INTERVIEW

The Wisely Brothers×福岡晃子(チャットモンチー済)対談

〈女たち〉が切り拓いてきた道、これからの航海

(左から)和久利泉、真舘晴子、福岡晃子、渡辺朱音
 

チャットモンチーが〈完結〉を迎えて、ちょうど1年が経つ。2005年にデビューしたのち、メンバー脱退の危機は編成を〈変身〉することで乗り越え続け、最後は〈解散〉ではなく〈完結〉を選んだチャットモンチー。彼女たちが音楽文化・業界という荒野に立てた道標は、いまも下の世代にとって貴重なガイドとなっており、東京を拠点に活動する3人組、The Wisely Brothersもチャットモンチーからの影響を公言している1組だ。ポップに見せてかなりオルタナティヴなことに挑戦しているサウンドメイクのみならず、そもそも〈女の子たちでバンドを組んで、それを仕事にする〉という夢自体を、チャットモンチーからもらったという。

※2018年7月をもって活動を終了した
 

The Wisely Brothersが7月17日にリリースしたニュー・アルバム『Captain Sad』には、自信を持てるようになったうえで、自分の好きなものや楽しいと思うものを大切にしながら、悲しみや苦しみを〈個性〉に変えて乗り越えていこうとする姿勢が描かれていて、それはまさにチャットモンチーが示してきた〈かっこいい女性像〉、いや〈かっこいい人間像〉と重なるものがある。しかも決して強がるばかりではなく、弱いところや人に甘えたくなる感情も見せているのが、The Wisely Brothersやチャットモンチーが描く人間の生々しさだと言えるだろう。

今回、The Wisely Brothers(以下、ワイズリー)と福岡晃子(チャットモンチー済)との初対談が実現。ワイズリーの3人に、現在はマテリアルクラブ、吉本新喜劇ィズ、くもゆきなどで音楽活動をしながら、みずから徳島にオープンしたお店〈OLUYO〉の社長を務めるなど活発に動いている福岡を交え、バンドがチャットモンチーから受け継いでいるバトン、新作『Captain Sad』に込めた想いなどたっぷり話してもらった。

The Wisely brothers Captain Sad コロムビア(2019)

チャットモンチーからしか影響を受けていない

――以前に一度、イヴェントの楽屋では会ったことがあるそうですね?

渡辺朱音(ドラムス/The Wisely Brothers)「そうなんです。神戸のイヴェント〈港町ポリフォニー2017〉で、福岡さんはおおはた雄一さんとのユニット、〈くもゆき〉さんで出られていたときにご挨拶させてもらって」

和久利泉(ベース/The Wisely Brothers)「福岡さんと同じ部屋に入った瞬間、〈同じ空気吸ってる!〉と思って……気づいたら泣いてしまってました(笑)」

――ワイズリーは、高校の軽音部でチャットモンチーのコピーをやっていたくらい大好きだって、前からずっと公言されてますもんね。

福岡晃子「なんの曲をやってくれてたん?」

和久利「最初は“コスモタウン”で」

※チャットモンチーの2007年のシングル“橙”のカップリング曲
 

福岡「ぽいぽいぽい(笑)!」

真舘晴子(ヴォーカル・ギター/The Wisely Brothers)「高校生の間はそれが私たちの代表曲みたいになってたし、自分たちも“コスモタウン”をやると落ち着く、みたいな感じになってたんです」

福岡「すごいね、“コスモタウン”を1曲目にコピーしたって人は初めて聞いたわ(笑)」

真舘「私たち、コピーはチャットモンチーしかしてなくて、それ以外はオリジナルをやってたので、インタヴューで〈影響を受けたアーティストは?〉って訊かれても、チャットモンチーからしか影響を受けていないんじゃないかと思うくらいで。演奏するうえでの身体の動かし方は、チャットモンチーのひとつひとつの楽曲で培ってもいるなと思っていて」

渡辺「お決まりのことをやらないというか、本当に自分たちが行きたいと思うところに行っている音楽なのが、本当にすごいなと思っていて。その人たちにしかできなくて、他とは全然違うというイメージがあり、それは最後までそうだったなと思っています」

福岡「ありがとう。これ、私のための対談みたいになってる……すみません、褒めてもらってばっかりで(笑)。でも、行きたいところに行っている感じは、ワイズリーもそうだなと思ってます」

The Wisely Brothersの2019年作『Captain Sad』収録曲“気球”
 

真舘「行きたいところに行きたい気持ちはすごく強いんですけど、上手く行けないときもたくさんあって……。チャットモンチーは同性だからこそ、よく見えてくる部分もあるんです。すごく活躍しながら、自分たちで決断していってるのを拝見すると、〈私たちも自分たちの決め方で動いていいんじゃないか〉って勇気みたいなものをもらっていたなと思います。私たちもそうして動いていきたいんですけど、その決断にはいつもすごく時間がかかるんですよね」

 

男社会のライヴハウス・シーンで自分らしくあるために

――オルタナティヴで遊び心のある音作りにしても、一般的なメジャー・バンドの活動フォーマットから逸脱したような歩み方にしても、福岡さんやチャットモンチーが切り拓いた道は確実にありますよね。

真舘「女の子がバンドをやって、その先を見ることについて、最初に教えてくれたバンドがチャットモンチーだったと思うんですよ。チャットモンチーがいなかったら、女の子がバンドを仕事にして、どこを目標にするのかとか、この先になにが待っているのかとか、まったくわからない状態だったんじゃないかなと思います」

福岡「確かに私たちのときは女性バンドが少なかったから、男性バンドを真似するしかなくて。前例を知らないし誰も教えてくれないから、とにかくみんながやってたことをやるしかないって感じだった」

真舘「ライヴハウスって、タバコ吸う人も多いし壁も黒かったりなんだか怖かったり(笑)。でもそこで強気にいかなきゃ気持ちで負けちゃうんですよね。高校から大学にかけて全然いいライヴができない時期があって、そういう空間でどうやったら自分たちらしく音楽をやっていけるかを考えるようになってから、少しずつ他のバンドのライヴのやり方を真似しなくても、自分たちで作っていけばいいんだと思えるようになったんですけど……。でもやっぱり負けちゃうというか、弱くなっちゃうときもあったりして」

和久利「中音(ステージ内の音量)を大きくしちゃったりね(笑)」

福岡「わかるわ〜! 中音を大きくするの、めっちゃわかる。(チャットモンチーの地元である)徳島でもガールズ・バンドはすごく少なかったし、最初は女のバンドとして見られるのがすごく嫌で、〈ジーパンとTシャツ〉みたいな格好で、絶対に女の子らしくはしない、ということもやってた。あと、楽器に詳しくならなきゃ、とか思ったりね。男性の先輩って楽器教えたがるんですよ」

一同「ああ〜(笑)」

福岡「その人が勧める楽器を使わないと気にくわない、みたいな人も出てきて(笑)。〈これはあんまり好きじゃないな〉とか思いながらも、〈あ、わかりました〉みたいに答えたり、そういうのはありましたね(笑)。でも〈私も知ってます〉って会話をできたほうが対等に見てもらえるかなと思ったから、楽器屋でバイトをしはじめて」

一同「へえ〜!」

真舘「私たちもライヴハウスに出はじめたときは、高校の先輩たちがヴィジュアル系だったのもあって、そのなかに私たちだけがいる感じだったんです。そのときもPAさんとかが男の歳上の人で、結構強めに来られたりとかして。舐められないように、しっかりしなきゃという気持ちはすごくありました」

〈森、道、市場 2018〉でのライヴ映像

 

The Wisely Brothersの音楽はリスナーの耳が試される

――福岡さんは、初期の頃は〈ガールズ・バンド〉と呼ばれることが嫌だったけど、“女子たちに明日はない”(2007年リリース、作詞は福岡)をリリースする頃にようやく吹っ切れて、自分たちの武器となるものは全部使おうというマインドに変わったと、以前のインタヴューで話してくれましたよね。いまのワイズリーは〈ガールズ・バンド〉という捉えられ方について、いかがですか?

真舘「私たちはどちらかというと、〈ふんわり〉〈ゆるふわ〉とか言われるときがあって、それに対して〈どういうところを見ているのかな?〉と思ったりします。柔らかさを見てくれているのは嬉しいんですけど……。パッと見で判断されることも多いんですよね」

渡辺「見た目だけで〈ふんわりしてる〉って判断されていることに気づきはじめた頃は、実際にライヴを観て、驚いてくれたら嬉しいなという気持ちでやってました。〈ふわっとしてる〉って、結構長く言われているんですけど、ふわっとやっているつもりはないので」

和久利「曲のなかで挑戦をしていても、〈ゆるふわ〉みたいなところで引っかかるとチープな感じに置き換えられちゃったりして、それが悔しいんですよ」

福岡「それもよくわかる。でも、全然ふんわりしてないよね。3人の雰囲気はそうかもしれんけど、聴いたら尖りまくってる。〈よくここに拍手入れたなあ〉とか、〈これやる!?〉みたいな音がたくさんあって、3人が散々試してこれを選んだんやなっていうのもすごくわかる」

和久利「そうなんですよ、散々試してる(笑)」

福岡「散々試して、よくぞここはコーラスだけでいこうって決めたなあ、とか(笑)。おこがましいですけど、うちらもたぶん似てる。1曲に3か月くらいかけてるときもあったし」

和久利「そのエピソードだけで報われます……」

渡辺「うん、やってたことが無駄じゃないって思えます」

福岡「〈これがいちばんいいんだ〉っていう気持ちがすごく伝わるから、全然ふんわりしてないと思う。自分たちでいいと思ったことをやっていくという精神が見えるから。それが他の人にはできないことになっていくし。一個一個の楽器がすごく耳に入ってくるし、そういうところがすごくいいなと思いながら新作『Captain Sad』を聴いてました」

The Wisely Brothersの2019年作『Captain Sad』収録曲“柔らかな”
 

和久利「前作『YAK』は片寄(明人)さんにプロデュースしてもらったんですけど、今回(『Captain Sad』)は9曲をセルフ・プロデュースで、音の一つひとつをこだわり抜いているから、音への責任感と愛着がすごく湧いていて。いまって音楽が簡単に聴けるじゃないですか。流行りの音楽というものもあって、そういうのは安心して聴ける部分もあると思うんですけど、いろんな音楽が聴けるからこそもっと自由な耳を持ってもらって、私たちの曲もそのなかの1曲として聴いてもらえるとおもしろいんじゃないかなと思っていて……」

福岡「たしかに、ワイズリーの音楽はリスナーの耳が試されるかもね。繋いでいるのはメロディーやけど、コーラスワークであったり、ポップなところがありつつも、遊びながらどこか崩したいというところもあって。そこがすごく共感しました」

一同「嬉しい〜!」

真舘「崩しまくって、わけがわからなくなって、また元に戻ったりしたりとかして(笑)」

福岡「そうだよね。そうじゃないと、このアレンジはできひんと思う」

 

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