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【西山瞳の鋼鉄のジャズ女】第15回 Mary's Blood、人間椅子、マノウォー、ラムシュタイン――最近聴いたHR/HM新譜

メタラーのジャズ・ピアニストがHR/HM愛を綴る大人気連載

クラシックとユーロ・ジャズからの影響をもとに国内外で活躍中のジャズ・ピアニスト、西山瞳。ジャズ界に身を置きながら、HR/HMをジャズ・カヴァーするプロジェクト・NHORHMでは4枚のアルバムをリリースし、ファンであるBABYMETALの音楽的な魅力を鋭く考察して界隈で支持を得るなど、メタル愛好家としても知られている彼女。〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉は、そんな西山さんに〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉という立ち位置からHR/HM愛とその魅力を綴っていただく連載です。第15回の今回は、西山さんがここ最近グッときたHR/HMの新譜を4作紹介してくれました! *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


 今回は、最近聴いた新譜をご紹介します。

 

マノウォー『The Final Battle I』

MANOWAR The Final Battle I Magic Circle Music(2019)

If you know Metal
you know MANOWAR.
If you know MANOWAR
you know Metal!

というメッセージを発して始まった〈The Final Battle World Tour〉を敢行中のマノウォーが、EP三部作の第一弾『The Final Battle I』を発表しました。マノウォーは、連載第5回に〈メタル・クールビズ・スタイル〉として写真だけ載せましたが、アメリカのパワー・メタル・バンドで、ヘヴィメタルのパワーワード&伝説製造メイカーです。

日本に来ることがあったら、一度ぐらいライヴを見てみたかったですが、ただでさえメタルのライヴ後は、繊細なアコースティック楽器の音を聴く聴力回復に少し時間がかかるのに、マノウォーなんか聴くのなら1週間ぐらい仕事を入れることができないかも(コンサートの爆音ギネス記録を作ったバンドです)。でも、マノウォリアー(=ファン)の熱さを見ていると、一度は体験してみたいですね。

このEPは、ツアーではもう売っていたようですが、6月14日に発売になりました。

曲は中高生バンドが耳コピーできるぐらいシンプルなんですが、気持ちの圧力と男気が普通の人間の5万倍みたいな音楽で、もうとにかく4曲目の“You Shall Die Before I Die”が頭を離れなくなってしまいました。これ、ベースのジョーイ・ディマイオがヴォーカルなんですが、何かすごくヤバいものを見た感じになっています。

私のメタル・ジャズ・カヴァー・プロジェクトNHORHMで、マノウォーの名曲“Kings Of Metal”をカヴァーしたのですが(2016年の〈II〉に収録)、敢えての全力のコンテンポラリー・アレンジにしたんですけど、“You Shall Die Before I Die”を聴いた後は、本当にすみませんでしたという気持ちでいっぱいです。I shall dieですよ。

 

ラムシュタイン『(タイトルなし)』

RAMMSTEIN (タイトルなし) ユニバーサル(2019)

ドイツを代表するバンド、ラムシュタインも10年ぶりの新譜が出ました。

白地にマッチ一本のジャケットが、実に不穏です。

ドイツ語なので何を歌っているのか言葉は全然わからないのに、暴力、死、セックスと、危険な匂いだけはむんむん感じます。ヘヴィなのに、クールなサウンドがビビッドに聴こえたりして、妙にスタイリッシュなんですよね。

私はメタル教養程度にしか追いかけていなかったのですが、女性ファンが非常に多い印象です。

新譜のオープニング・トラック“Deutschland”は、ミュージック・ビデオをぜひ観て頂きたい。いつもインパクトのあるMVでわれわれを圧倒してくれていたラムシュタインですが、さすが、圧巻の暴力的でファンタスティックなMVです。

“Radio”のサウンドも癖になります。

 

人間椅子『新青年』

人間椅子 新青年 徳間ジャパン(2019)

われらが人間椅子の30周年記念アルバム『新青年』も出ました。

実は私、一旦メタルから足を洗った20年ぐらい前、最後に行ったライヴが心斎橋・OSAKA MUSEでの人間椅子だったんですよ。

当時、私はプログレの感覚でおもしろいと思って、人間椅子を聴いていました。

数年前、雑誌「ヘドバン」のライヴ・イヴェントで、約20年ぶりに人間椅子のライヴを見たのですが、これが本当に楽しかった。

誤解を恐れずに言うと、以前と根本的にやっていることは変わらないのに、滅茶苦茶進化しているんですよね。熟練のステージングに、強力なロック魂、絶妙なポップさ、そして何よりオーディエンスとのコミュニケーションが素晴らしかった。当時から応援しているファンに加え若いファンも沢山いて、これだけヘヴィな音楽をしているのに終始老若男女が楽しめるライヴで、やり続けることの強さと自信をビシビシ感じて、滅茶苦茶格好良かったです。リスナーとしても、ミュージシャンとしても、感激しました。

新譜が出るたびに、また、20年分の個人的メタル・ブランク期間の分も少しずつ聴いてはいるんですが、人間椅子は本当に特異なバンドで、クラシックなハード・ロックの魂もあれば、プログレッシヴ・ロックの面からも、グルーヴのヘヴィさからヘヴィメタルの側面からも、文芸的な面からも、一直線ながら多面体なんですよね。

いろんな角度からリスナーがアプローチできる、怪人ならぬ怪バンド。今回のアルバム、全曲好きなんですけど、とりあえず今好きなのは5曲目の“巌窟王”かな。でも、聴いていくほど好きな曲が変わっていくんだろうなといまから思います。傑作です。

『新青年』収録曲“無情のスキャット”

 

Mary’s Blood『CONFESSiONS』

Mary’s Blood CONFESSiONS JAPAN RECORD(2019)

日本のガールズ・メタルを牽引するMary’s Blood、5枚目のアルバムです。

メアリーは、一言で言うとドスが効いていて好きです。技術やヴィジュアルを気持ちがガツーンと追い越してくる感じ、大阪出身の私のボキャブラリーだと〈いてまえ打線〉な感じですね。

今回のアルバム、オープニングからダークでクールなサウンドで、おおっ!と思いました。中盤からいつものノリの良い、ヘヴィだけどメアリーならではの明るさのサウンドも聴けますが、最後の曲でビシッと締めて、トータルのサウンドが非常に締まったコンセプチュアルなアルバムになっています。2曲目“Karma”と最後の“贖罪の鐘~Requiem for the victims~”が好きですね。

ギターのSAKIさんには、NHORHMの『New Heritage Of Real Heavy Metal 3』(2019年)でゲスト参加して頂きました。今年4月に開催したリリース記念ライヴでもゲスト参加して頂きましたが、初めてのジャズ・ライヴにも関わらず、素晴らしいパフォーマンスで。ギタリストとしてのポテンシャルの高さを、ビシビシとステージで感じさせてもらいました。SAKIさんとは、今年中にもう一度ライヴを予定していますので、発表をお楽しみに……!

『CONFESSiONS』収録曲“Labyrinth of the Abyss”
 
『CONFESSiONS』リリースに向けたMary's Bloodからのメッセージ

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシック・ピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパ・ジャズ・ファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラー・トリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。

自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグ・バンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズ・フェスティヴァルやイヴェント、ライヴハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。

 


LIVE INFORMATION

NHORHM
7月12日(金)横浜・DOLPHY 2nd 馬車道(045-319-4030)
西山瞳(ピアノ)、織原良次(フレットレス・ベース)、橋本学(ドラムス)
開場/開演:18:30/19:30
前売/当日:3,500円/3,800円
http://dolphy2nd-bashamichi.com/

西山瞳&小田朋美2台ピアノDUOコンサート アントゥシャーブラ
7月15日(祝・昼)愛知・カワイ名古屋 コンサートサロン ブーレ
出演:西山瞳(ピアノ)、小田朋美(ピアノ)
開場/開演:14:30/ 15:00
予約/当日:3,000円/3,500円/大学生2,000円/高校生以下1,000円
ご予約・お問い合わせはこちら:necojazz719@gmail.com
http://shop.kawai.jp/nagoya/floor/2f.html

安ヵ川大樹/西山瞳/maiko 『The Tree Of Life』リリース記念ライヴ
9月14日(土)奈良 ろくさろん(西山瞳、安ヵ川大樹デュオ)
9月15日(日・昼)大阪・枚方ブルーライツ
9月15日(日・夜)京都・ボンズロザリー
9月16日(祝・昼)兵庫・神戸甲南山手 ギャラリージング
9月21日(土・昼)東京・渋谷ホール
9月22日(日)長野・蔵のカフェレストラン清雅
9月23日(月)愛知・名古屋 スターアイズ
9月24日(火)静岡 ライフタイム
9月25日(水)神奈川・横浜 ドルフィー
http://blog.livedoor.jp/hitomipf79/archives/52464976.html

プレイリスト
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