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ブランディ・カーライル『By The Way, I Forgive You』 グラミー賞のノミネートで注目を集めるアメリカーナ歌手が日本デビュー

ブランディ・カーライル『By The Way, I Forgive You』 グラミー賞のノミネートで注目を集めるアメリカーナ歌手が日本デビュー

 まもなく授賞式が開催される第61回グラミー賞のキーワードは〈Diversity & Inclusion(多様性と包括性)〉。前回のグラミーでは〈#GrammysSoMale〉がTwitterのトレンドワード入りするなど、男性アーティストがノミネーションと受賞の大半を占めて物議を醸したが、今回は多様性に富むノミネーションと受賞にすべく、女性と有色人種の投票メンバーの割合を大幅に増やしている。そうしたなか主要3部門を含む計6部門にノミネートされたのが、ワシントン州レイヴンズデール出身のブランディ・カーライル。2005年にメジャー・デビューし、これまでに6枚のアルバムを発表してきたフォーク・ロック/オルタナ・カントリー系のシンガー・ソングライターだ。

 日本での知名度は低いものの、T・ボーン・バーネットのプロデュースで2007年にリリースした2作目『The Story』の表題曲が、TVドラマ「グレイズ・アナトミー」の挿入歌に選ばれてヒットしたので、彼女の歌を耳にしている人も少なくないはず。そのアルバムは時間をかけて評価を高め、2017年にはドリー・パートン、パール・ジャム、アデルらによってカヴァー集『Cover Stories』まで登場したほど。また、ブランディはレズビアンであることを公にし、2012年にパートナーと結婚して2人の養子を迎えてもいる。そんな彼女は今回のグラミー主要部門の候補に自身やジャネール・モネイ、レディ・ガガなど複数のLGBTQが含まれたことについて「すべてを意味している」と述べ、リンダ・ペリー、インディゴ・ガールズ、エルトン・ジョン、フレディ・マーキュリー、KD・ラング、ジョージ・マイケルら偉大なる先駆者たちに「感謝している」と続けた。ちなみにレディ・ガガは映画「アリー/スター誕生」のサントラ関連で5部門にノミネートされてブランディを追うかたちになっているのだが、その本編にブランディが出演しているというのもおもしろい。ロイ・オービソンのトリビュート演奏シーンでのシンガーが彼女だったのだ。

BRANDI CARLILE By The Way, I Forgive You Low Country Sound/Elektra/ワーナー(2018)

 ブランディ絡みでグラミー主要部門の候補に挙がっているのは、最優秀アルバム賞での『By The Way, I Forgive You』(本国では昨年2月にリリースされ、このたび晴れて日本盤化!)と、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞でのシングル“The Joke”。その“The Joke”は豊かな表現力でじっくり歌われる力強いバラードであり、MVを観ればわかる通り、まさしく今回のグラミーのキーワードのひとつである〈多様性〉がテーマになった一曲だ。彼女は同曲について「あるがままの自分を受け入れてほしいと思いつつ、そんな自分を自分でも受け入れようと必死にもがいている男の子たちや、いまだに半人前だとかリーダーシップがないなどと見下されている女の子たち、そして法に反しているだの価値がないだのと言われたことのある人たちに私は言いたい。私たちはすでに勝利を手にしているの。笑われるべきは、かりそめの権力を手にした人たち。愛はすでにこの世界を征しているのだから」とコメントしている。

 また憂いたっぷりの歌唱が印象的なカントリー調の6曲目“Fulton County Jane Doe”は、フルトン・カウンティで発見された身元不明の女性の遺体からその人の人生に思いを馳せるナンバー。さらに9曲目“Harder To Forgive”では〈忘れることによって許すことができる〉とも歌っている。このように『By The Way, I Forgive You』で披露された10曲は、痛みや葛藤を抱えながら生き辛い現代をサヴァイヴする人々に、愛と許しと希望を与えてくれるもの。オバマ元大統領のお気に入りリストにも入った“Every Time I Hear That Song”で始まる本作は、プロデューサーのひとりであるデイヴ・コブが言うように、「グレイトなソングライティングとグレイトなシンガーが好きな人のためのアルバム」なのだ。

 


ブランディ・カーライル
81年生まれ、ワシントン州出身のシンガー・ソングライター。8歳の頃から地元のステージで母親とジョニー・キャッシュなどのカヴァーを披露するようになり、15歳で本格的に作曲活動を始める。2000年にEP『Room For Me』を自主で発表し、2005年にコロムビアから『Brandi Carlile』でアルバム・デビュー。その後もコンスタントにリリースを重ね、ウィリー・ネルソンやデイヴ・マシューズ・バンドらの作品にも客演。2018年2月にエレクトラ移籍作となる6枚目のアルバム『By The Way, I Forgive You』(Low Country/Elektra/ワーナー)を発表。同作がグラミーの最優秀アルバム賞などにノミネートされて話題を集めるなか、2月6日にその日本盤がリリースされる。

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