クラシックとユーロ・ジャズからの影響をもとに国内外で活躍中のジャズ・ピアニスト、西山瞳。ジャズ界に身を置きながら、HR/HMをジャズ・カヴァーするプロジェクト・NHORHMでは現在までに4枚のアルバムをリリースするなど、メタル愛好家としても知られており、〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉は、そんな西山さんに〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉の視点からHR/HMのおもしろさを綴っていただく連載です。めでたく第20回を超えて〈鋼鉄のジャズ女〉は、Mikiki屈指の人気連載として毎回ご好評いただいています。

そして、お待たせしました。いまやべビメタ通信でもある(?)本連載、第21回は今月行われたBABYMETALのツアー〈METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN〉を目撃した西山さんに(いつも以上に)熱きレポートを書いてもらいましたので、ぜひお楽しみください! *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


BABYMETALのライヴの日は、アイラインを引きません。
確実に泣いてしまうからです。

必ず泣いてしまうポイントが、4回あります。
1度目は彼女らがステージに最初に出てきた瞬間(開始2分ぐらい)、2度目は最初にSU-METALの笑顔がスクリーンで大写しになった瞬間(開始から8分ぐらい、大体2曲目)、3度目はMOAMETALの表情がどんどん変わってツインテールがふわっと揺れる姿が脳裏に一定量溜まったその臨界点(開始20分ぐらい)、4度目は“Starlight”のロングトーンを聴いた瞬間、その後はひたすら回数が追加されていくのみ。我ながらよく泣くなと思いますが、ぐっと心にきてしまうんですもの、仕方ありません。

 

ということで、2019年11月16日(土)、17日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催された、〈METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN〉に行ってきました。
SU-METAL、MOAMETALにアベンジャーが加わる体制が発表された6月の横浜アリーナ公演以来、5か月ぶりです。
その間に、〈サマーソニック〉の出演や、約1か月半に渡るアメリカ・ツアー、待ちに待ったサード・アルバム『METAL GALAXY』の発売も挟み、いよいよ新譜を携えてのアリーナ公演です。
忍耐力の試される待ち仕事だったはずのBABYMETALファンが、待たされていない!
昨年に比べ今年は怒涛の動きで、ライヴのアナウンスも来年まで次々と繰り出され、嬉しい悲鳴です。

BABYMETAL METAL GALAXY BMD FOX(2019)

今回ラッキーなことに、さいたまスーパーアリーナの2公演ともチケットが当たりました。嬉しくはあるのですが、動きの少なかった昨年に離脱したファンも少なくなかったようで、だから抽選に当たりやすくなっているんじゃないかな……なんて思ったりもしましたが、なんのその。きっちりSOLD OUTでした。

しかし、コンサートに集まるファンは、私が参加しだした約4年前からは変化を感じます。
今回特に2日間見渡して思ったのが、コンサート参加者の服装の緩やかな変化。
私がライヴに行きはじめた4年前は、まだ他のメタル・バンドTシャツを着た人も少しいた記憶ですが、いまでは皆無に近いですね。勿論、今回スペシャル・ゲストとして出演したブリング・ミー・ザ・ホライズン(以下、BMTH)のシャツは別ですよ。通常メタルのライヴでは他のバンドのTシャツもちらほら見たりするので、新規のメタル外からのファンが増えたということでしょう。BABYMETALのTシャツでも、ここ2年ぐらいのTシャツの着用率がかなり多い気がしましたので、やはり新しいファンの方が増えた実感があります。そして、黒Tシャツじゃない普通の服でいらっしゃっている方も、両日スタンド席にいた私の周りでは、結構沢山いました。

また、女性も確実に増えています。ご夫婦で来られている方、私同様の女性一人、小学生ぐらいの男の子とお母さんなど、いろんな組み合わせを見ましたね。隣のご夫婦も初めて来たような話をされていましたし、ファン層が確実に広がっている実感があります。

セットリストが二日間とも同じだったので、二日まとめてリポートしようと思います。

 

まずは、ゲストのBMTHが1時間ほどの演奏を披露。これが本当に素晴らしくて、最高な体験でした。
BABYMETALとはかなり前から何度もフェスなどで一緒になり、縁の深いアーティストですが、ロック好きの評価が高く、しかも若者から年輩の気合い入ったメタル・ファンまで評判が良いので、音源だけは少し聴いていました。しかし、ライヴは音源の数百倍良く、本当に素晴らしかったです。すごい。

初日は、登場してから一瞬で会場を掌握。1曲目は、11月8日に発売され、11月11日にビデオが公開された新曲“Ludens”で、ファンの期待を承知の上で軽く飛び越えてきた感じです。
そして、映像演出との相乗効果がすごくて、非常にドープな時間でした。EDM風味でスタイリッシュだけど丸裸のロックで、根幹はシンプルだけど多角的なアプローチ、しかもリスナーとのコミュニケーションを一瞬も忘れないように構成されている。2日目は特に、1日目とセットリストを少し変えて、パフォーマンスもより観客を意識したものにアップデートしていて、これは強力なライヴ・バンドだなと、ライヴで観て良かったと心から感じました。2日目は巨大サークルがいくつも出来ていて、スタンド席でも前日より立って聴いている人が多く感じました。また、ヴォーカルのオリヴァー(・サイクス)のステージング、ファンに対するアティテュードが素晴らしく、こんないいバンドがゲストだなんて、と超ハッピーな時間でした。

 

BMTHの素晴らしいパフォーマンスの後は、いよいよBABYMETAL。

アルバム『METAL GALAXY』のオープニング、“FUTURE METAL”と映像演出で幕開けです。
続く“DA DA DANCE”は日本で演奏されるのは初めてですね。最初からトップギアで、日本初披露の客席の期待と興奮とともに盛り上がりました。
そして、皆が知っている“ギミチョコ!!”でボルテージが一気に高まります。改めて、BPMが速い曲だなと思いました。アガらざるを得ない。
続く“Elevator Girl”、1日目は少し声が暴走しているのかなと思う部分もありましたが、2日目はきっちり完璧に。

“Shanti Shanti Shanti”、これは本当にメタル・ダンス・ユニットだからこそできる曲で、MOAMETALの表現力が爆上がりしたいま、かなりのキラー・チューンと化しています。この曲では、皆、ノるというよりじっくり魅入ってしまう空気がありました。今回は2日とも同じアベンジャーでしたが、表情豊かでダンスもダイナミックかつ優美で、この曲は本当にハマっていました。爆音なのに、指先まで美しい。

次は私の自動涙腺刺激曲となっている“Starlight”ですが、いつものレーザーを使用した演出、これが本当に良くって、アリーナ・メタルの醍醐味だなと思います。最近バック・バンドがフィーチャーされなくて寂しいという声もありますし、私も「バンドが凄い」と思ったところから始まったのでその気持ちもよくわかるのですが、公演規模がこれだけ大きくなってしまうと、大きな会場では大きな演出になるのは必然。この曲は毎回照明と映像演出との相乗効果で、涙腺を爆撃されてしまいます。

特に2日目は、“Starlight”、“Kagerou”、“Distortion”の流れが素晴らしかったんですよ。

“Kagerou”は少しダーティーな雰囲気がスパイスになります。SU-METALの眼光が素晴らしい。“Distortion”は、ライヴで聴くたび好きになる曲。Aメロの部分で聴衆に挑んでいるような、何かこちらが試されているような気分になるんですよ。この曲でアクセルがかかります。

〈DOWNLOAD FESTIVAL 2018〉での“Distortion”のパフォーマンス
 

そこからの定番、“メギツネ”。今回、『METAL GALAXY』が少しバンド・サウンドから離れたような内容なので、“メギツネ”のイントロのスネア・ドラムの音で、急に「バンドだ!」と引き戻される感覚がありました。「なめたらいかんぜよ」とSU-METALが啖呵を切る姿がアップでスクリーンに映し出されると、歌舞伎のようで格好良く美しいですね。

※歌詞に登場するセリフ

そして、いつの間にやらタオルを振り回すことが定番となった、“PA PA YA!!”。こんなにライヴ向きの曲もないですね。皆でタオル振り回すだけなのに、楽しい。

2日目はスタンド席のステージ真横に近いところから観ていたのですが、次の“KARATE”ではSU-METALが短時間にフォーメーションの移動をしていて、“メギツネ”も同じようなことをしているんですけども、歌っていない時にかなり運動量の多いことをしているなと実感しました。

“Road of Resistance”。毎回これが始まる時は、国歌でも始まったのかなと思う勢いなんですよ、客席が。まあ、そんなものですね。アンコールはないのが定番のBABYMETALですが、今回は一度この“Road of Resistance ”で締めて、その後にアンコール的な演出がされました。

2015年のさいたまスーパーアリーナ公演での“Road of Resistance”のパフォーマンス映像
 

そこで披露された“Shine”では、1日目はスマホのライトを付ける人が現れて、美しい光景だったのですが、2日目は事前に「ご遠慮ください」のアナウンス。しかし、2日目のほうがライトを点けている人は多かったように思います(3日目の大阪公演では公式からのアナウンスのためスマホライトは皆無)。振付けで3人がゆっくり回るところがあるのですが、映像演出も惑星がたくさん出ていたので、彼女らもギャラクシーの中で惑星のように回っているように見えて、素敵でした。

そして、最後は“Arkadia”。今年6月の横浜アリーナ公演で初めて聴いた時は、曲も知らないし、輪郭が全然わからなかったのですが、CDで何度も聴いてからだと感動が増しました。

 

今回2日間観て思ったのは、パフォーマンスや舞台演出のクォリティーがどんどん上がっていて、なんというか隙がない。BABYMETALに死角なしです。中でも2日目のSU-METALの歌唱は、1日目を上回って完成度の高いものでした。眼光も鋭く、以前は戦う巫子感がありましたが、いよいよクイーンと呼ばざるを得ない状況です。

しかし、次の衣装、どうするんでしょうね。
この〈GALAXY〉にぴったりの、未来感も威厳もあり年齢を重ねたのにふさわしい衣装で、2日目はほぼ真横から見ていてダンス中の衣装の動きも見てたんですが、ちょっとこれ以上良い衣装が考えられないぐらい、今回の衣装が良すぎる。好きすぎます。

来年は1月に幕張メッセで2日間の公演がありますが、東と西の神の邂逅、そしてアベンジャーズについてと新たな展開に含みのあるメッセージで、さいたまスーパーアリーナのコンサートは終わりました。

来年はどんな展開が待っているのでしょうか。何度もMikikiで書いていますが、とにかく待つしかないのがBABYMETALファンの宿命。

来年も期待して待ちます!

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシック・ピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパ・ジャズ・ファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラー・トリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。

自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグ・バンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズ・フェスティヴァルやイヴェント、ライヴハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。

 


LIVE INFORMATION

11月29日(金)神奈川・横浜 上町63
西山瞳TRIO:西山瞳(ピアノ)、佐藤ハチ恭彦(ベース)、池長一美(ドラムス)

12月6日(金)神奈川・横浜 上町63
西山瞳piano ソロ

12月8日(日)東京・小岩 Cochi
西山瞳(ピアノ)、馬場孝喜(ギター) デュオ

12月11日(水)東京・江古田 そるとぴーなつ
西山瞳(ピアノ)、市原ひかり(トランペット)デュオ

12月14日(土・昼)東京・成城学園前 Beulmans
西山瞳(ピアノ)、市野元彦(ギター) デュオ

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