2019.10.21

2018年5月にヴォーカル・石野理子の加入を発表し新体制となった赤い公園が、1年半の時を経てリリースする新体制初作品は5曲入りのEP。1曲目の“消えない”は、2018年9月に〈BAYCAMP2018〉で初披露、〈消えない〉何かに突き動かされて生まれた、固い決意を歌った変則ロック・ナンバー。新体制になったものの、それまでは旧体制の楽曲を演奏していたバンドにとって、この曲は初めて石野理子のために作られた曲とも言えるだろう。2曲目の“Highway Cabriolet”は、2018年1月、まだ3人体制だった頃のワンマン・ライヴで初披露された、ちょっと大人のラヴソング。当初は歌川菜穂(ドラムス)がメイン・ヴォーカルを取っていたが、石野が歌うことで、彼女がすでにアイドルではない、ひとつ成長した姿を見せてくれているようにも思える。3曲目の“凛々爛々”は、新体制初のツアーにおいて本編ラストに演奏された、前向きな姿勢を示した疾走ロック。この曲のネガティヴをポジティヴに変換するパワーは、バンドのいまの姿勢そのものを表現しているかのようだ。と、ここまでの3曲はすでにMVで発表済み。

続く4曲目の“HEISEI”は、同じく初ツアーの冒頭で演奏された切ない系ミドル・ロック。〈平成〉という時代だけに留まらず〈過ぎ去ったこれまで〉に感謝し、〈僕ら〉は未来へ進むという歌詞は、“凛々爛々”とはまた違ったバンドの心構えを表現しているようにも思える。そして最後の“Yo-Ho”は、まだライヴでは披露されていない、しかし2019年の冬ツアーのタイトルにもなっている新曲。ベースとドラムスのないこの打ち込みの曲からは、〈こういう姿も赤い公園なんだ!〉という、新体制になってからすでに/さらにバンドが進化している様子も示している。……というふうに、曲調もテーマもバラバラだが、新体制になってからのこれまでとこれから、そしていまのバンドの姿勢がぎゅうぎゅうに詰まった5曲が出揃っている。

個人的に特に秀逸だと思ったのは、〈花束を大切に抱えたその足元で、たくさんの野の花を踏み倒してきた〉という“HEISEI”の詞の着眼点。それに続く歌詞も〈抱えてきた花も、踏み倒して押し花になった花も、全部を投げてそのなかで踊る〉という情景を描写しており、そのシーンの美しさも相まって、捨ててきたものも含めた自分を肯定する力の強さに思わず胸を打たれる。その一方で、次の“Yo-Ho”にも同様に花(ハルジオン)を踏み潰す描写が出てくるのはとても興味深い。しかしこの曲でハルジオンを踏み潰しているのは、主人公に救いの手を差し伸べている〈あなた〉。〈私を救おうとするあなただってハルジオンを踏み潰しているじゃない〉という、“HEISEI”の詞で主人公に向けられた痛切な思いが、実は〈あなた〉にも当てはまることで、再びドキッとさせられるのだ。しかもハルジオンの花言葉は〈追想の愛〉。自分が、誰かの〈過去を思い返す愛〉を踏みにじるような存在になっていないか。2曲の新曲を通して聴くことで、改めてそんなことに気付かされる。

5曲の曲調もテーマもバラバラということは、決して一貫性がないということではなく、つまりは彼女たちがそれだけいろんな球種を投げる準備を整えたということだろう。赤い公園がここからどう一歩を踏み出すか、想像するだけで期待に胸が膨らむ。

 

関連アーティスト
40周年 プレイリスト
pagetop