OPUS OF THE YEAR 2018
[特集]2018年の100枚+
例年通りor例年以上に素敵な音楽が多方面から届いた2018年――そんな充実の年を象徴するグッドなアルバム作品を、順位ナシの100枚で振り返ってみましょう!

★bounceの選ぶ2018年の100枚・前編
★bounceの選ぶ2018年の100枚・後編
★bounce編集部スタッフの選ぶ2018年の〈+10枚〉

 


ONE HUNDRED PLUS ONE
ライター陣の選ぶ2018年の〈+1枚〉

◆青木正之

KING COYA Tierra De King Coya ZZK(2018)

ニコラ・クルースの躍進を契機に、中南米のクンビアやフォルクローレ経由のスロウ・グルーヴを操るプロデューサー/DJたちがフロアで注目を集めている昨今。その道筋を切り拓いたアルゼンチンの至宝による9年ぶりのこのアルバムは、民族音楽とさまざまな電子音響が織り成す奇々怪々なグルーヴでブッ飛びまくり! 2018年は電化クンビアを世に知らしめたコンピ『ZZK Sound Vol.1 Cumbia Digital』から10年の節目でもあり、ことさら印象深い一枚に。

 

◆荒金良介

TURNSTILE Time & Space Roadrunner(2018)

人を喰ったようにシュールなMVもさることながら、ズバ抜けた音楽センスの高さで人気沸騰中のボルティモア発の5人組ハードコア・バンド。マッドボールやニュー・ファウンド・グローリーの対バンもこなす実力派だ。ロードランナー移籍第1弾の本作でも2分前後のショート・チューンを連発していて、どれも文句ナシのカッコ良さ。ほかにもコヒード・アンド・カンブリア、ゴースト、ターボネグロ、クイックサンド、オーソリティ・ゼロのアルバムが良かった。

 

◆池田謙司

THOMAS FEHLMANN Los Lagos Kompakt/OCTAVE(2018)

ラリー・ハードと迷いましたが、どちらもクラブ・ミュージック創世記から活動している大ヴェテランの傑作です。まあ、気分でこちらをピックアップ。〈ダブ・テクノ〉とか〈アンビエント〉とかのワードでは括りきれない含蓄のあるサウンドで、何より音が素晴らしく良いです。思わず背筋が伸びちゃうくらい、格の違いを見せつけられた作品でした。2019年はアフリカ勢の斬新な電子音、南米の緩いサイケ・グルーヴに期待したいです。

 

◆池谷瑛子

竹内まりや REQUEST: 30th Anniversary Edition ワーナー(2018)

ここ数年のフューチャー・ファンク流れでの海外評価をきっかけに聴き直し、2018年は活動40周年による盛り上がりもあって、本当に竹内まりやばかり聴いていました。なかでもアナログでリイシューされた本作は、あまりに家でかけすぎて幼稚園児の娘が“けんかをやめて”を口ずさむようになり、ふと〈そう言えばこれ、実家で自分の母親も聴いてたアルバムじゃん〉と思い出すに至り……。娘の嫁入り道具用にもう一枚買おうかな。

 

◆一ノ木裕之

NATALIA LAFOURCADE Musas: Un Homenaje Al Folclore Latinoamericano En Manos De Los Macorinos Vol. 2 ソニー(2018)

ナイアガラの『Apologia』、スティーネ・ヤンビンの『Fake Synthetic Music』、発掘系ではチャーリー・モローの『Toot! Too』やアラニス・オボムサウィンの『Bush Lady』などなど、本企画の趣旨に寄り沿うであろう〈+1〉な作品はいろいろあったけど、2018年は真っ当な表ベストに選ばれるべき&たぶん年間を通していちばん聴いたこの盤を。こういう方々のライヴが観られない日本ってやっぱりいつまで経っても極東だなあ。

 

◆稲村智行

VARIOUS ARTISTS Uncle Drew RCA/ソニー(2018)

ブラック・ムービーの活況ぶりを反映してか、嬉しいことに2018年は杏レラトの著書「ブラックムービー ガイド」も刊行。で、日本公開された作品のなかでも「アンクル・ドリュー」は一番エンタメ色が強く、NBAのスター・プレイヤーも出演し、観どころ満載だった。そしてこのサントラも、エイサップ・ロッキーやG・イージーら旬のアーティストによるフレッシュな曲が盛り込まれ、お得感たっぷりの好内容に。2019年早々にはカンヌ映画祭を制したスパイク・リーの最新作も公開が控えていて楽しみだ。

 

◆内本順一

山﨑彩音 METROPOLIS フォーライフ(2018)

スネイル・メイルやサッカー・マミーとの同時代(同世代)性も強く感じる、声と心の揺らぎのリアル。夢中でいたいから〈飽きたんだ〉と言葉にしたり、〈壊れそう〉なんて言いたくないからひっそり倒れたり。猛スピードで推移する感情に振り落とされそうになりながらも、山﨑彩音は言葉と歌でその瞬間を掴まえる。〈大好きなうた/大きな声で唄ってさ/生きているんだって感じる〉のは50代の僕だって一緒だから何度聴いてもグッときちゃったんだ。

 

◆金子厚武

乃木坂46 シンクロニシティ N46Div./ソニー(2018)

国民的なアイドルになるということは、社会を体現することとイコールだったりもする。この次のシングル“ジコチューで行こう!”と合わせた時に見える〈多様性のある社会は、個人の自由意思があってこそ作られる〉といったメッセージは、ceroの『POLY LIFE MULTI SOUL』ともシンクロしていた……なんて妄想を普段アイドルとの接点があまりない僕にさせるほど、〈乃木坂46スゲエ〉と思うことの多い一年でした。〈乃木中〉はおもしろい。

 

◆北爪啓之

CANDY OPERA 45 Revolutions Per Minute Firestation/BAD FEELING(2018)

2018年どころか、ここ10年のリイシュー盤でもっとも衝撃を受けた出会い。82年から10年ほど活動していたリヴァプールのバンドで、公式音源を一切残していないため当時のライヴ体験者しかほぼ存在を知らなかったと思われる。しかし、この初出の音源集にはプリファブ・スプラウトやアズテック・カメラと並べても遜色のない楽曲たちが詰まっているのだ。〈過去にはまだまだ物凄いお宝が眠っているかも〉というロマンを抱かせてくれた俺的〈+1〉。