INTERVIEW

〈タワーレコードを創った男〉、ラッセル・ソロモンが語るタワーの歴史:後編

USのタワーの栄枯盛衰を描くドキュメンタリー映画の撮影で来日したソロモン氏が明かす、タワーならではのエピソード、そして音楽への想い

〈タワーレコードを創った男〉、ラッセル・ソロモンが語るタワーの歴史:後編

タワーレコードを創った男〉にして、20世紀後半からの世界の音楽カルチャーに多大なる影響を与えたリヴィング・レジェンド、ラッセル・ソロモン。そんな彼が、〈USタワーレコードの栄枯盛衰物語〉をドキュメントする映画「All Things Must Pass: The Rise And Fall Of Tower Records」の撮影のため、この夏映画クルーと共にカリフォルニアから来日した。Mikikiでは、齢89歳にして活力漲る伝説の男であり、70年以上音楽カルチャー/ビジネスに身を置いてきた当事者である彼に、音楽についてさまざまなことを訊いた。

※インタヴューの前編はこちらから

 

――そういえば、私がタワーレコードに入社した頃、いろんな先輩の方々に何度も聞かされたひとつのエピソードがありました。USの本社では、オフィスに来たお客さんのネクタイを切って壁にずらっと並べている……タワーっていうのはそういう会社なんだよ、と。どうして、そういうことをしたのでしょうか?

〈切った〉ことはない。〈抜き取る〉というのが正しいね。レコード会社や音楽業界の見本市やコンヴェンションが時々ロサンゼルスであったんだが、レーベルの役員なんかがニューヨークからLA、要はハリウッド周辺にやって来る。それがスーツを着てネクタイを締めているものだから、それを見てこちらも「あんたがた、音楽業界にいるんでしょう。そしてここはカリフォルニアだ。しかも暑い。どうしてネクタイなんて締めているの?」って訊く。そして、「ちょっと調整してやるよ」と言いながらネクタイをはずし、もらった名刺をそのネクタイにホッチキスで留めて、誰のものかわかるようにしたんだ。

 

 

そのうちそれを面白がる人も出てきて、業界内でネクタイをしている人や、オフィスに来る業界人からネクタイを〈盗む〉ようになった。音楽業界にいる人は、どんな事情があってもネクタイなんかするもんじゃない。そうこうするうちに誰もネクタイをしなくなったよ。

繰り返すけど、ネクタイを切ったりはしていない、まるごと抜き取ってコレクションにするんだ。そしてオフィス内のガラスケースに飾ったよ。取られることを分かっていて、わざわざ古いネクタイを締めてくる人もいたね。なかには「妻からもらったのに」「彼女からもらったものなのに~」と情けなく泣き散らす人もいたな。こっちは「いや、そういうわけにはいかん。はずせ!」と、容赦なかったけど(笑)。

 

Tower Records Archive Projectより引用)

 

――少し質問を変えます。音楽メディアのフォーマットは、時代を経るごとに変遷してきました。そのことについて個人的なご意見、または個人的に好きなものがあれば教えて下さい。

フォーマットの進化について言えば、まず新しく登場するものは、いつも前のフォーマットから改良されたものだった。つまり、LPや45回転のレコードは78回転の上をいくものだったし、ステレオLPはモノラルLPよりもずっと良かった。クアドロフォニック(4チャンネル方式)のLPはそんなに良くはなかったけど、それなりに持ったね。そうするうちにテープが登場した。最初のテープはオープンリール方式で扱いにくかった。音は良かったが高額だったし、デッキでかけるのも難しかった。

その後、カセットテープと8トラック型が同時に登場するが、世の中が受け入れたのはカセット。扱いやすくて安価に製造できたのが良かった。カセットは大人気になったけど、音質はあまりいいものではなかった。となると、結果的にそれよりも(音質が)いいものが出てくるわけで、そんな中でCDが発明されたときには、それはもう驚くべき素晴らしいものとして歓迎された。CDは実に素晴らしい。

個人的な考えを言うと、CDもさらに進歩を見せてスーパーオーディオCDやSHM-CDも製造されたのに、レーベルがそれを後押しせずうやむやにしたことは残念だ。業界がもっとSACDを支持していたらもっと良かったのに、と思う。でも、いい音質のものが出回っていたとしても、一般的なユーザーはそこまで音質にこだわっていないのかもしれない。

USでは最近面白い現象が起きていて、LP、つまりヴァイナル盤が復活している。微々たるもので、取るに足りない規模だけど、嬉しいことだし、コレクターも喜んで買っている。ただ、多くの人がヴァイナルのほうが音が良いと思っているようだが、実際にはそんなことはない。CDの音が良い、本当に良い。

 

 

――いまCDの話が出たので続けて訊きたいのですが、アメリカでは音楽を聴く方法として、iTunesなどのデジタル・ダウンロードや、スポティファイなどストリーミングが主流となっていると聞きます。そういった現在の〈音楽を聴く〉カルチャーをどう捉えていますか?

ほかの国は分からないけど、USでは音楽をオンラインで聴くことが好まれている。ダウンロードはまだ市場の大部分を占めているが、規模は徐々に小さくなっている。音楽を所有する必要がなくなっているのかもしれない。ストリーミングが支持されるようになってきているので、USでは今後、そっちが主流になるだろう。ストリーミングはその時聴きたいものをすぐに選ばせてくれるからね。個人的にはストリーミングのクォリティーが良いとは思わないけど、それも正しいかはわからない。ひょっとしたら、ほとんどの人にとっては十分なクォリティーなのかもしれない。しかもどんどん良くなっているのかも知れない。

だから、日本は特異な位置にある。ほかのどんな国よりもCDを所有し、聴いて集めることに興味があって、それが数字にも表れている。私は未来を予想することはできないが――ないとは言えないそし、もし誰かが革新的な発明をしたら話は別だけど――CDはそれでも収集性が高くて音質もいいので、ストリーミングと共存できるかもしれないね。でも、やっぱり断言はできない。

 

 

――最後の質問となります。アメリカでもそうかもしれませんが、私たちタワーのスタッフが他のスタッフや音楽ファンと初めて会ったとき、まずは、〈何が好きなの?〉と音楽の話をします。そこで、ラスさんにも〈オール・タイム・フェイヴァリット〉をお聞きしたいです。

私の? 難しい質問だ、あまりにも多すぎて……遡ると、フランク・シナトラトミー・ドーシーウィリー・ネルソンとかかな。私は幸運にも多くの音楽に触れる機会に恵まれて、しかも自分の気に入る音楽がほとんどだったし、本当に答えに困る質問だね。ラップはあまり得意ではないな、でもそれ以外のほとんどは大好きだ。R&B、カントリーはもちろん、ウィリー・ネルソンだけじゃなくて大概のカントリー・アーティスト。ジャズも好きだ、いろんな種類のジャズ、ビッグバンド……まぁ、これは時代を問わないね。クラシック、オペラなども全部……だから私のような人間は、というか私個人は〈ひとつを選ぶ〉なんてできない。全部好きだから。まぁ、全部と言うわけではないけど、(音楽)全部のいろんなパーツが大好きだ。

――最後にもう一つだけお聞きします。自分自身の人生にとって、〈音楽〉とはどういったものでしょうか?

人生をより良くしてくれるもの。本当にそう思う。幸せにしてくれるもの、それに尽きるね。

 

 

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