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クリスティーナ・アギレラ『Liberation』 カニエ・ウェストの力も借り、〈なぜ歌うのか?〉を突き詰めた5年ぶりの新作

クリスティーナ・アギレラ『Liberation』 カニエ・ウェストの力も借り、〈なぜ歌うのか?〉を突き詰めた5年ぶりの新作

Get Mine, Get Yours
しばらく歌手業から離れていたクリスティーナ・アギレラが、メイクを落とし、素の自分を解放して高らかに歌い上げる。真実と正義を求める人たちにエールを送り、抑圧されてきた弱者を癒す魂の音楽――この声で世界はきっと変わる!

CHRISTINA AGUILERA Liberation RCA/ソニー(2018)

 

〈なぜ歌うのか?〉を突き詰めた渾身の一作

 前作『Lotus』から6年ぶり。女優やオーディション番組のコーチにも挑戦するなかで、〈やっぱり私は歌いたい! 歌こそ私の生きる目的だ!〉、そう確信したというクリスティーナ・アギレラ。一発奮起のこのニュー・アルバム『Liberation』にはカニエ・ウェスト、マイク・ディーン、アンダーソン・パークらUSアーバン界の大物プロデューサーや、MNEK、ジュリア・マイケルズら新進の才能が裏方としてズラリ。〈新しいサウンドを開拓してやる!〉といった野心が隅々にまで漲っている。ソウルやゴスペル、ロックにダンスホールを呑み込み、ゴールドリンクとはジャジーなR&Bポップ“Like I Do”、デミ・ロヴァートとは〈#MeToo〉賛同歌“Fall In Line”をデュエット。もちろんパンチの効いたビッグ・ヴォイスも健在だが、ソフトな〈引き〉の素晴らしさに驚かされる。XNDAがフィーチャーされた“Pipe”では吐息交じりのシルキーなヴォーカルを披露し、SZAやケラーニとも共鳴。煌びやかなエンタメ劇場での上から目線な彼女ではなく、ここにいるのはメッセージ性の高い真摯な歌で勝負するスッピンの彼女。〈歌えるから歌う〉のではなく、〈なぜ私は歌うのか?〉を突き詰めた渾身のアルバムだ。 *村上ひさし

 

剥き出しのエモーションで聴かせるアルバム

 ソフト・フォーカスなヴォーカルが愛されがちな昨今のご時世ではちょっぴり異質に感じるくらい、とにかく序盤から歌が強い! カニエ・ウェストのサンプリング技が光る2品――マイケル・ジャクソンの同名曲を敷いてニュー・ソウルな気分を表現した“Maria”、T・ラ・ロック&ジャジー・ジェイ“It's Yours”使いのタイ・ダラー・サインと2チェインズ参加曲――は、DJプレミアと組んだ2006年作『Back To Basics』と地続きにある出来。ほかにもレニー・クラヴィッツばりの豪快なロックンロールや、アクの強いシェンシーアのDJイングにアドリブを交えて応戦するレゲエ・チューンなど、剥き出しのエモーションで容赦なくリスナーの心を揺さぶってきます。この聴き心地はアンドロイド宣言した前々作『Bionic』と前作『Lotus』には希薄だったもので、表題通り自身を解放したニュー・アルバム『Liberation』は、生々しい曲でこそクリスティーナ・アギレラの本領が発揮されることを実感できる一枚に。アンビエント・ポップにおける抑え気味のイマっぽい歌い方も、爆唱系ナンバーの間に入ることで抜群の輝きを放ち、ただただ凄いの一言。コンシャスなリリックにピンと来なくても大丈夫。シンガーとしての格の違いを見せつけた彼女に、きっとあなたも熱狂するはずです。 *山西絵美

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