ネガティヴを武器に(!?)、声優アーティストだからこその表現力を

 2012年のデビュー以来、ゲーム「THE IDOLM@STER MILION LIVE!」の北沢志保役、アニメ「一週間フレンズ。」の藤宮香織役などを演じ、声優として高い評価を得てきた雨宮天。現在放送中のTVアニメでも「アカメが斬る!」「アルノドア・ゼロ」「東京喰種トーキョーグール」の3作品でヒロインを務めて瞬く間に人気声優となった彼女が、「アカメが斬る!」のオープニング曲“Skyreach”でついにCDデビューを果たした。

 「いまは不安と緊張ばっかりですね。わからないことが多すぎて、楽しみっていう感じではないかも(笑)。ただ、歌はもともと好きで、声優としてデビューする前は週1でカラオケに行ってたんですよ。“異邦人”(久保田早紀の79年のシングル)や “恋におちて -Fall in love-”(小林明子の85年のシングル)など昔の歌謡曲だったり、演歌やアニソンを歌うことが多かったかな。自分の歌を録音して、ひとりで聴きながら〈ここはリズムが良くないな〉ってチェックすることもあったんですけど、歌手をめざしていたというより、単純に歌が上手くなりたかったんだったと思います」。

雨宮天 『Skyreach』 MusicRay’n(2014)

 これまではキャラクター・ソングで優れたヴォーカルを示してきた彼女。ハードなサウンドとどこか憂いのあるメロディーを軸にした“Skyreach”でも、持ち前の表現力を発揮している。

 「“Skyreach”はイントロを聴いた瞬間から〈めちゃくちゃカッコイイな〉と思いました。あんまり明るすぎないところも自分の好みだなって。同時に〈こんなにカッコイイ曲、私に歌えるのかな〉という不安も感じましたけどね……。レコーディングのときは、普段の自分の歌声よりもちょっと強めで、叫ぶように歌ってみたんです。声優のお仕事を通して声の作り方を学んできたので、それを活かせられていればいいんですけど」。

 腐敗した権力に立ち向かう少年少女を主人公にした「アカメが斬る!」の世界観と重なる歌詞にも、「共感できる部分がたくさんあった」という。

 「“Skyreach”の主人公はたぶん、そんなにポジティヴではないと思うんですよ。常に不安みたいなものを抱えているんだけど、自分の弱いところをちゃんと受け止めていて、何とか前に進もうとしているというか。私もどちらかというと、そういう性格なんです。自分が声を当てさせてもらったアニメを観ても、〈こんなんじゃダメ〉〈このままじゃイヤ〉としか思わないっていう(笑)。その気落ちを向上心に変えてがんばるというか、ネガティヴを武器にしたいタイプなので」。

 カップリングの“夢空”は、柔らかい旋律と〈未来に対する淡い憧れ〉をテーマにした歌詞がひとつになったミディアム・チューン。ここでの彼女は、純粋な少女性を感じさせる歌声を披露している。

 「女性的で優しい雰囲気も入れたいと思って歌いました。〈温もりのプレゼント〉という歌詞があるんですけど、まさにそういう感じになればいいなって。キャラクター・ソングの場合は〈この子ならきっと、こういうふうに歌うだろうな〉と想像できるんですけど、自分名義の曲は〈この曲をどう表現するか?〉という発想が必要になる。そこは全然違いますね」。

 今後はイヴェントなどで生の歌を発表する機会も。「しっかり感情を込めて歌いつつ、パフォーマンスのあり方も考えて臨みたいです。自信は皆無ですけど……」と語る彼女だが、〈シンガー・雨宮天〉の活動は、声優としての成長と共に注目を集めることになりそうだ。

  「声優の仕事から離れることはないと思うし、〈声優だからこそ〉のアーティストになりたいんですよね。例えばジャズでも、今回のようなロックでも、雰囲気や世界観が違う曲を演じるように表現できたらいいなって。まずはいろんなタイプの曲を歌ってみたいですね」。

 

▼雨宮天関連の作品

左から、如月千早・北沢志保・田中琴葉・所恵美の2013年のミニ・アルバム『THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE 04』(ランティス)、藤宮香織の2014年のシングル“奏”(TOHO animation)