昨秋のEPでリブートを果たしたものの、今作からが本領発揮であることの窺える5作目。ヴォーカリストが変わってどうだのとはもはや言わせない凄みとファンキーかつ小粋なノリが渦巻く“Mutant”、鍵盤やストリングスの映える“Canvas”を更新したかの如き爽快な春ソング“紺に花”、踊Foot WorksのPecoriを迎えた“chiffon girl”などゾクゾクさせられっぱなしで、グルーヴの中心には絶対的な存在感で石野理子がいる。

 


2017年7月の前任ヴォーカル脱退、2018年1月の3人体制始動、2018年5月の新ヴォーカリスト・石野理子の加入を経ての新体制初となるアルバム。3人編成時代に生まれた曲(“ジャンキー”、“KILT OF MANTRA”)、昨年のYouTubeLiveで先行公開されていた曲(“Unite”、“ソナチネ”、“夜の公園”)、昨年の冬ツアーでパフォーマンスされていた曲(“曙”)、そしてまったくの新曲と、2018年から2020年までのバンドの歩みが詰まった作品に仕上がっている。

個人的には赤い公園の魅力は、ジャキジャキに尖ったオルタナ・サウンドとそこに溢れる実験性、時に甘酸っぱく時に地獄の底から這い出てきたような歌詞と楽曲、それとは裏腹な圧倒的なポップさとキャッチーなメロディー……などなど様々な要素が一作品のなかでもごちゃまぜになっていて、まるで日々の天気のように入れ替わり立ち替わり出てくることだと思っていた。しかし今作は、先行シングル表題曲“絶対零度”以外での尖り具合や実験性、ダークさが控えめになっており、その代わりポップさとグッド・メロディーの部分が突出しているように感じられる。

この変化には驚きや寂しさも(かなり)あるが、紺の制服に花が散る卒業シーズンの美しい景色を歌った“紺に花”や、切ない恋のワンシーンを切り取った“ソナチネ”、恋愛未満の男女の友情を描いた“夜の公園”など、まるでドラマのような情景を描いたポップソングは、元アイドルで未成年、これから何色にも染まりうる石野が歌うからこその歌詞とメロディーと演奏だと思えば納得がいく。

その一方で、戦時中に楽器で相手の戦意を喪失させたスコットランドのバクパイプ隊を思い出しては〈怖くはないのさ〉と言葉(マントラ)を唱える“KILT OF MANTRA”や、〈リセットボタンが壊れたぼくらのように〉と歌う“曙”、〈映画じゃないし終わらない 続きを生きているんだ〉と歌う“yumeutsutsu”などは、脱退・加入という区切りがあっても関係なく突き進むというバンドの意思が表れているようにもとれるし、何かがきっかけで立ち止まった人にもまた歩き始める勇気を与えるだろう。

つまりこのアルバム自体が、これまで様々な表情を見せてきたバンドが生まれ変わって〈誰しもが共感できるポップス〉で突き進む、ということの宣言なのかもしれない。〈誰しもが共感できるポップス〉って〈みんなが気軽に立ち寄れる公園(THE PARK)〉みたいなものだろうし。