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◆野村アリマサ

YUMA HARA THE DAYS UPLIFT JAZZ/Soul Fellowship(2018)

さだまさしが腕前を買うギタリストとしてのテクニックもさることながら、プロデューサーとしてのスケールの大きさと図抜けたセンスを感じさせてくれた若き才能のデビュー作。うだるような暑さだった2018年の夏、清涼感が溢れ出す冒頭に何度、体感温度を下げてもらったことか。改めて聴き返してみてもいまの時期の乾いた空気によく染み渡るし、愛聴盤というのは季節を選ばないものだなと。T-GROOVEと行ったMikikiでの対談もぜひご一読を。

 

◆林 剛

PETE ESCOVEDO Back To The Bay Esco(2018)

猛暑だった2018年の夏、ベイエリアの名ラテン・パーカッション奏者による70~80年代ソウルのカヴァー集は涼を取るためのBGMとして最多プレイした。娘のシーラ・Eもコンガを叩いたラテン・ジャズな演奏をバックに、ボビー・コールドウェルやハワード・ヒューイットらが歌うひたすら心地良いだけの名曲集だが、意味や意義を見い出さなくていい音楽は心底楽しい。MVPはアル・グリーン“Let's Stay Together”など3曲を歌ったサイ・スミス。夏の声にも冬の声にもなれる彼女の活躍も地味に凄かった。

 

◆人與拓馬

BRUNO MAJOR A Song For Every Moon July/インパートメント(2018)

2018年は俺的に豊作だった。くるり、カネコアヤノ、折坂悠太、Mrツイン・シスターなどなど、お気に入り盤を挙げたらキリがない。そんななかから悩みに悩んでチョイスした〈+1〉は、単独来日も果たしたブルーノ・メジャーのこのアルバム。サム・スミスが前座に指名したことも相まってその名を大きく広めた彼の、ジャズの成分をたっぷり含んだギター・プレイと甘い歌声に同性ながら蕩けたものだ。いまからでも遅くない。あなたの夜のお供にぜひ。

 

◆Masso 187um

LIL' KEKE Slfmade II Slfmade 713(2018)

トラヴィス・スコット『Astroworld』の大ヒットでふたたび注目が集まるテキサスのシーン!と息巻いた好きモンな方々も多いのではないでしょうか。そんな好きモンを狂喜させた川崎CLUB CITTA'でのイヴェント〈G'D UP FESTIVAL〉(ビガップ、II TIGHT MUSIC!)は、個人的な2018年のハイライトのひとつ。特にトリを飾った首領リル・キキの、聴きたい曲をほとんど演ってくれたライヴは最高でした!

 

◆宮本英夫

Diggy-MO' DX:10th Anniversary All This Time 2008-2018 ソニー(2018)

SOUL'd OUTを知らない世代にも届けたいソロ10周年ベスト。特に2014年以降はR&B、ジャズ、EDM、ロック、ソウルなど豊かな素材を時代の半歩先を行く刺激的なポップ・チューンへ再構築するサウンドメイカーとして、驚異の高速フロウを楽々と決めるラッパーとして、人生をサヴァイヴするための知恵を語る思想家として、ひとり次元の違うことをやっている。初回限定盤のDisc-3で聴ける弦楽交響曲と化した女王蜂“HALF”のリミックスはまさに天才の仕業だった。

 

◆村尾泰郎

近田春夫 超冗談だから ビクター(2018)

まさに電撃的復活! ソロ名義としては38年ぶりという空白も何のその。本人は一曲も書き下ろしていないのに、ロック、ディスコ、ラテンなど、さまざまな要素を歌謡曲というタレに漬け込んだ近田ワールドが全開だ。そして、驚くべきは衰えることのない艶やかな歌声。ヴィブラートの昂揚感に眩暈を覚えながら、毎回、気がついたら最後まで聴いてしまっていた。〈ひとりベストテン〉ならぬ〈ひとり紅白〉みたいなお祭り騒ぎのアルバム。

 

◆村上ひさし

SIMIAN MOBILE DISCO Murmurations Wichita/HOSTESS(2018)


SIMIAN MOBILE DISCO Murmurations Wichita *25
UKのエレクトロ・デュオが、女声合唱団のディープ・スロート・クワイアと組んだ野心作。フェイドイン/アウトを繰り返し、野鳥のように集団になってあちこちを駆け巡るコーラスと、それらを追い掛け回して絡みつく電子音。時にエキゾティックで、トライバルで、トリッピーで、幻想的。ビョークやリサ・ジェラルドが好みそうな秘境ムードに溢れているのも、旅好きの筆者としてはそそられまくりだった。バックパックを背負わずとも山岳民族と出会い、絶景を眺めた気分にさせてくれる贅沢な一枚。いや、どうせなら秘境まで行って聴きたいですが。

 

◆山口コージー

Chelip サマータイムシンデレラ doles U(2018)

モータウンなノリの“ソング・フォー・ユー”で軽やかに2018年のスタートを切った鳥取の2人組が、この最新シングルでは鶴の秋野温とタッグを組み、渇いたギターを全開にしたグルーヴ感覚溢れるバンド・サウンドに乗って新境地を開拓! AH(嗚呼)のりりかる*ことぱぉ製のカップリング“フラッシュバック”で披露した巻舌ヴォーカルも素晴らしく、少女から大人へと成長した彼女たちには本当にゾクゾクさせられたぜ! この勢いで2019年3月に行われる東京の初ワンマンも大成功すること間違いなし!

 

◆山口哲生

PALE WAVES My Mind Makes Noises Dirty Hit/HOSTESS(2018)

初聴はサブスクのプレイリスト。ポップでドリーミー、ちょっとした80sニューウェイヴ感、しかも美メロという、自分の(というか、おそらく日本人の多くが)好きな要素ばかりだったので、気になって動画を観たら、ヘザー・バロン・グレイシーのゴスメイクに完全に心を奪われ、このアルバムが出るまでシングルとEPを聴き倒してました。BBC、MTV、NMEなどから太鼓判を押されまくっていたという事実を後で知って納得。だって良いんだもの!

 

◆山口智男

BALLOND'OR Blue Liberation actwise(2018)

衝動をとことん追求したら、狂気じみた爆音のなかで持ち前のポップ・メロディーが際立った青・赤2部作の青盤。〈17歳の時、初めて組んだバンドで俺が求めていたのはこれだ!〉──バンドに挫折してから、〈こうなりたかった〉というかつての自分の願望を投影できるどうかが、アーティストや作品を評価する際の重要な基準になっている筆者にとって、そう思えたことはあまりにも大きい。ある意味で理想とも言えるバンドにまた会えるなんて、これほど嬉しいことがあるだろうか。