ヒットにより、いわゆる〈サウンドクラウド・ラップ〉の急先鋒として注目を集めて一躍その名をシーン内に広め、メジャー契約までゲットしたマローン。95年生まれでNY出身の彼は、幼い頃から親の影響でヒップホップだけでなくロックやメタル、カントリーなどなど幅広い音楽に親しんで育ったという。音楽ゲーム「ギター・ヒーロー」に興じることでギターを覚えた彼は、ラッパーとして本格的に活動する以前にロック・バンドのメンバーとして活動していたというキャリアもある。そんな雑多な嗜好により、ヒップホップの手法をベースとしてラップを織り交ぜつつも、朗々と歌い上げるようなシンガーとしての面に重きを置いた独自のスタイルが形成されていったのだ。なかでも特徴的でもある物憂げな歌声はカントリーやフォークからの影響が強いのだろうか、フォークとトラップ・サウンドをミックスした〈トラップ・フォーク〉なんてワードでそのスタイルが称されることもあった。

 先述の“White Iverson”での突然のブレイクにより、数多くのアーティストから称賛され(批判も少々あり)、一躍シーンにおいてリマーカブルな存在となったマローンはグッチ・メインや50セントといった大物の楽曲に招かれ、カイリー・ジェンナーのバースデイ・パーティーでリンクしたカニエ・ウェスト『The Life Of Pablo』(2016年)収録の“Fade”にも参加。またジャスティン・ビーバーのツアーに同行したことも話題となり(ツアー中にはマローンによるジャスティンへの首絞め写真がゴシップ方面で話題に)、ジャスティンをフィーチャーした“Deja Vu”もリリース。それを先行カットとして、待望のファースト・アルバム『Stoney』をようやくリリースしたのは2016年の末。タイトル通りドラッギーでアンビエントなムードを漂わせたトラックがマローンの憂いを帯びた歌声を最大限に活かした内容で、ここからはメトロ・ブーミンらがプロデュースしたクエイヴォ(ミーゴス)客演の“Congratulations”もビッグ・ヒットし、アルバム自体も全米チャートTOP5入りを記録。“White Iverson”の一発屋と揶揄する層を一蹴した(その半年前に出したミックステープ『August 26』でもその人気はすでに証明済みだったが)。

 

現代的なセンスとスキル

 が、『Stoney』のリリースから間もない年の瀬には早くも次のアルバム発表を示唆して周囲を驚かせると、『Stoney』のプロモーションと並行して次作リリースへの期待を煽っていく。そして、2017年9月にはセカンド・アルバムからの先行シングルとなる、その名も“Rockstar”をリリース。故ジム・モリソン(ドアーズ)や故ボン・スコット(AC/DC)ら往年のロックスターをネームドロップした同曲には21サヴェージがフィーチャー(ソングライトに関与していたジョーイ・バッドアスとT・ペインの参加ヴァージョンも存在)されていた。絶妙なタイミングで絶妙な客演をチョイスする嗅覚の鋭さも流石だ。瞬く間に全米1位を獲得してストリーミング・サービスでの記録(当時)を塗り替えた同曲に続き、今年2月には第2弾カットとしてタイ・ダラー・サイン客演の“Psycho”をリリース。そんな状況下で届いたのが、このたび日本盤化も実現したセカンド・アルバム『Beerbongs & Bentleys』だ。

POST MALONE Beerbongs & Bentleys Republic/ユニバーサル(2018)

 先行シングルでの21サヴェージ、タイ・ダラー・サインだけでなく、スウェイ・リー(レイ・シュリマー)、ニッキー・ミナージュ、G・イージー、YGといったホットなゲストを招き入れた盤石の布陣を敷いた本作は、マローンのシンガーとしての側面をより強く押し出した感もあってジャンルのクロスオーヴァー化がさらに顕著に(“Over Now”には敬愛するモトリー・クルーのドラマー、トミー・リーも参加)。アルバム自体が全米1位を獲得するだけでなく、シングル・チャートのTOP20に9曲が同時ランクインするなど、チャートやストリーミング・サービスでの記録を次々と更新している。ランクを少し下げていた“Psycho”(同時期にリリースされたドレイク“God's Plan”の圧倒的な強さの前にチャート最高位2位で留まっていた)もついに首位を奪取し、マローンにとっては“Rockstar”に続く2曲目の全米No.1獲得となった。

 そんなマローンが長けているのは、一聴しただけで思わず口ずさんでしまうような印象的なフックをはじめ、メロディアスなラインを量産するセンスと技量だ。SNS時代の現在、短い時間でキャッチーな印象を残し、フェスなどのライヴやクラブで合唱できるような、覚えやすく歌いやすいフックを作ることが楽曲をヒットへ導く鍵でもあるのは言うまでもない。そういったスキルも多様なジャンルの音楽を吸収することで育まれたものなのかもしれない。

 さらにアコースティック・ギターをバックに歌い上げたりギターのフレーズをトラックに採り入れるだけに留まらず、ライヴでもギターを携えてパフォーマンス(時に破壊)し、ニルヴァーナやグリーン・デイなどのカヴァーを披露することも。そのように自分の好きなものを好き勝手に詰め込んだ表現方法がいかにもイマドキの若者といった感じか。そのように特異なスタイルと急速な成功によって彼個人の行動や発言にも注目が集まり、ヒップホップを揶揄するようなコメントやNワードを使用したブレイク前の映像が発掘されるなどして炎上することもしばしば。作品以外のところでも話題に事欠かないあたり、まさにかつてのロックスター的な存在にマローンがなりつつあるということなのだろう。

『Beerbongs & Bentleys』に参加したアーティストの作品を一部紹介。