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【西山瞳の鋼鉄のジャズ女】第16回 もう引き返せないところまできた! BABYMETAL横アリ公演をレポ

メタラーのジャズ・ピアニストがHR/HM愛を綴る大人気連載

クラシックとユーロ・ジャズからの影響をもとに国内外で活躍中のジャズ・ピアニスト、西山瞳。ジャズ界に身を置きながら、HR/HMをジャズ・カヴァーするプロジェクト・NHORHMでは4枚のアルバムをリリースするなど、メタル愛好家としても知られており、〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉は、そんな西山さんに〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉という立ち位置からHR/HM愛とその魅力を綴っていただく連載です。

今回は、西山さんもTwitterで予告されていましたが、そうです。新曲の公開とアルバムのリリース、新サポート・メンバーなど、ここのところはビッグ・ニュース続きなBABYMETAL回でお送りいたします! 6月28日開催の横浜アリーナ公演に足を運んだ西山さんが、溢れる感情をライヴ・レポート形式で文章にしたためてくれました。 *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


まず、いま私は少し困惑しています。
これまで女性アイドルはおろか、男性アイドルにも興味を持ったことがなかった私が、BABYMETALに関しては特別な感情を抱いてしまっていることに。
音楽に惚れ込んで追いかけたアーティストはいろいろいましたが、BABYMETALだけは、顔を見るだけで泣けてくるぐらいありがたい気持ちになったり、勇気をもらえたりする。これは、普通の音楽アーティストへの向き合い方とは全然違います。

最初は2014年のソニスフィア・フェスティヴァルの動画を観て、バンドも上手いしコンセプトもおもしろいなと思って、動画漁りをしていたところから始まりましたが、いま、引き返せないところまで来た実感があります。
何よりこのヘヴィメタルとアイドルがミックスした異形のものが、どちらの文脈でもパワフルな説得力を持ち、〈まがいもの〉などと言われつつ下馬評や価値観をひっくり返してやってきたこのレジスタンスを、ヘヴィメタル・ファンとして、また1ミュージシャンとして、応援せざるを得ないです。

 

ということで、6月28日に横浜アリーナで行われたコンサート、〈BABYMETAL AWAKENS - THE SUN ALSO RISES -〉2DAYSの1日目に行ってきましたので、今回はその感想などを。

前日まで、少し不安だったんです。
メンバーは2人なのか? またバック・ダンサーを含めて7人体制なのか? 毎度のことながらBABYMETAL側からの情報が一切ないため、とにかく初日行ってみないとわからない。

そして、28日0時に公開された新曲“PA PA YA!!”がまたさらに不安を煽りました。
「さすがにこれは、ダ、ダサくないか……?」と。
すぐ思ったのが、「これ、またMikikiでレヴューの原稿依頼があったら、書くの困るなあ……」です。
しかし、いままでも違和感満載の曲は沢山あって、それも結局スルメ曲になったりしているので、ライヴで聴くまではわかりません。
とにかく、われわれファンは、ライヴに行くしかないのです。

 

6月28日当日。
開場が遅れ、50分押しでやっと暗転。
いつものように紙芝居が流れ、脱退したYUIMETALに代わる3人目はアベンジャーズと呼ばれるサポート・メンバーが交代で入るとアナウンスがあり、3人体制に戻りました!

そして1曲目から、まさかの新曲!(タイトル不明)
メロスピっぽい曲で、まだ誰も知らない曲なので会場はビートに乗るよりは「新しいものが始まったあああああ!」というどよめきで興奮の空気になっていました。また、3人目のサポート・メンバーは誰なんだろう?と、よく見ようとする前のめりな緊張感もあり、会場は新章の幕開けのワクワクでいっぱい。

2曲目はおなじみの“メギツネ”。ヴィジョンに映るSU-METALが笑顔で、思わず泣いてしまいました。去年はステージの内容上、あまり笑顔が見られなかったので、久々に見るステージでの笑顔のパンチ力は半端なかったです。SU-METALが笑顔なだけで嬉しくて涙が出るって、なんですかこの感情は!
そしてMOAMETALが異様にパワーアップしていて、あまりにも隙がない。いつスクリーンに映っても、完璧にKAWAIIメタルを体現しているので、ちょっと驚きました。

3曲目は、先日こちらにレヴューを書いた“Elevator Girl”。レヴューのために採譜もしてしっかり聴きこんでいたので、去年は脇役に感じていたこの曲が、とても前面に出てきて、後方ヴィジョンに映る視覚効果も良くて、立体的な良い曲だなあと思いました。メタルとポップを繋ぐBABYMETALらしい曲だと思います。

お次は“Distortion”。こちらはミュージック・ビデオがあって、所々MVと同じ映像が後ろのヴィジョンで流れたんですけども、岩が浮くシーンをバックにSU-METALが立っているところは、ちょっと寒気がしましたね。その少し前に映画「X-MEN ダーク・フェニックス」を観ていたので、「マグニートーみたいだ!」と思いました。それぐらいのことはしかねないぐらい、SU-METALの戦闘力が圧倒的。歌も絶好調です。

この次が良かった。インドっぽい新曲、オフィシャルで曲名の発表がないので“インドメタル(仮)”としておきますが、これはBABYMETALで初めての曲調です。音律がエスニックで、ダンスもボリウッド映画のような、手の表情が指先まで豊かで優美なダンスでした。ヴィジョンも万華鏡のようなものに変わり、時々メンバーの映像をコラージュして曼荼羅のようになって、その世界に完全に持っていかれました。

しかし、この日サポートで登場した3人目のメンバーを、私は公演が終わるまで誰だかわかっていなかったのですが、こんな風変わりな繊細なダンスも激しいダンスもMOAMETALと並んで遜色なく踊っているし、専門のダンサーにしてはアイドル・アティチュードばっちりだし、アイドルにしてはダンスがキレキレすぎるし、誰なんだろうと思っていました。

 

6曲目は名曲“Starlight”。これも、某雑誌で書いたレヴューのために一度採譜したのですが、驚くべきことにSU-METALの歌うメロディーのほとんどは、ドレミファソだけで出来ています。サビで一瞬下のソが出てくるんですけども、ごく基本のドレミファソとロングトーンのみで、超シンプルな曲なんです。
しかも、ロングトーン部分は、Aメロの一瞬以外は母音がア行で統一されていて、SU-METALのまっすぐな声のパワーが如何なく発揮されるように出来ています。
シンプルさこそが強さにつながる、非常に秀逸な作曲で、ロングトーンに合わせて伸びるライトのステージ演出も含め、理想を具現化するチームの素晴らしさを感じる一曲です。

次に“シンコペーション”がきました。これが一番昔のJ-Rockっぽくて、最初は馴染みがなかったんですけど(過去ブログをご参照ください)、ライヴだとぶち上がりますね。

そこからの8曲目“ヤバッ!”は、久々に聴いた気がします。パイロ演出もあり熱くなったところで、例の“PA PA YA!!”がきました。
当日28日0時に発表されるという「予習しておけよ」と言わんばかりの投下タイミング。
これがですね、盆踊りメタルでした。
ライヴで聴くと上がりまくりのキラー・チューンでした。
〈えーんやとっと〉のリズムに「祭りだ 祭りだ」と歌われ続けて、しかもヘヴィなサウンドとミックスされていると、テンション上がらざるを得ないですね。出島の少し高いステージで歌い踊る3人を見ていると、神社の盆踊りの櫓の上で踊っている人を思い出して、以前YouTubeで観た、“一休さん”や“ダンシング・ヒーロー”を使って激しく盆踊りをしているのを思い出しました。
そしてゲストのラッパーF.HEROが登場。不思議だけど新鮮に盛り上がる時間でしたね。

その後、“ギミチョコ!!”、“KARATE”と鉄板曲が続き、会場が最高潮に盛り上がったところで“THE ONE”に突入。これで終わりかと思ったら、最後に“Road of Resistance”。BPMの速い曲で、ヘヴィだけどどこか爽やかで、未来に向かう疾走感とともにコンサートを駆け抜けました。

 

終わってみると、久々に元気で明るく戦うBABYMETALが見られた気がします。

サポート・メンバーを加え、再び3人体制になったBABYMETALに、満員の聴衆が期待と感動をたたえている様子が、これまでのBABYMETAL公演にない歓びと熱気と感涙の独特のオーラをまとい、特別な空気になっていたように思いました。

後で、その日のサポート・メンバーが超有名アイドル・グループの元メンバーのあの人なのではということを知り、アイドル事情に疎い私もプロ中のプロがサポートに入ったんだなと、納得しました。

だってものすごい運動量ですよ、BABYMETALのダンスは。それを笑顔で隙なく完璧に1ステージやり切るって、しかもデビュー戦であのクオリティーって、凄いですね。本当に感激しましたし、「アべンジャーズ」とアナウンスされたのも大納得でした。

個人的には、今回の衣装がものすごく好きです。いままでで一番良い。去年のダークサイドのツアー時は、硬さ、強さが強調されていて、メイクも含め可愛い成分がほぼゼロだったんですが、このツアーからの衣装は可愛いと格好良いがうまくミックスされていて、ダークサイドの時の衣装は前振りだったのかなあと思いましたね(そういえば去年のアーティスト写真も、外套で隠していましたしね)。

 

この横浜公演2日間の後、翌日にイギリスのグラストンベリー・フェスティヴァルに出演、そして1日空けてロンドンのO2アカデミーで単独公演をした後、7月6日、7日に名古屋で公演という、ちょっとどう考えても異常なスケジュールをこなしているのが信じられないのですが、それもチームBABYMETALが培ってきた体力と自信があってこそなのだと思います。

8月には〈サマソニ〉に出演、9月にアメリカ・ツアー、そしてついに10月11日(金)に新譜が出るとアナウンスされました。11月にはまた国内でライヴがあります。
ライヴもCDも本当に待ち遠しい!
今年の活躍も本当に楽しみです。1ファンとして追いかけます。PA PA YA!!

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシック・ピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパ・ジャズ・ファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラー・トリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。

自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグ・バンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズ・フェスティヴァルやイヴェント、ライヴハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。

 


LIVE INFORMATION

NHORHM
7月12日(金)横浜・DOLPHY 2nd 馬車道(045-319-4030)
西山瞳(ピアノ)、織原良次(フレットレス・ベース)、橋本学(ドラムス)
開場/開演:18:30/19:30
前売/当日:3,500円/3,800円
http://dolphy2nd-bashamichi.com/

西山瞳&小田朋美2台ピアノDUOコンサート アントゥシャーブラ
7月15日(祝・昼)愛知・カワイ名古屋 コンサートサロン ブーレ
出演:西山瞳(ピアノ)、小田朋美(ピアノ)
開場/開演:14:30/ 15:00
予約/当日:3,000円/3,500円/大学生2,000円/高校生以下1,000円
ご予約・お問い合わせはこちら:necojazz719@gmail.com
http://shop.kawai.jp/nagoya/floor/2f.html

安ヵ川大樹/西山瞳/maiko 『The Tree Of Life』リリース記念ライヴ
9月14日(土)奈良・ろくさろん(西山瞳、安ヵ川大樹デュオ)
9月15日(日・昼)大阪・枚方ブルーライツ
9月15日(日・夜)京都・ボンズロザリー
9月16日(祝・昼)兵庫・神戸甲南山手 ギャラリージング
9月21日(土・昼)東京・渋谷ホール
9月22日(日)長野・蔵のカフェレストラン清雅
9月23日(月)愛知・名古屋 スターアイズ
9月24日(火)静岡 ライフタイム
9月25日(水)神奈川・横浜 ドルフィー
http://blog.livedoor.jp/hitomipf79/archives/52464976.html

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