ゴメン、待った? 生意気娘が大人の女性に成長し、みんなの前に戻ってきたよ! 身のこなしの軽さはそのままに、表現の深みを増し……3年間で何があったの?

私も変わったわ

 これがいわゆる〈化ける〉ってヤツなんだろうか。それとも単純に〈成長〉と解釈するべきなのか。シェール・ロイドのセカンド・アルバム『Sorry I’m Late』は、そういう嬉しい驚きに溢れた一枚だ。何しろオーディション番組出身者の盛衰は激しく、最初のアルバムこそ番組の勢いで好調にヒットしたとしても、2作目で多数が脱落。アーティストとしての運命が決まってしまうものだ。4年前のUK版「The X Factor」で、ワン・ダイレクションに次ぐ4位に入賞したことを機にデビューを果たしたシェールの場合も、初作『Sticks + Stones』(UK本国で2012年11月、日本では2012年10月にリリース)は地元のみならずUSでも大ヒットを博して順調にブレイクしており、まさに今作が正念場。「The X Factor」出演中は破天荒かつ少々生意気な言動で賛否両論を呼んだ彼女だけど、実は非常に繊細で思慮深い女性でもあり、セカンド・アルバムの重要性は十分に承知していたようで、それなりの心構えで取り組んだという。

 「着手した時の私は物凄くナーヴァスになっていたの。長い間、新しい音楽を人々に聴かせていなかったし、ファーストは17歳の時に作ったアルバムだけど、いまの私は20歳でしょ!? それってとても長い時間で、17歳から20歳の間に人間は凄く変わる。私も大きく変わったわ。成長したし、自分が成長したぶん、音楽も進化させたかった。そんなわけで、結構心に重くのしかかっていたのよ」。

CHER LLOYD 『Sorry I’m Late』 Syco/Epic/ソニー(2014)

 そこでシェールは、ベストな環境を整えることからスタート。「私に野心をたっぷり与えてくれた」というUSに活動拠点を移して、音楽的主導権をみずから握り、前作にも参加した信頼するスタッフをふたたび起用すると同時に、新しい人脈も開拓していく。クレジットを見ると、サヴァン・コテチャやシェルバック、マックス・マーティン、カール・フォーク&ラミ・ヤコブといったお馴染みのポップ職人たちの名前が並ぶが、おもしろいところではゴシップのベス・ディットーとも1曲を共作していることだろうか。

 「どんな結果になるのか全然見当が付かなかったんだけど、ベスは人間としても素敵な人で周囲に素晴らしいエネルギーを与えてくれて、実り多きセッションだったわ」と彼女は振り返る。