リリース自体がトピックとなる孤高の鬼才が何年かぶりに新作を投下! 自身のモードと時代のムードが絶妙に重なり合った地点から鳴らされる刺激的なサウンドの正体は……

いまなお話題を生む存在感

 エレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、異端的な存在感を放ち続けるエイフェックス・ツイン。アイルランド生まれの彼は、80年代後半頃から活動を始めて以降、数々の名盤と珍妙な言動で世間の注目を集めてきた。自身のSoundCloudアカウントuser18081971で突如音源を発表したかと思えば、前触れもなくNFTアートワークをオークションで販売するなど、定期的にメディアを賑わせている。

APHEX TWIN 『Blackbox Life Recorder 21f / In A Room7 F760』 Warp/BEAT(2023)

 そうした話題作りの上手さは、今回の最新EP『Blackbox Life Recorder 21f / In A Room7 F760』を発表するまでのプロモーションでも活かされた。本作のリリースを告げるに先立ち、多くの音楽フェス会場にインスタレーションを設置し、世界中のレコードショップにはアーティストロゴが隠されたポスターをばら撒いた。ちなみにそのポスターは、スマホのカメラなどで読み取り可能なQRコードが仕掛けられており、読み取ると彼が手掛けた拡張現実世界に入り込めるという仕掛け付きだ。

 このような前振りを経て世に放たれる本EPには4曲が収録されている。全曲合わせて15分程度という長さは小盛りとも言えるが、それぞれの曲に聴きどころがあるので紹介していこう。