INTERVIEW

HALLCA『Aperitif e.p.』 ソロ・デビューを果たした元Especiaリーダーが語る、過去への想いと新しい始まり

HALLCA『Aperitif e.p.』 ソロ・デビューを果たした元Especiaリーダーが語る、過去への想いと新しい始まり

 茫漠たるエンドロールと共に昨年3月に解散したEspecia。ブラコン志向の意匠とヴェイパーウェイヴ的な遊び心の折衷が熱狂を生んだ大阪発グループ・アイドルとしての〈第1章〉、東京に移ってシックなアーバン作法のガールズ・トリオに変容した〈第2章〉——その音楽的な美意識と最終作『WIZARD』に垣間見えた進化の可能性を継承するのは、やはりリーダーを務めたこの人だった。再始動にあたってHALLCAと改名した冨永悠香が、満を持してキャリアの第3章へと踏み出したのだ。

 「Especiaが大好きすぎたから、解散してすぐそこに頼るのはちょっと違うかなって最初は思って、自分で動いてみたりもしてました。でも、たまたま年末ぐらいにPellyColoさんたちと飲む機会があって、そこで過去の良かったことや悪かったこと、そしてこれからやってみたいことを熱く語ってくれた時に、やっぱりこの人に曲を書いてもらって歌いたいなって強く思ったんです」。

 PellyColoといえば、Especiaの粋な音世界を創造してきたブレーンの一人。苦い経験もあればこそ、転機に際して過去への反動があっても不思議ではないが、「聴く音楽の好みも変わったし、知らなかった世界をいちばん教えてもらえた環境だった」と振り返る彼女からはこれまでの歩みへの自信と愛が感じられるし、そこにあるのは過去を丸ごと引き受ける強い覚悟だろう。

 「第1章、第2章を全部背負って再始動してくれたって受け取ってくださる方が凄くいて。第2章は賛否両論あった印象ですけど(笑)、私は全然否定的に思ってなくて、上京して凄く音楽を学べた時期だったし、そこで得たものもちゃんと次に持っていきたい気持ちがありました。あの頃は〈最終的に自分らでバンドができたらめっちゃいいよね〉って話もしてたんですけど、制作に関われていないもどかしさも少し感じてたんですよ。だから絶対にソロでは制作に関わりたいと思ってて、まず全部自分で作詞するのは決めてました。曲調はPellyColoを信用してるんですけど、自分のやりたい方向はハッキリあるので、上がってきた曲に〈ここのシンセの音を変えて〉とか直しを入れたり、歌入れ後に〈ここのコーラスちょっと厚めにしたいです〉とか、そういう判断は自分で全部してますね。100%納得したものを出せるのが嬉しいです」。

HALLCA Aperitif e.p WAVERIDGE(2018)

 そうやって完成したのが今回の『Aperitif e.p.』だ。最初に配信された“Diamond”では改めて自身を〈原石〉に位置づけ、アトモスフェリックなPellyColoのサウンドと浮遊感のある歌声の好相性を改めて伝える。一方、それとはまた違うストレートさで言葉と歌い口が生々しい関係を結んでいるのが、「自分のリアルな感情にいちばん近い」というグルーヴィーな逸曲“Dreamer”と、〈遠い記憶に何度も恋をする〉という率直な追憶を伸びやかに歌う“Milky Way”だ。

 「“Dreamer”はまさに潜ってた期間のモヤモヤした気持ち、また表に立って歌いたいけど、簡単にはいかないし……そういう葛藤を書きました。自分の思いをバンバン出すのって自己中かな?って思ってたんですけど、実際に配信してみたら聴いてくれた方が自分のことのように捉えてくれたのに感動して。“Milky Way”は年に一度しか会えない彦星と織姫を重ねた切ない歌詞なんですけど、その〈遠い記憶に何度も恋をする〉っていう気持ちから書きはじめたので……バレちゃってますね(笑)」。

 そんなPellyColoとの3曲に加え、ホーンの効いた生音のソウル・ナンバー“guilty pleasure”を手掛けたのは、Especia最初期からの楽曲提供やレコーディング・ディレクターも務めたRillsoulだ。ここでは彼の号令で解散ライヴ時のバンド・メンバーが集まって演奏しているのもトピックだろう。総じて「自分の声がいちばん魅力的に聴こえる音域も研究した」という試行錯誤の成果が表現力を増したヴォーカルに反映されていて、キーボードを弾きながら歌うスタイルへの挑戦も含め、新たな試みが彼女を宝石にしていくに違いない。

 「潜ってる1年半の間にいろんなグループやバンドが解散したり、いろんな人が出てくるのを客観的に見ることができて、〈この人みたいになりたい〉とか〈こういう感じで売れたい〉とかいうのが、逆にもう全部なくなって、〈私は私や〉っていう気持ちになれました。もちろん立ちたい場所とかもありますけど、いまは自分の納得する作品を1曲でも多く作りたい。そこから結果はついてくるかなって思うし、もっと制作に関わって〈自分の作品〉を残していくことがこれからの目標ですね」。

 かつての節目に登場した『DULCE』や『Mirage』がいずれも4曲入りのEPだったことを思えば、今作の持つ意味は言わずもがな。HALLCAの開く第3章、これはまだ文字通りの〈Aperitif〉に過ぎない。

 


HALLCA
本名・冨永悠香。93年生まれ、兵庫出身のヴォーカリスト。オーディション合格をきっかけにレッスンを積み、2012年6月1日にリーダーとしてEspecia結成に参加。大阪を拠点に2012年の初EP『DULCE』からコンスタントにリリースを重ねて全国区に支持を広げていく。2015年にメジャー・デビューし、2016年からは東京に拠点を移して活動を続けるも、2017年3月に解散。休止期間には限定的なライヴや舞台出演も経験する。その後はPellyColoと楽曲制作を進め、今年に入って、5月31日にHALLCA名義での再始動を発表。6月1日からSpotify先行で楽曲配信をスタートして話題を集めるなか、このたびソロでのファーストEP『Aperitif e.p』(WAVERIDGE)をリリースしたばかり。

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